Sisyphus descending from the summit-4
タイトルの意味は、直訳ですが「山頂から降りるシジフォス(シーシュポス)」になります。『シジフォス(シーシュポス)の神話』で、ご存知のようにシジフォスの受けた刑罰は、大岩を山頂まで自力で運び上げること(転がしながらですが)。ところが、この大岩は、山頂まで運び上げられると、山頂から麓まで転がり落ちることになっている。ので、また運び上げる。この永遠の運動、かくなる神話、であります。いわゆる人間存在の不条理を表したモノなのですが、嫁葉わ刈るように(これね、初代ワープロを使って仕事したとき、/読めば解る/と打鍵したつもりがこうなったのです。懐かしいですね。『新劇』(のちに『しんげき』に署名変更)に連載などをヤっていたときですネ。ですので、嫁葉というのは姑に対する邪魔者で、刈るほうがヨイ、と注釈を付けたりして遊んでいました)。論旨を本筋にもどしますと、やっぱりアリストテレスの述べたことはそれなりにそれでイイんじゃないの、実存なんて一種のハッタリじゃないの、と、高校生の頃ですが、そんなふうに〈反抗〉していました。高校生なんて/理由なき反抗/ですから。人間が実存的に思いどおりになるなんて魔法みたいなものじゃないのか。つまり本質に対する反対概念が実存なら、さらにその実存に対して反抗していたのですネ。
ところで、アルベール・カミュはシジフォスに、ある〈free time〉を与えるのです。これは本質に対しての実存ではアリマセン。本質に対してのベクトルの違う〈反抗〉です。具体的にいうと、大岩が麓まで転がり落ちてシジフォスが麓にまた降りてゆくまでは、ある時間のair pocketが生じます。これがシジフォスの時間だというのです。これは「与える」というより〈発見〉とうけとられるかもしれませんが、このとき、シジフォスは山頂からゆっくり歩きながら麓の町に灯る明かりをみます。このひとときのなんと静謐で爽快なことか。『革命か反抗か』においてサルトルとの論争で当時カミュは論破されたことになっているのですが、私がこれを読んだのも高校生の頃。アルジェの闘いについての論争らしいのですが、どうも未熟な私にはチンプンカンプンでした。しかしニュアンスはなんとなく伝わりました。そこで漠然と感じたのは、この論争の勝敗が着くのはもっと年数がかかるのではないかということです。
いい勘でしたネ。現在、サルトルの乗っかった〈革命〉など信じているひとは誰もいません。サルトルは自らをマルクス主義者であると宣言しましたが、人間存在を下部構造からつきとめようとしたマルクス経済学は、これは〈運悪く〉廃れたとおもいます。共産主義の名のもとに殺された犠牲者は数千万人にのぼります。未来にユートピアを置くということが、あまりにも理想的に過ぎたのと、どうすりゃいいのという方法論が定まっていなかったせいで、現実に共産主義国家(というと矛盾なのですが)、共産主義世界を実現させたガバメントは歴史的にたったひとつだけです。小さな部族国家でした。時とともに歴史の中に滅びました。この統治を識るヒトは殆どアリマセン。
マルクス『資本論』は読んだほうがイイ書物ですが、面倒なのと、あきらかにツマラナイので、読むなら最初の二割あたりまでだけでイイと私は勝手にそうおもっています。『貨幣』とか、〈価値携帯〉とかです。意外と経済学者はここも読んでいません。ルイ・アルチュセール著作の『蘇るマルクス』を読んでいるのは経済学者ではなく社会学者でしょう。私はどちらでもナイのですが、昨今の世界情勢(なのかどうかはワカランのすが)をメディアが五月蠅くスピーカーするたびに、まあ、歴史主義というのも螺旋状ではあるけれど、棄てたものじゃないんじゃナイ、ボパーさん。とつぶやいたりします。カール・ポパーさんは哲学者ですが、歴史主義がキライでした。親族が犠牲になったからです(スターリンのせいだったとおもいますが、記憶チガイかも知れません)。『資本論』によると、資本主義は滅んでいく運命になっています(自滅だったと記憶していますが、、、うーん)。現実はそうはイカの金玉ですが、数学者カントール(「不完全性定理」の御方)の予言(数学的予想)に添うかのように合衆国はファシズム傾向に進行中です。おまけに欧羅巴では未だにヒトラーの亡霊が徘徊しているようです。
いまひとつ、論争の評価の変化は、マルクス×バクーニン論争ですが、これも現在ではバクーニンのほうが人気があるんですね。はい、無政府主義の論客です。国家も政府も不必要、経済調整委員会だけあればイイと、のたまいし革命家。マルクスの論敵。極論ではありますが、「党」が権力を持つよりマシ。
さて、本論はここからなのですが、それは次回となります。
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