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カテゴリー「ブログ小説」の記事

2017年10月17日 (火)

〔デン魔大戦編〕7

 夢の世界が荒廃すると、現実世界も荒廃するときたが、現実世界ってのはハナッから荒廃しているのではナイのか。つまり〈穢土〉だ。釈迦世尊も含め、およそありとあらゆる思想、宗教は、この世界の穢土を如何に生きるかという作用素を考え、その答をとりあえずは出すということの上に成り立っているといってイイ。しかしながら、どの宗教、思想、哲学、科学ですら、この世界、この世が何故〈穢土〉であるのか、その存在理由については、根拠のあることは述べていない。ともかく〈穢土〉だということは認めているのだが、その理由、そうであるワケはワカラナイ。何故、〈穢土〉でなければならないのか。

 プラトンは、理想世界を創るための、神の設計図があるはずだと信じて、アトランティス都市に夢を馳せた。弟子のアリストテレスに至っては、その資材まで探し求めた。

ところで、キリスト教になると、イエスは天国とはどんなところなのか、その概念めいたものを譬え話で語ってはいるが、具体的には如何なる福音書にも天国(heavenparadise、ハライソ)の様相を示した例はみられない。その世界が仏国領土の浄土の如く記述されたことはナイ。

 浄土にしても、軽く銀河系を飛び出してしまう巨大さがあるので、そうなると、曼陀羅にしたって、コペルニクス以前の宇宙図と何ら変わりはナイ。

 浄土宗派の親鸞や、その師匠の法然は、穢土の改革はもう諦めてしまって、極楽往生を他力に頼ることで多くの衆生の支持をえることは得たが、その思想が『法華経』を頂く日蓮をして激怒、敵視させたのはアタリマエのことだ。もはや、浄土宗派の思想、考え方は釈尊の教義を逸脱していることは私のような素人がみても明らかで、北一輝や石原莞爾などの革命派が『法華経』を重視した、あるいはその教義に影響されたのは、それが紛うことなく〈革命〉の経典、翻って、大胆にいうならば、釈迦世尊の思想は穢土を浄土に変革させる革命理論だったということになる。仏教とは革命の思想なのだ。

 では、もとより穢土で荒廃の世界でしかないこの情況を、いまさらデン魔とやらは、なんでまたさらに荒廃させようというのか。まるで阿修羅と帝釈天の闘いじゃナイか。

 そのとき去来したあるideaに、私は「あっ、そうか」という声を発したらしい。私の前を行く連中が振り向いた。

「唯一のhintだ。つまり、この世は穢土だ。何故そう設定されているのかはワカラナイ。どう考えても答は出ない。そうしてこの穢土でひとは死ぬ。要するに、これは出来すぎている。もし、これがhintだとすれば、これ以外にhintideaはナイ。と、すると、法然、親鸞たちの鎌倉仏教の浄土志向は、衆生を繰り込むその方法、方便として何処かで何かの変数、定数、係数の誤謬があったのでは、ナイか」

 何をいっているのかワカランという複数の視線が私に向かってきた。

 たしかにここは私の夢の世界で、現実世界ではナイ。しかし、私が存在する世界という意味においては現実世界と変わりはナイ。この夢の世界を荒廃、つまり穢土にすべくデン魔が在るというmetaphorは、私のココロのspiralだ。

「ここが、海底通路への入り口です」

 人魚ねえさんが指さした。なるほど、『入り口』と表記された金属板が貼られている。ワカリヤスイね、夢の世界は。で、この先が武器庫か。いったいどんな武器があるのか。どんな武器で、デン魔とやらと闘おうというのだろう。

 とりあえず、進まねば仕方ない。

 

☆いったん休筆を告知しておきます。次にいつ再開するのか目処はありませんが、その前にやっておきたい(書いておきたい)ことがあるので、とりあえず、〔デン魔大戦編〕を休筆いたします。

なんしろねえ、余命ってのがそんなにアルってふうじゃナイもんだからネ。

 

2017年10月 9日 (月)

