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2025年7月31日 (木)

Sisyphus descending from the summit-27

チャールズ・ロートン監督『狩人の夜』リリアン・ギッシュ/~『想流私塾(そりゅうしじゅく』という戯曲の塾を伊丹アイホールの企画で、二十数年続けました。毎度、「これだけは観ておけ、読んでおけ」みたいな案内ペーパー(一種のガイダンスですかね)を十二~十三人程度の入塾者には渡したのですが(毎年更新)、最初から最後までそこにあったのが(他にもたくさんあるのですが)この映画ですね。いやもう、これを劇場で観たときの、あの震えるような高揚感、忘れられませんね。その後もDVDで何回も観ているのですが、こういう映画をキリスト教王国の亜米利加合衆国が創ったのかというのも、驚きでしたが、なんつうても、リリアン・ギッシュ(後半にしか出てこないのですが)の凛とした、毅然とした存在感。彼女はとにかく私の中では最高の女優ですし、この映画は、永遠のbest oneです。ワンッ、吠えるぞモウ、牛です。魔法のような映像美。あの時代にかくなるモノクロ映像が撮れたことの奇蹟。日活ロマン・ポルノにも『夜の狩人』というタイトルのものがありますが、きっと監督は観たんでしょうね、この映画。
安宅(あたか)は、『義経記』などに取材した能楽作品である。/~歌舞伎では『勧進帳』というタイトルですね。弁慶が偽物の「勧進帳(お寺に寄付を募るお願いが書いてある巻物)」を安宅の関所で読むのです。白紙です。しかしまあ、書いてあることはたいてい同じてすから、タモリさんが読んだ赤塚さんへの弔辞よりは簡単だったでしょう。原題の『安宅』は能の演目です。『義経記』は「ぎけいき」と読んで、さまざまな源義経ものの原曲です。私の記憶では、源平の合戦が終わって後、兄の頼朝の追手から逃れていく義経の逸話の一つです。『船弁慶』とともに人気があります。能楽をもとにした歌舞伎は多いのですが、能狂言は四百年以上の歴史があるものの、実際に舞台を観た一般庶民はいません。百姓どころでは庄屋、名主クラスの帯刀を許された者しか観る機会はなかったからです。何故なら能狂言は武家のたしなむ「芸」だったからです。よって、装束も派手で豪華、贅沢です。金糸銀糸です。ですので、ときどき「能はインテリのもので、狂言は大衆のものだ」などと、教える方(私も高校生のとき、そう教わりました)がいますが、それはマチガイです。私は狂言のほうはオリジナルを書いています。『武悪』をシェイクスピア劇に脚色したもの。これは、そのまま狂言の演目として上演出来ると主役の方に励行されまして、かなり気をよくしました。もう一つ「異流能」として太宰治さんの『こぶとり』を用いましたが、東京から和泉流の有名な親子が、京都から「お豆腐狂言」の茂山家(大蔵流)。茂山の千作師匠はほんとうに面白い方でした。見事な方でした。人間国宝なのに私のことを「せんせ、せんせ」とよんで下さって、恐縮至極。それはもう、ただ舞台へ橋懸を歩いて出てこられるだけで和むのです。東京の親子ですか、親は「家」に対してのコンプレックス持ち、子はただの莫迦でした。堅苦しいだけでツマンナイのなんの。「狂言は不条理劇なのだ」とかいいなすってねえ。これだけでも莫迦の露呈です。二人して親子丼でも食べる狂言が出来るならヤってみてごらん。芳沢あやめ(『あやめ草』の作者・関西歌舞伎役者の女形、芸の理論家としても才気活発です。『役者論語(守屋毅・編訳、徳間書店)』にちょくちょく登場されます)ならなんというだろうなあ。子のほうが、私がオリジナルのホンに書いたせりふ「鬼に鉄棒」を「おににてつぼう」と語ったのには笑ったな。本番で。そいで「かなぼう」と正しく語るようにマネージャーに提言したら、「彼、きょうは疲れているので」といわれました。能に『鉄輪』と書いて「かなわ」というのがあるのです。ですからわざわざ私、「鬼に金棒」を「鉄棒」と書いて「かなぼう」と読むようにしたのです。辞書には「金棒」とあります。しかし、鬼が手にしているのは「鉄」の棒です。これは辞書屋さんの怠慢だとおもいます。この船には乗れません。しかし、息子のほうはそういう教養も知恵も無い。簡単に「疲れて」舞台に上がってはイケマセン。いまは偉い御仁におなりです。低音の魅力だそうです。DXで『唐人相撲』をおやりになる(なった)そうで。大蔵流が上演された舞台はテレビで観ました。能舞台ででした。(大蔵流では脇狂言、和泉流では雑狂言に分類する)芸能も時代と寝なければ存続していけません。要は「寝方」の問題なんですけどね。~暑いので、ぼちぼちです。

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