時世録・52
以前鬱病で通院していた精神科は、入りやすくするために「内科」の看板も挙げていたのだが、挙げている以上はその治療もせねばならず、とはいえ、血圧一つ計るのがうまくいかないというふうだったので(いまはたいていの病院、医院はマシンですけどね)、風邪くらいしか診療対象はなかったのだが、そこで、風邪をひいて、まだ、抗生剤が出る時代だったから(いまは出ませんよ。出す医者がいたらそこはヤメなさい。効かないんですから)、抗生剤も投薬され、医師がいうには「四日は続けて服用してください、でないとキンタイセイになりますから」なのだったが、当時、私はこの「キンタイセイ」というコトバがワカラナカったので、当然ながら質問してみた。と、「菌が耐性を持ってしまうんです」とのことで、ああ、それで「菌耐性」かと、以来、他の医師と話すときも、抗生剤投与になると「菌耐性」というコトバは使うのだが、さて、此度、シス・カンパニー公演の『シラの恋文』を観る、あるいは観たみなさま。東京は7日からだから、この「菌耐性」というコトバは、福岡公演のさい、観劇していた医師から「耐性菌じゃナイですか」という指摘受けて、そのせりふがまだ若いこのせりふだったので、「菌が耐性をもつので」に訂正した。それについては、現在通院中の総合医療医師にも訊ねたが「菌耐性」とはいわないそうで、しかし、「菌が耐性を持つ」のなら「菌耐性」といってもよく、「耐性を持った菌」ならば「耐性菌」なんじゃないですかと、副詞と名詞の用い方じゃないのかと詰め寄ったのだが、やはり「そうはいいません」と一蹴されたから、仕方なく若い俳優に恥かかせてもなあと、せりふを訂正した。
しかしだぞ、医師たち。おめえらは、「花粉症」といい、「盲腸炎」といい、「蓄膿症」といい、「パニック症候群」というてるやないか。すべて、そんな病名の疾病はあらへんやないか。「アレルギー性鼻炎」「虫垂炎」「副鼻腔炎」「心臓神経症」やないのけ。
まあ、ええけんどナ。
で、昨日、アカデミー賞受賞のミシェル・ヨーの『バナ・バナ(略しています)』を観たが、なんのことはナイ、ああいうのを書いてんだよワタシは。そうすると、小劇場演劇の場合はイイ。客も頭イイからな(と、おもうんだけど)。これが、賃仕事になると必ず役者から「難しい」といわれる。プロデューサーは「難しいけど、私は好きなの」と、さすがにまだ、勘がイイ。「重なる世界というのがあって」と字幕がでてきたときは、ざまあみろっ、という気になったなあ。とはいえ、映画解説なんかにゃ「夫の気が変になり~~」とか書いてある。チガウのよ。とはいえ(連発だな)、SNSで、「恋というものがあんなふうに成立するのはロマンです」(というふうなこと)が書かれていたのにはホッとした。