〔デン魔大戦編〕7

「毎朝、おはようごさいます、こんにちは、といいあっていたひとが、突然知らん顔をする。困っているから、会社辞めさせられるかも知れないから、殺されるかも知れないから、カネオクレ、と電話があって、送金すると詐欺で、悪いのはその詐欺に引っ掛かった近親の老母のほうで、公報も警察もマスコミも、/騙されるな、気をつけろ/というようになる。善意はヤメロといわれる。コンビニの女性店員に~きょうはいい天気だね~といったら、~でも、午後からはくずれるそうですよ~とcommunicationしていたのが、~そうですね~の、視線を合わせないやりとりに変わる。風営法にひっかかるのかもしれませんが、常連の客に対して過剰な親しさをみせて接してはイケナイと、manualにあるのだから、仕方アリマセン」

 そんなところで死にたくはナイな。

「しかし、それはもう、現実世界じゃあ、日常でしょ」

「夢は、日常じゃ、アリマセン」

 なるほど。つまり、現実から逃れるべくところが壊滅されるというのか。

「じゃあ、何故、デン魔は夢を荒廃させ、夢の世界の崩壊なんかをするんだ」

「この宇宙、その全体の半分は夢だからです」

 えっ、そうなの。

「夢の世界を壊せば、現実の世界も自然に壊れます」人魚はうなだれた。

 と、突然、土方が焦燥したように、訊ねた。

「だから、そんな世界、宇宙の崩壊を目論んでいる理由、そのデン魔とかいう連中の目的は何なのだヨ」

「それは、」

「それはっ」私、土方、ハルちゃんレイさん。

「ワカッテいません」

 だろうな。そんな気がしたよ。

 しかし、夢まで壊されてしまっちゃ、人生の半分はたしかに壊滅するといっても過言ではナイだろう。

とはいえだ、

 では、この特殊部隊の人魚ねえさんと供にデン魔征伐をやればイイってのか。

「敵、というものを定義するならば」

 土方が思案ありげに腕組みをすると、

「拙者の目的を邪魔するものは、これ即ち、須らく、敵だ」

 拙者、と、きた。いきなり武士にもどっている。

「で、どうやって」ハルちゃんレイさん。

「いったい何と」ハルちゃんレイさん。

「戦えばいいのか、その具体性がよくワカランが」

 と、これは土方。

 ちょいちょい、あんまり、story性を持たさないで欲しいナ。これは私の潜在的な思い。とはいえ、nonsenseに過ぎるのも困る。適度にフザケて、

「気楽に考え過ぎるのもよくないですよ」ハルちゃんレイさん。

「いや、けして気楽というのではナイんだけどね。デン魔との戦いを描くなんて物語はヤだなと、そう思ったんでね」

 これ、私の率直。

 と、人魚ねえさんが跳ねた。というか、歩いたのかな。

「いずれにせよ、この世界は侵略されます。どういうカタチであれ、対応は迫られます」

 道理ですね。正論です。

「刀、棄てなきゃよかったかなあ」

 もちろん、土方の、他人にも聞こえる独り言だ。

「武器庫があります。もし、お嫌でなければ案内します」

 武器庫。そんなものがあるのか、函館に。

「此度の大火でも損傷はナイものと思われます」

 まあ、なんでもアリの函館だから、武器庫くらいはあってもイイか。私の脳は急速に反転した。

「海ん中だな」と、土方が人魚を観た。

「ビンゴ」と、人魚。

「どうやって行く。潜水艇でもあるのか」

「その必要はありません。地下から海底に通じる通路があります」

 

2017年9月27日 (水)

〔デン魔大戦編〕6

 

