nostalgic narrative 49
承前:そうなると、けっきょく単純にいえば「哲学」に戻るしかナイ。たしかにそう答えている学者もいる。スキャナーやシンセサイザーの発明者で、人工知能(AI)の進化に関する大胆な予想で知られるレイ・カーツワイル氏は大胆にこういう。
/AIと脳の接続で人間の知能は桁外れに高まり、あらゆる病気を克服して寿命は500歳に達する/さらに、
/AIがより優れたAIを生み出すようになり、人類は脳をこれに接続することで知能を100万倍に伸ばせる/とまで同氏は予想する。シンギュラリティー後の社会はどう変わるのか。カーツワイル氏が最も大きなインパクトを期待するのがヘルスケア分野だ。/32年ごろにはAIの活用によって医療技術の進歩が加速し、1年ごとに寿命を1年延ばせるようになる/実現すれば人間は実質的に老化しないことになる。これを同氏は「寿命脱出速度」と呼んでおり、その限界値から/将来的に人類は500歳まで生きるようになる/と予想する。
カーツワイル氏が肯定的なのは「これまでの人間に不可能だったことが可能になる」と考えるからだ。/健康寿命が延び、テクノロジーによって人間の能力が補完・拡張される。生きるのがとてもエキサイティングになるだろう。いくつになっても『あすも目覚めたい』と思えるようになる。それもシンギュラリティーの一部だ/
「汎用人工知能(AGI=Artificial General Intelligence)」が2年内に実現すると主張する研究者も現れている。人間同様にふるまうAGIが出現したとき、そこに「意識」は宿るのかという問いは長年、研究者の間に論争を巻き起こしてきた。この点についてカーツワイル氏は「意識の有無は哲学的なテーマだ」とした上で、「それを調べる科学的な方法はない」と判断を留保した。しかし「人類は最終的にAIに意識があると信じるようになるだろう」と指摘する。/
うーんと、この堂々たる自信に唸るしかナイが、もう一つ、極めて優れた一点突きの論談も記しておく。
/チャットGPTなど生成人工知能(AI)が人の言語に近づくというより、人がAI仕様になっていく心配があります。AI的な書き方になって、言語の最も良質な部分が失われる感じがするんです。礼状とか、こんな記事をと言えば、AIはささっと文案を作る。それなりに気が利いていて、自分でもこううまくは書けないとも思う。自分の言いたいことをAIに先取りされた気持ちにもなる。自分から湧いた言葉ではないのに、それでよしとなる。そんなことを繰り返せば、辛うじて何かを言えたという経験を、しないままの日常に慣れてしまうんです。AI研究には最初、人の脳と似た仕組みを作ろうという考えがありました。その際、意識や感情、言葉と表現する対象とのつながりをどう教え込むかが問題になった。でも、いまは発話に至る仕組みが別でも、結果が同じならいいという実用性が先に立ち、『人と同じに』という考えが後退した感があります。他の精密機械の開発と違うのは、そこに人の心や意識、精神がわかるヒントがあるかもしれないと思うから、AI研究は尊重されてきたのです。なのに、結果は同じと開き直られると、じゃあ複雑な自動販売機と同じですねとなっちゃう。工学的なブレークスルーはあったけど、精神のあり方としてはまだ何も発見していない感じなんです/~大澤真幸(おおさわ・まさち)社会学者・毎日新聞2024/11/5 東京夕刊
喧々囂々、侃々諤々。されど、「AIもかなり電気食うで。原発どんどん稼働させんとしゃあないのとちゃうか」という実利的見解もまたあるのだ。****つづく
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