À bout de souffle-9
駄筆「そのintelligentsiyaを主筆は鼻で笑うのですね。
主筆「いえいえ、そんな失礼なことはしません。どうせなら腹で笑います。合衆国の大衆もインテリの/上から目線/過剰意識(心気症)に卑屈になってトランプ劇場のチケット買うくらいなら、憚ることなくテキサス・カットのステーキ食ってビール飲んで、腹で笑っていれば良かったのです。コーフンしてマガ、マガなんて投票なんかするから、コーフンした結果にしかならないのです。
なるほど、えーと、ここら辺りでタモリさんの『ハナモゲラ語』にもどらないと。
さて、『ハナモゲラ語』の基本は「ハナモゲラ」だ。では、「ハナモゲラ」とはいったい「何」か。主筆は「あれは、〈ノッケクオリア〉だなあ」という。クオリアとは認知哲学(科学)によれば、先述のフッサールの現象学的考察に近い。また、哲学の永い問題提起であります。カントさんにせよ、ニーチェせんせにせよ、「神にしか認識出来ない=客観」の/モノ/という/モノ/が存在しました。ニーチェせんせは/モノ/の認識を「それぞれのヒトのそれぞれの解釈」にしました。では「ハナモゲラ」は、といえば、「それぞれのヒトのひらめき」ということが出来ます。イメージというものでもナイ。解釈された事物でもナイ。いわば/一瞬のヒッティング/です。まさにinspiration。エジソンは「天才とは、99%の努力と1%のインスピレーションだ」といっています。(もっとも、これは99%の努力のタイセツさを述べたものという解釈もされていますが)同時代人で交流電気の発明者ニコラ・テスラは「天才とは、99%の努力を無駄にする、1%のひらめきのことである」とエジソンを揶揄しています。さしずめ主筆ならどっちがお気に入りですか。
主筆「1%のひらめきも無駄にしない99%の努力。努力というより好奇心に近いですネ。とはいえ、〈ひらめき〉というものも無意識領域の発想に入る気がしますが。
だ、そうです。タモリさんも遊び仲間から仲間外れにされて、ネグレクトの状態になったときなんかは、ずっと坂道に座って、その坂を昇り降りするヒトを日(ひ)がな、眺めていたそうです。この観察力がのちに森田一義をタモリにするのです。劇作家の岸田國士老師も「タイセツなのは想像力よりも観察力だよ」と述べていらっしゃいます。
では、その即自的な「ひらめき」が他人にどうやって通じるのか。と問題はそこにいくのですが、これはうんと頭のいいヒトのヒントをお借りしましょう。養老センセは「理解というのは共鳴なんだ」とズバリおっしゃっています。どうも養老センセのコトバはどれをとっても宝蔵院流の槍術のようで、避けきれずに一突きされる。もっとも宝蔵院流槍術は突くだけではアリマセン。斬ることも出来る、いわゆる十文字槍ですが。で、主筆も一突きされて、「うーん、なるほど」になります。
片方が「ハナモゲラ~~~」と云う。語る。音を出す。響かせる。たとえばうんと時代を遡ってHomo sapiens穴居時代。氷河期の真っ只中の洞穴生活。外は吹雪いている日が多い。いまでいうインドアな生活が多くなる。周りは洞窟。入り口や、天井の穴から風が入ってくる。洞穴を通り抜けていく。その音を、ヒトは聞く、聴く。そこでまず先史人類は外の自然と風の吹き抜ける音を聴いて〈共鳴〉する。風の音を真似る。声を出す。言語はまだ無い。喉は鳴る。唇も鳴る。「イヒュー、ウウウウー、ビイウー」。つぎに風の音ではナイ音を風のように出してみる「アアアッアー、ガガカガガアアア~~~、オオオオオオウウウウウッ」それを聴いていた近くのヒト、遠くのヒトがそれを真似る。「アアアッアー、ガガカガガアアア~~~、オオオオオオウウウウウッ、クックックックウウウウウウ~」ここに感情が乗っかってくる。悲しいとき「ルルルルルルオウオウオウっ」楽しいとき「ハハハハハハハイエイエイエオオオ」。さらに、喜怒哀楽の感情を抜きにしても、その記憶で声音を出すことを覚える。これが音楽の始まり、演劇の始まり。
主筆「そうなんです。それがウィトくん言語学には無いんです。ソシュールにも無い。しかし、ウィト言語学やソシュール言語学が無くても演劇は成立します。演技を創ることは出来ます。全編、お芝居は共鳴だけの音声でも成立するのです。これが、/〈文法・ルール・論理〉がナイ、のに通じる/という命題のいわば「解」です。そうしてこの言語形態は「表現価値形態」といえます。~で、つづく
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