「何だよ、この御方」

 土方も初めて、人魚に眼を向けた。もっとも、気付いてはいたのだが、知らぬふり、見て見ぬふりしていたのかも知れないけど。

「ワカランのだけどネ」

 と、しか、私には答えようがナイ。

「デンマって何なのよ、マッサージじゃナイんでしょ」ハルちゃんレイさん。

 ところがこれに、あの、マスカク、増岡久蔵が、応えたのだ。

「デン魔襲来については、私ども宇宙軍事研究家のあいだでも予想されておりました」

 そんなのがあるんだ。あるって、マスカクがいってたじゃナイの。

「電動マッサージを武器にした、悪党どもです」

 宇宙軍事研究家というのも、あんまりたいしたものじゃなさそうだな。

「もちろん、それは、冗談です」

 余裕だね、このひと。

「デン魔の正体は謎とされておりますが、現在は重力波の方面からその研究が進められております。正体は不明でも、目的はハッキリしております」

 この宇宙の破壊、暗黒の到来、じゃナイだろうな。

「この宇宙の破壊、暗黒の到来、です」

 同じジャン、幻魔と。

「では、デン魔大戦勃発か」

 驚いたことに、土方が、そういったのだ。

「そう、ビックラこくな。戦記ものはcomicであろうと、一応読んでいる」

 なるほど、さすが〈革命〉を目指す武士。

「しかし、それは、どんな闘いになるんです。魔物と超能力者との対決ですか」

 と、私は問うた。

 それにはマスカク、ウーンと思案していたが、人魚のほうが応えた。

「マンガのようなものではアリマセン。どちらかというと、アーサー・C・クラークの記した『幼年期の終わり』に似ています」

「それは読んでねえな」と土方。

「いわゆる黒船だよ」

「黒船っ」

「そう。そのような巨大な未確認物体が、世界各地に飛来して、母船と呼ばれていたかな、どでかい黒いいわゆるUFOが一世紀のあいだだったか、空中に浮かんでいて、なんだったかな、ともかく妙に哲学的なSFだったな」

 私は、高校生の頃に読んだ記憶を話した。

「いまはスッカリ落ちぶれた早川書房が、矢継ぎ早に、世界のmysteryscienceものを新書サイズで出版していた頃だからな。たしか、筒井康隆の旦那の処女作もそこから出版されたはずだ。『東海道戦争』ね」

 と、人魚が立ち上がった。足がナイのにどうやってか、うーん、要するに立っている。

「映画やテレビドラマのように、飛来物体が人体を吸い上げるというふうではナイのです。あるとき、突然に、生命体の想念、意識、どう呼んでいいのでしょうか。そういう心的なものが吸い上げられます。まるでタコの吸い出しのように」

 タコの吸い出し(魚の目のクスリの商品名)で、心的なものが吸い出されるのかどうかは、知らんが、つまりは俗にいう魂を抜かれるということらしい。

「その後、クロフネ一機が地上に落ちて自爆。その衝撃で、とある種の化学変化が生じ、シリコン変容と私たちは称していますが、その天体は砂状に崩れて壊滅します」

 それが、来るということか。この夢の世界に。

「はい」

 まるで、私のココロを読み取ったかのような人魚の返事。

「率直、有体(ありてい)、簡単にいってしまうと、デン魔は、宇宙の現実世界を破壊するのではなく、生命体の夢の世界を破壊するのです」

 だろうな。そうでナイと『幻魔大戦』と同じになるからな。

「で、具体的には、その黒い巨大母艦てのが、」

 人魚は私のコトバを遮って、

「いきなりそんなことはしません。そうなるのは、夢の世界が荒廃してからです」

 それ、どういうことなの。

2017年9月20日 (水)

〔デン魔大戦編〕5

「実に簡単なことです。自衛隊は、国民を守るなどという教育、訓練といってもよろしいんですが、そういうものはナシ。受けていないのです。では、どういう教育、訓練をやっているかといいますと、日本の平和を守るという教育、訓練です。これを任務として活動する軍事集団なのです」

「どう、チガウのかワカリマセン」ハルちゃんとレイさん。

 土方も生唾を飲んだ。初めて耳にするアメリカの兵器にもデファレントだったのだろう。しかし、彼とて、ハルちゃんとレイさんどうよう、チガイが理解出来ているようではナイ。

