Sisyphus descending from the summit-23
藤巻 健史(フジマキ・ジャパン代表取締役) 2025/07/16 17:00 プレジデントオンライン
/まずは日本経済の現状、そして今、なぜ日本が物価上昇に悩まされているかを分析してみよう。1980年からのGDP(国内総生産)が世界ダントツのビリ成長しかしなかったせいで、日本の税収の伸びは世界最低レベルだ。GDPという全体のパイが増えなければ税収も大きく増えるはずがない。一方、歳出の増で借金総額は急速に膨らんだ。1980年に100兆円足らずだった国の借金は、現在1323兆円。とほうもない数字に膨らんでしまった。GDPに対する比率は50%から260%になった。大雑把に言えば、GDPが伸びれば税収も同じような比率で伸びる。したがって借金のGDP比は「借金を税収で返済する難易度」であり、現在の日本は税収で借金を返すのが世界で最も難しい国になってしまったということだ。/~国民(債権者)に対する日本(債務国)とでもいえばいいんでしょうか。
/なぜ借金はこんなに膨れ上がったのだろうか。その答えは借金額がすでに997兆円にまで膨れあがった2012年末にある。借金の対GDP比は約226%で、OECDやIMFからは「深刻な財政リスク」があると問題視されていた。ところがこの時〈政権交代〉が起こり、翌年から政府・日銀が(実質的な)財政ファイナンス(資金管理、金融、財源、融資)を始めた。日銀総裁に就任した黒田東彦氏の「異次元緩和」だ。財政ファイナンスを禁じ手とするこれまでの伝統的金融論/正統派金融論の立場からすると、卒倒するほど驚いた。財政ファイナンスとは「政府の歳出を賄うために中央銀行が通貨を発行して賄う」ことで、実際に日銀が国債を大量に購入し、日本政府を買い支えた。政治家にとっては増税を回避できるために極めて都合のいい手法だ。それがゆえに〔通貨の発行が過ぎハイパーインフレを引き起こすとの理由で、世界中で禁止されている〕。すべての主要国の中央銀行が政府から独立し、政治家の言いなりにならないようになっているのはそれが理由だ。政府・日銀は、その原理原則を大きく逸脱した。デフレからの脱却のためとの理由を付けた「異次元緩和」という美名に、財政ファイナンスという実態を隠したのだ。/~つまり国に銭が無いなら日銀が紙幣を印刷して国際を買えばイイってことですね。そうか、それ、ヤったのだ。そうすると、インフレになるんじゃないかなと素人としては漠然とビビリます。
/通貨を発行すればするほど通貨の価値は棄損する。モノやサービスの需給と何ら変わらない。通貨が無尽蔵にばらまかれれば供給過多でその価値は下落する。つまり1万円札を持っていても買えるものが少なくなり(=物価上昇)、為替の世界でも他国の通貨に比べて日本円は弱くなることを意味する。伝統的金融論の教え通りのことが、今、日本に起こりつつある。価値の棄損による物価の上昇である。/~ここにすでに物価上昇が認められていますね。いまに始まったこっちゃナイということなんでしょうけど。
/その物価上昇が、参議院選挙後に急速に加速していくと思われる。他国に比べて遅く始まった日本の物価上昇は今や先進国中、最悪だ。それにもかかわらず政策金利は先進国最低である。すなわち実質金利(名目金利-物価上昇率)が世界で断トツに低い。伝統的金融論では、物価をコントロールするのは中央銀行の最大の役割で、中央銀行のみが可能と説く。それゆえに中央銀行は物価の番人と呼ばれている。その物価の番人が実質金利を低く抑えれば、需要は拡大し景気は良くなり、物価上昇は加速する。リーマンショックや、ブラックマンデー直後でも実質金利は今より高かった。実質金利からすれば、日本はとんでもない大不況に陥ってしまっているのかと思うほどだ。これでは今後、物価が猛然と押し上げられるのは必然だ。1985年から1990年のバブル時、経済は狂乱した。(中略)当時は円が毎年30円から40円ずつ急騰していたので、それがデフレ要因となり、インフレを加速させなかった。そのためCPIのみに注目していた日銀は引き締めが遅れ、その後の「失われた30年」を招いてしまった。その時と今の状況は似ている。当時と違うのは、今は強烈な円高ではなく円安方向だということ。インフレを相殺する円高というデフレ要因が存在しないのだ。