À bout de souffle-10
ああそうか。ソシュールさん、ウィトくんの言語学(「言語ゲーム論」)は言語の〈表現解〉ではナイと。
主筆「だって、数学は表現ではナイでしょ。言語を数学的に捉えていけば、事象のみ、意味のみの表象になりますから、感性は抜け落ちて現象を表出することは出来なくなります。そういった言語も必要ではあります。しかし、言語全般をそうだというのは「鯛焼き」を造っているのと同じです。型にハメて焼いているだけ。「鯛焼き」は相対的価値もありますし、等価価値にもなります。しかし、〈表現〉としての価値はどうでしょう。餡子をさまざまに変えることですかネ。
ところで「ハナモゲラ」より以前に遡って、私たちはその相似、類似をみつけることが出来ます。たとえば、少年少女向け活劇『七色仮面』の主題歌です。このドラマは少年少女向け活劇なのですが、他の少年少女向け活劇と一線を画すところがあります。ほぼ全編に少年少女の登場人物が殆ど無いことです。主役も少年少女ではありません。第一部『コブラ仮面』は原作者(川内康範)が自ら脚本を担当していますが、第二部『キングローズ』は結城三郎で、そのうち一話には「三つ数えろ」というサブタイトルがあり、このドラマが大人向けハードボイルド路線を狙っていたと予想されます(とはいえ、七色仮面の能力として、瞬間移動が特撮として取り入れられており、まるっと超能力者としても描かれています)。それはいいとして、主題歌ですが、その中につぎのような歌詞があります。/デンデントロリコ やっけろ/です。「この世にあだなす(仇成す)ものたちを」やっつけるのですが、果たして/デンデン トロリコ/とはどういうやっつけ方でしょう。ワカランけれど、そういうやっつけ方なのです。その方法は本編にも出てくるワケがアリマセン。これはもう、音か擬態語です。言語以前です。というか、言語発生以前の言語素です。私たち子供はともかくその歌詞の意味などどうでもよく、その音(擬態語)に〈共鳴〉してこの主題歌を歌っていたワケです。/デンデン トロリコ/からは、仇成す悪人が/デンデン トロリコ/とやっつけられる様子が想像できます(いまの世の中、そういうことが想像出来ない、の、がいっぱいいますが)。
いま少しよく似ている例は、植木等さんの一連の青島ソングでしょう。ηスーイスーイスイダララッタ スラスラスイスイスイ スイノスイダララッタ スラスラスイスイスイ、と、なんですかね、これ。ゴリガーン ゴリガーン ゴリガン野郎っお、と、どんな野郎なのか想像つくところが恐ろしい。これなんかウィトくんなんかに読ませたら(聴かせたら)「こんなものはコトバではなく掛け声にしか過ぎない」と一蹴されるでしょう。しかし、掛け声を言語の領域で括らなければ、日本民謡は軒並みアウトです。ヤーレンソーラン(ソーラン節)から、ヨイトヨイヤマッカ ドッコイサノセ(江州音頭)。そういえば今は亡き森山加代子さんの『ジンジロゲ』という歌もありました。あれなんか小学生の頃、登下校の道筋でみんなで歌って大笑いしてましたが、何がオモシロカッタのかな。
ともかくこれらは「ハナモゲラ」の素です。/はなもげら おおそれたかみ さんびなす/
付句/ヤメよろこがす したらめったり/ で、つづく