「少し遠回りな説明になりますが、いやいや、なるたけ簡潔にやりますので、ちょっと我慢を、」

「俺はしてやるぜ」

「しょうがないので、私たちも」

「そんなバカなとおもわれるかも知れませんが、現状の北朝鮮の挑発なんてのは、ほんとのところ問題にはシテません。ただ、そちらのほうに国民の目を向けさせているだけなんです」

「えらく大胆な分析だな。どういうresearchだ」

 と、土方。

「政治とは、そういうものです。かつて、第二次大戦後ですが、ソ連の軍事力をもってすれば、北海道は二日で占領されるだろうと目算されていました。しかし、現在のロシアの軍事力では無理な話です。逆にいうと、日米韓の共同作戦を持ってすれば、北朝鮮は二時間で壊滅します。ただし、核の被害がどの程度あるかは、さまざまな確率予測によってかなり異なります。いま、米国が懸命に取り組んでいるのは、北朝鮮の核の90%までの無力化です。これについては、かつてソ連であったウクライナの核開発能力の研究資料をごっそりと持ち帰って検討しています。ウクライナがソ連から独立するさい、優秀な核兵器研究者の多くは、ウクライナに移りました。彼らの現在の研究は、もちろん、戦術核、戦略核の発射前攻撃です。具体的にいいますと、ミサイル発射寸前にどれだけの通常兵器攻撃、あるいはサイバー攻撃が仕掛けられるかというこの一点です。ともかく、日韓に対しては、北は戦術核で充分なんですから、それを迎撃すればイイのですが、完全にこれを叩くならば、発射出来なくスル、これが最大の攻撃なんです」

「ほーっ、ほほう。ほう」

土方は、こりゃ、ちょっとバカに出来んナという身の乗り出し方に姿勢を変えた。

「ことのついでにいわせて頂いていいのなら、永世中立を謳っているスイスの軍事力は実はワカッテいません」

「スイス」イスイダララッタ、スラスラスイスイホイ。

「オーソン・ウエルズの映画『第三の男』の中に、第二次大戦でスイスが発明したのは鳩時計だけだ、という名せりふがありますが、大間違いです。つい最近、といいましても数年前、スイスの民間防衛ガイドラインが記された書籍が評判になりましたが、私どもが読んだ限りでは、あの本は、現状に対応していません。おそらく観光客の誰かがスイスの古書店で買った本を、スイスの防衛要項だという触れ込みで印刷し直したのでしょう。まったく役に立たない古い本です。たしかにスイスは核保有国ではありませんが、核保有国に命じて、核攻撃を行える準備はしてある、というのが、私どものresearchによる共通見解です。スイスは世界一、二位を争う武器輸出国です。最新兵器はたいていスイスの発明と生産で、もちろん、米国にもイスラエルにも技術提供はしているはずです。ところが、その最新兵器の弱点を知っているのはスイスの軍事研究施設だけです。また、最新兵器として武器を輸出する場合は、常に次の新兵器の準備が整ってからです。これは未確認ですが、核戦争が勃発した場合、スイス国民の全てが三年間程度、生活出来るシェルターが準備されているという報告もあります。ほぼ事実でしょう。表向きの陸、空軍は世界で中くらいの規模ですが、ほんとうの最強軍事力を有しているのはスイスだろうというのが、私どもの結論です」

「デンマが、」

 人魚が、自分が無視されていることに気付いたらしい。眼を剥いてそういった。

2017年9月18日 (月)

〔デン魔大戦編〕4

「私、宇宙軍事研究家の増岡久蔵と申します。祖父方がドイツ、祖母方がフランスで、増岡久蔵というのは、あくまで日本においての名前で、本名、つまり実名、世界に通る名前ですが、これがちょっと長い。おそらくは一度では記憶しもらえないでしょうから、いいませんけど、いっておいたほうがいいのならいいますが、ともかく、年齢のほうからいいますと、今年、還暦です。性別はごらんのとおり男性で、同性愛者ではありませんから、伴侶があるのかというと、独身で、べつにモテなかったワケではナイのですが、まあ、それはいいとして、元々は軍事評論家だったのですが、地球の軍事はもうたいていのことはワカッテしまいましたので、現在は、宇宙のほうの軍事研究をしております」