日銀が実質金利を低く抑えていることに加えて、資産効果(資産を持っているものがお金持ちになったつもりで消費を増やす)が存在する。物価は今後、異常なスピードで上昇をすると思われる。日本経済はいま、すぐにでも金利を引き上げ、ばらまかれたお金を回収しなければならない危険な状態にある。しかし政治家は、今回の参議院選挙で減税を競い、給付金の交付を国民に約束している。減税や給付金の交付を行えば、ただでさえ過剰発行されている国債を新たに発行しなければならなくなる。しかし、植田和男総裁になった日銀は、従来の買い入れ額を削っており、日銀に代わる買い手が見いだせない状況だ。長期金利上昇は今や世界全体のトレンドであるが、財政状況が世界最悪の日本で、ほぼすべての政党が更なる国債発行が必要になる公約を口にしている。日銀以外の買い手がいない以上、日銀は購入増を余儀なくされるだろう。つまり減税や給付金交付の悪循環が、ターボエンジンを利かせて加速してしまうと予想される。政治家の性として、選挙民のためにばらまきをしたいのなら、何かの警報装置が必要だった。借金がたまれば長期金利が上昇し「政治家さんよ、そんなに歳出を増やせば長期金利が上がりますよ。それでいいのですか?」との警報だ。それが財政規律の軽視を防止する先人の知恵だった。しかし政治家は、特例公債法を制定し、財政法第4条で禁止されている赤字国債をほぼ自由に発行できるようにした。更に日銀が長期国債を爆買いし、政府がどんなに国債を発行しようと長期金利が上昇させない財政ファイナンスを開始してしまった。今、日本には政治家の暴走を食い止める警報が存在しない。これらの仕組みがあれば政治家が、「減税、給付金」を口にした途端、長期金利が急騰し、政治家はそれらの主張をすぐに引っ込めていたに違いない。/~問題は、これらのことを政治家(具体的に参院選候補者、その政党、集団)は識っていてヤっているのか、無知なのかということです。どっちにせよ国民、大衆にとっては諸悪にはチガイナイです。で、その諸悪の何れかを選挙で選ぶワケか。国民(債権者)は物価上昇を尻目の債務者となる誰かに投票しなきゃならないという、これ矛盾じゃないの。ヤだねえ。
/財政再建をなすには3つの道がある。①戦争で他国の資産を奪い取るか、②増税をするか、もしくは③見えない形の税金であるインフレを起こすか、である。①は論外であり、②もここまで借金がある現状では難しい。となると③の方法しかない。これを経済学ではインフレタックス(インフレによる債務圧縮)と呼ばれている。インフレは債権者(お金を貸している人)から債務者(お金を借りている人)への実質的な富の移行である。日本において債権者は国民であり、日本一の借金王は国である。/~インフレもtaxだとはしらなんだ。物価上昇は見えないカタチでの税金。なるほど、そうだな。
/例えば、こう考えると分かりやすい。1000万円を借りている個人タクシーの運転手さん(債務者)は、インフレでどうなるのか。初乗り運賃が100万円というハイパーインフレとなれば、お客さん10人を乗せるだけで借金が完済できる。大喜びだ。一方、汗水たらして10年間で1000万円貯めた人(債権者)はタクシーに10回乗ったらすべてを失う。その意味で、インフレは債権者から債務者への実質的な富の移行なのだ。国民から国への富の移行であるから税金と同じである。結論を皮肉的に言うと、ただでさえインフレ税が発生しつつあるのに、今回の参議院選挙では、ほぼ全政党が(理解しているとは到底思えないが)「減税」「給付金」を主張し、結果としてインフレ税増税を狙っていることになる。その結果、「究極の財政再建」が達成される。しかし国民生活には地獄である。給料や年金は毎月上がるが、パンの値段は毎時間上昇する。もらった給料や年金では1日か2日でなくなってしまう。/~まだ論説は少々続きますが、ここからは税というモノの本質論が必要になってくるような気がします。私は、この筆者の論説の是非の検討はこれ以上はしませんが、税というものを選挙の道具(というより武器)にスルのは、黒魔法のタネをいじくりまわしているようで、気色悪いことは確かですネ。と、心得て投票所に参ります。それでは、投票所でお会いしましょう。
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