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2022年9月16日 (金)

last job revision 4

38~55

38・ジャック・ラカンはハイデガーの〈現存在〉の向こうを張って人間の存在を〈言存在〉と定義している。ヒトによる言語の発明(発生)は進化の過程による〈大脳化〉(今西錦司進化論の中の今西老師による造語)から得られたものだからだ。
39・フロイトは宗教については、幼年時代に端を発する苦悩が疾病の発症となる、と解釈したが、ラカンは1950年代までカトリックの熱烈な信者であった(という伝承がある)。1960年代になるとカトリックに疑問を持ち始め、1975年あたりから再びカトリックへの信仰に戻ったのではないかという(不確定な伝承がある)。これをどう解釈するかは、解釈する側の〈権利〉ではあるが、差し当たって私の好奇心の赴くところではナイ。
40・「全ての」というワケではもちろんナイが、言語にはある程度の曖昧さや、明確な云いマチガイが含まれている。この点について私は不勉強ではあるが、ソシュールやウィトゲンシュタインの「発語」のみにおける言語学の欠陥として、単に「一対一対応」を基にした言語学は演劇には不向きだと拙作(『恋愛的演劇論』)で述べておいた。
41・演劇の発語は「せりふ」であるが、「沈黙」という言語(同様に扱われる表出、表現)も存在する。相対するもののdialogueにおける両者それぞれの「沈黙」は、音声として発せられないだけで、フロイトふうに述べればその「沈黙」は「無意識」に存在する抑圧されたエネルギーと同似性になっている。
42・発せられるから意識的で、発せられないから無意識のままであるという分け方もしない。(こういう場合、演劇にはト書きという便利な方法がある)。
43・「示唆的な言い損ない(云いマチガイ)と無意識には密接な関係がある」「言語は無意識を意識するための手段である」を念頭において「2・鬱病とは、ほんらい表出されるべき〈モノ〉が疎外されて表出された〈状態・情況〉をいう」を「詩作」と「鬱病」における鬱疾患でかんがえてみる。
44・「詩作」は意識的な云いマチガイの美的な表現といえる。たとえば東京のことを「灰色の空の下の人々、彼らの吐息だけしかない空気」と表現すれば、この意識的な「創作」は意識的な云いマチガイだ。喩や広域的な副詞的修飾で東京のことがそう云えれば、それは無意識の欲働エネルギーの美的な表現だっといって差し支えナイ。それは作用素によって正常にoutputされた例だろう。
45・こと鬱病、鬱疾患においては、その欲働エネルギーの表現が正統(正常)に行われない。欲働のエネルギーは意識的にではなく、無意識のまま「云いマチガイ」される。そうしてその「云いマチガイ」は発語だけではなく、身体的作動としても行われる。それは〈痛感〉であり、〈呼吸苦悶〉であり、そういった内部に向けての〈だるさ・易労感〉という具体性(病態)として表出する。これが「ほんらい表出されるべきでナイ〈疎外〉された表現」だが、何れにせよ「表現=疎外」という定式にチガイはナイ。
46・では、何故、ナニがそういった「表現=疎外」が、意識的に表現されず(無意識のままの疎外された)カタチで表出するのか。
47・量子力学においては作用素(function)-入力されたものを出力に変換する機関、装置、計算式、法則、et cetera-の出力が必ず変換されて出力するとは限らない。入力したものと作用素が同じになる場合がある。それを「固有状態」(そのもの特有の状態)と称する。たとえば、波動関数(シュレーディンガー方程式)や量子それ自体などの場合がそうだ。
48・作用素が作用して、原因→作用素→結果というカタチになるのはニュートン力学の場合(順序)だけで、量子力学においてはこの順序は当てはまらない。
49・「固有状態」とは、先述したように、固有つまり特殊、他にはナイそれ自体の「状態」である。
50・「状態」とはそれが「モノ・物質」ではナイことを意味する。「状態」にも変容する第四物質、プラズマにあっても作用素においては変換される「物質」である。
51・「固有状態」は、入力と出力が同じであることからその「本質」に関係すると見做される。
52・作用素(function)に入力した〈モノ〉がそのまま「固有状態」として出力された場合、それは、作用は起こらず「本質」だけが「固有状態」として残されるということである。
53・「無意識」を作用素に入力して、それが「無意識」のまま出力されるとする。それは〈無意識の本質〉だけを担っている。つまり「無意識」は/作用素「超自我」/によってコントロールされながら、「固有状態」の〈本質〉だけを残したまま出力されるという理屈になる。
54・と、このような(いきなり量子力学への)飛躍、跳躍は許されるべきだろうか。
55・などと、カッコつけて留意しつつも、いま少しこの〈オイシソウ〉な発想(inspiration)を追っかけることにしてみる。

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