「説明が長いは、おっさん」ハルちゃんレイさん。

「ほぉう、地球の軍事のほうはたいていワカッタのか。それはどういうことだ」

 聞き覚えのある声は土方だ。いつの間にか、宇宙軍事評論家のおっさんの後ろに、背後霊みたいな顔で立っている。

simulationを、し尽くした、ということです」

「なるほど、では、たとえば、」

 と、土方は私たちと、おっさんのあいだに割り込んだ。土方にとって、今のところ人魚はどうでもイイらしい。

「いま、日本と中国が戦争をしたらどうなるっ」

 土方は自分の質問に対しては、やや自嘲的のようだ。口元が笑っている。

「引き分け。と、いうのは、軍政上の定義にはアリマセンから、簡単に説明いたしますと、」

「ほんとに簡単にしてね」ハルちゃんレイさん。

「現況において、日中の軍事力は五分五分だというのが、分析の結果です」

 まさか、圧倒的に軍事費のチガイがあるのに。

 と、私と同じことを土方も思ったのだろう。怪訝という字を顔に描いた。

「ここではアメリカ合衆国は論外として頂きたい。通常兵器でアメリカを上回る軍事力を持つ国家はありません。だからこそ、米国に対抗するために、どこもかしこも核を保有したがるのです。しかし、核はもうすぐ無効化されます。これは、これまでの核抑止力で、という意味ではありません。もうすぐ実戦配備が可能な超電磁砲は、マッハ7の速度で、火薬を用いずに連射が可能。射程は200㎞ですから、たいていのICBMは地対空のこの兵器で打ち落とせます」

 SFじゃ、

「アリマセン。開発中のレーザー兵器は、ドナルド・レーガンのスター・ウォーズ計画からの夢でしたが、すでに実験に成功しております。これは艦艇に装着され、レーザー照射で、敵の空母の機能、つまり艦船発進着陸機能を破壊します。また、セカンド・ストライクの原潜ミサイルも撃ち落とせます。したがって、アメリカ合衆国の軍事力は論外なのです。で、ご質問の日中もし闘わばですが、陸上自衛隊、海上自衛隊の軍事力は、通常兵器においての戦闘力では、中華人民共和国を上回っております。つまり、米国を論外にすれば、世界一ということになります。航空自衛隊も、実力は世界第三位です。日本は、アメリカ合衆国の援助を頼まなくとも、中国には勝てるのです。ただし、中国には戦術核がありますし、現行のまま、南シナ海から太平洋へと、海軍の増強が進めば、五分五分です。どちらが勝っても不思議はナイ。しかし、日米の軍事同盟がある限り、日本の軍事力は無敵といってよろしい」

 無敵、がオレを呼んでいる。

 それで、アメちゃんと仲良くしてんだな。とはいえ、

「何故、軍隊と認識していない国民の中にあって、自衛隊には、そんな軍事力があるんだ」

 と、質問した。

2017年9月14日 (木)

〔デン魔大戦編〕2

かくして、私は一句、一首、詠んでみるのだった。

 

 ふりかえると薔薇がみえる 失いしものばかり

目覚めれば、ここは何処だの朝のいっとき

「日暮れ道」という道 探してみたがみつからず

明日は明日の今日と同じ風が吹く街

あした食うレシピをメモに書くときに あした逢いたいひとの名も書く

生きて在るもの、逝ったもの、この紙一重の重力の流れ

 

 なんだか、夢の中にいるのに路頭に迷っている。路頭さへも焼失してしまったのだが。

とはいえ、まず、目の前に倒れている人魚をなんとかしよう。いつの間にか人魚が横たわっている。こんなことにはもう驚かなくなっている。夢だからな、と、自分にいうのもやめた。

「比目魚よりも、艶っぽくていいや」

ハルちゃん・レイさん「人魚に似てますね」

人魚だからだろ。人魚じゃナイのか。んっ、なるほど、乳首がナイ。というか、薄いスーツをまとっている。ナニよ、コレ。ともかくは、性別女性のようだけど。気絶しているのか、死んでいるのか。

「生きています」と、ハルちゃんレイさん。瞳孔と脈を診たようだ。

「水棲生命体じゃナイのか」

「鰓はありませんね」ハルちゃんレイさん。

 つまり、人魚じゃナイようだ。じゃあ、何だ。人魚みたいな、何だ。

「生きているのなら、この状態からして、死にそうだということなんだろうけど、どうすればイイかな。オレは人命救助とやらは、現実世界では二度ほど経験があるが」

 やってみるか。性別女性だし、美人だし、mouse and mouseの息の吹き込みが出来るという役得付きだ。

「ハルちゃん、レイさんは心臓マッサージ、私は息を吹き込む」

 と、missionして。やってみたら、

 数分後。人魚みたいな性別女性は眼を開けた。

「デンマ ガ キマス」

 と、息も絶え絶えではなく、発したコトバは、きっぱり、はっきり、機械音声の如くだ。

2017年9月12日 (火)

夢幻の函Phantom share~シーズンⅡ~ 

〔デン魔大戦編〕

さてと、全国150人弱の読者のために、シーズンがどんなふうになるかを予め説明しておく。大サービスというワケだ。

 ここからは主に〔デン魔〕との闘いが描かれることになる。〔幻魔大戦〕ではなく、つまりい、〔デン魔大戦〕となる。

 なぜ、こういう予告をしたかというと、あまりにバカバカしい、フザケているという賢明な判断をされたる読者においては、もはや読む義務はナイということだ。もちろんのことだが、私も書く義務などなく書いているのだから、これはフィフティフィ不定ということになる。Fifty ではなくフィ不定だ。

 知的生命体(とりあえず、そう称しておくが、ほんとに知的かどうかはワカランから)が、この宇宙に生ずる確率は、ある計算(いろいろあるんだけど)によると10の四十乗分の一だそうで、これは確率論の対象とはならない数値なのだそうだ。しかし、こういうことにそれは謎だな、と首をひねっていても仕方ないというか、もっと不思議なのは、そういうふうに、おそろしく偶然に出来上がった「この世」がなんで、〈穢土〉でなければならないのか、ということのほうが不思議なのだ。せっかくの微々たる確率から生じたのだから、もちっとマシな世界であってもイイじゃないかと、そう思うほうが順当、アタリマエの感覚ではナイか。

 ところが「この世」だ。

 なんなのだ、いったい。

 完璧に焦土となった函館の市街(死骸だな)を歩いて、辿り着いた海。その海を観ながら、かくなる深き洞察に思いを巡らしている私であった。それと、孕み女二人であった。冗談じゃねえな、夢の中なのに、ほんとうにもう少しマシにならんのかなあ。

 ため息一つ。

「モスラが来ます」、ハルちゃんとレイさんが私を慰めた。

 あのね、二人一緒に喋るからといって、べつにザ・ピーナッツの小美人やんなくてイイじゃないか。そういうことされると、よけいに涙があふれる。あの双子の姉妹は、二人とも、もう「この世」にはいない。それだけで、なんでやねん、と、目頭が熱くなるんだよ、私のような世代は。

 きっとあえるね きっと きみに きみたちに

 私は天国とか極楽浄土とかはまったくその存在を信用していないのだが、先に逝ったものたちとは、もう一度、何処かで逢える気がしてならないのだ。

2017年2月20日 (月)

夢幻の函 Phantom share 37

「これは、あれですね」と、私は感想をいう。

「それは、あれだよ」と、童話作家はなんだかフテる。

レイさん・ハルちゃん「トルストイの『イワンのばか』と旧約聖書の『ヨブ記』の/リミックス/ということですね」

「私も、そう読んだけど」

「そうなんだから、そうだ」

 と、童話作家は私を睨むように、いや、どっちかというと憐れむようにみて、

「あんた、社会不適合者だな。独り暮らしは出来るが、結婚、夫婦生活、家庭、そういものは出来ないんだろ」

 と、鼻で笑った。

 だから、なんだってんだ。

童話作家は、声高にいう。

「わたしゃね、いいたいことぁね、これだけ。あのね、/あんたなんのために生きてんだ、こんなバカバカシイ〔この世〕に/、ね。それはそれ、私自身に突きつけてるアポリアなんだけどね」

 そうして今度はバカ笑いした。

 しかし、私は、この童話作家を軽蔑する。低能だろうと思われる思想を嗤う。

 

 さて、海のほうに向かうか、山沿いにいくか。

 レイさん・ハルちゃん「山は熊いるので、ヤです」

 でしょうねえ。じゃあ、海に向かいますか。

 と、海に向かったが、ひょっとして海に向かって逃げたひとの屍体が浮いてるんじゃなかろうな。と懸念、思案しているあいだに函館の港だ。

 どこへいってもどこでもナイ。あっちがどっちだかも知れない、〔私〕と、孕み女ふたりの旅は、ここから始まるかのようだ。

 

Season1 はここまで。

Season2 は、本年の六月頃始まります。

2017年2月19日 (日)

夢幻の函 Phantom share 36

天国です。

「あのバカのドブには困ったもんだな。二級天使じゃ相手にならんな。まあいいか。そんなことは大天使のわたしにはワカッテいたことだ」

天国のルシフは、昼寝している神ヤハイを起こしました。

「ヤハイさま、出番ですよ。ヒトは弱りはてています。いまこそ、神さまのヤハイさまの偉大さをみせてやるのです」

「そうか、そうだな、そうするか」

ヤハイは、大きなあくびをひとつすると、それから地上近くにおりていきました。 

ドブは、たおれたままです。

「おい、ドブよ」

と、ヤハイは、空いっぱいにとどろくような声でドブの名をよびました。

「オレをよぶのはだれだ」

「わしは、ヤハイという神だ。よく聞くがよい、この世界をつくったのは私だ」

「そうかい。けれども、この田畑はオレがつくったよ」

「こんな田畑と、世界とはくらべものにならん」

ヤハイの声はカミナリのようにきこえました。

「田畑がなければ、ヒトは食っていけなくなるよ」

「田畑くらいがなんだというのだ。わしは、山を動かすこともできるのだぞ」

「山なんて動かされたら、ヒトは困るだけだ。田畑のほうがタイセツだ」

うーん、こいつはかなり、バカだな。とヤハイは思いました。

「ドブよ、おまえのタイセツなツキを生きかえらせることも、わしにはできる。そうしてほしいか」

「ヒトは死ぬもんだ。せっかくやすらかに死んだのに、ツキはもう生きかえりたくナイにチガイナイ」

「毒へびにかまれて、苦しんで死んだのだろう」

「毒へびにかまれても、熊に食われても、死ぬときは同じだ。みんなやすらかだ。ツキも、さいごのときは、そんな瞳をしていたよ」

ほんとうに困ったバカだな。ヤハイは、舌をうちました。

「お前の父も母も兄たちも、いっしょに生きかえらせてやろう。それから、お前のチカラももとにもどしてやろう」

「そうするなら、そうすればイイさ。そうなったところで、どうなるのか、オレにはワカラナイけどな」

「おまえには、あっというまに木々が千本も伐りたおせる斧をやろう」

「オレは、たかが一本の木を伐るときも、いっしょけんめいにする。なぜなら、木も伐られたくはナイだろうからな。だから、オレの命もやがて土になって、お前たち木々にくれてやるからと、そう思いながら木を伐るんだ。その刃を木にむける斧だって、オレと同じ気持ちにチガイナイ」

ヤハイは少し腹立たしくなってきました。

「ドブよ、おまえは、神のいうことを信じないのか」

「オレはバカだから、神というものがどんなものなのかワカラナイ。ワカラナクても生きてきたから、それでイイのだ」

「あらゆる苦しみをとりのぞき、死ぬことのナイ命すら、おまえにやるといっているのだ」

ヤハイの声は天にも地にもひびきわたりました。

「オレはバカだが、生きるのは苦しいものだと生きてみてよくワカッタ。それでも生きてこられた。それにヒトは死ぬものだということくらいは知っている。それでも生きてきた」

はなしにならんな。ヤハイは天国にもどっていきました。 

ルシフは、とっくにどこかにすがたをかくしています。

「ああ、たいくつだ。ヒトなどいらないな。いらないものはいらん」

ヤハイは、また、大あくびをしました。 

さて、それから、ドブは最後のチカラをふりしぼってツキを埋めてやり、自分もそのかたわらによこになりました。

そうしてやがて土になりました。

次の年、そこから新しい芽が二つ出て、それは100年ほどで二本の木になりました。

そうして、毎年、それぞれの木にチガウ花が咲くようになりました。

もう、国はありませんでした。ヒトもいませんでした。

田畑はだんだん森にもどっていき、川のせせらぎと、鳥の声が聞こえるだけになりました。

ことしも二本の木には、それぞれの花が咲いています。/

2017年2月18日 (土)

夢幻の函 Phantom share 35

エブの国が、つまりはビブやドブたちの住む国なのですが、しだいに弱々しくなっていることを知り、となりの国が攻め込みました。戦争をしかけたのです。

もう兵隊がほとんど動かなくなっていたので、エブは嫁を置きざりにして、ビブといっしょに逃げ出しました。けれども、帰り着くころに、家は戦火に燃えてしまって、アトかたもなく、父親も母親もとなりの国の兵隊たちのために、命をうばわれてしまっていました。

「やあ、兄さんたちおかえり」

それでもドブは笑顔で、兄たちの帰りをよろこびました。

「ドブ、父さんも母さんも死んだのか」

「ああ、戦争だったからね。しかたがナイよ。でも、父さんも母さんも寿命だったし、それに、ヒトは何処でいつ死ぬかなんてワカラナイもんだよ」

そういって、ドブはエブとビブに山羊の乳をふるまいました。

「田畑がふえたよ。また、いっしょにタネをまこう」

けれども、エブもビブも、なんにもヤル気がしないのでした。

「夢はかなったらオワリだ。けれども欲はチガウ。欲にはキリがナイ。エブ兄さんの夢はほんの少しのあいだだったが、げんじつになった。げんじつになったら、このザマだ。オレの大金持ちになる欲もかなったが、キリがナイというのは、カラダに悪いらしい。どうも苦しくてたまらない」 

そんなときに、となりの国の兵隊たちが、エブとビブをつかまえにきました。ツキはドブにしがみついていました。

となりの国の隊長さんは、それをみて、

「この二人はいいだろう。となりきんじょにきいたのだが、男のほうはちょっとバカで、娘のほうは口と耳が不自由らしい。そちらの二人だけをつれていけ」

それをきいたとたん、まずビブが弱りはてたようすで死んでしまいました。

それからすぐに、エブも、力なく、はててしまいました。

「ちょっとへんだが、死んだものはつれていってもしかたがナイ」 

ドブは穴をほって、エブとビブを埋めてやりました。ツキは兄たちの墓に、どこからか花をつんできて、そえました。それから二人は新しい田畑にタネをまきにでかけました。

すると、ツキのようすがおかしくなりました。

毒へびにかまれたようなのです。

「こんなところに毒へびなんていないはずなのに」

ドブは、いっしょけんめいツキの、てあてをしましたが、ツキはドブをみつめたまま死んでしまいました。 

ドブはしばらく泣きました。けれども田畑にタネをまくことにしました。

そのとき、あの二級天使があらわれました。

「おい、ドブよ、おまえはひとりぼっちになってしまったな」

「いいさ、オレには田畑がある」

「その田畑をたがやす力も、タネをまくチカラも消してやろう」

二級天使がそういうと、ドブのカラダからチカラがぜんぶ抜けて、ドブは、なえてしまい、土の上にたおれてしまいました。

「いいさ、オレはこのまま田畑の土になっていくさ」

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