Sophism sonnet・69,11-13
戦争、その前に・8
「核戦争」と「ハイパー・ハイブリッド戦争」。
ロジェ・カイヨワの『戦争論』の「結び」はひとことでいうと〈暗い〉。
/憎悪に満ちた絶対的な闘争の時代の到来/(第二部・第七章)とあって、/大量殺戮が行われるようになった時、この国民戦争のなかで、すべての戦闘員は自律的に行動し得ぬものとなった。(略)極端にいえば、もはや戦闘は行われなくなってしまったのだ。人びとは、生産し、運搬し、破壊するに過ぎない。/(結び)。
/ここにおいて無防備な大衆は、遠くから発射された強力ナロケットにより全滅させられるだけである。/(同)。
「核戦争」に対する予想以外にも、ハイブリッド戦争(カイヨワはその一部である事象を「大部分計算機によって行われる」と記したが)に対する危惧もある。いわゆる「冷戦」が終了し、一発で英国全部を壊滅させるような大量殺戮兵器と、その逆にアメリカが本土を大規模なテロ攻撃に晒されてからの戦争は、国家×国家の戦争ではなく、「テロ戦争」という目に見えにくい戦争がつづくだろうと予想され、それはアフガンをはじめとして、さまざまな地球のあちこちで、いろいろ生じてきたが、この「テロ戦争」というよくワカラナイ目にみえにくい戦争は、ロシアのウクライナ侵攻軍事作戦(戦争なんだけど)という、世界中の目に見え過ぎる戦争の登場で、文字通り世界が引っ繰り返ったが、これは、このブログでも前述したように、プーチン-イデア(プラトン)と、NATO-アリストテレスの第三次大戦の始まりに他ならない大きなカタチで露出した戦争だ。「最終兵器」と名付けられた「核」は凍結していたのではく、身を隠していたに過ぎない。「核戦争」が「核抑止」ではなく、いきなり「核脅し」として「作用」されるというアルゴリズムの変換が起きたのだ。
プーチン-イデアのNATO-アリストテレスへの警戒・驚異・恐怖心は、敵手を「ネオ・ナチ」と呼称する他、侵攻の理由付けがなかった。第二次大戦のレニングラードのように、それと相似的に、ロシアは包囲されるという妄信は、たしかに狂人のものではなく、エライ専門家の云うとおりプーチンは正気であろう。しかし狂人というものが副詞的に用いられるとしても、それらは独自の合理な思考の持ち主であることなど、夢野久作の『ドグラ・マグラ』で、もはや白日のもとに晒されていることは知る人ぞ知る常識でもある。
ロ×ウ戦争が(私にとって)何か奇妙な不安をもたらせるのは、その戦略と戦闘自体が時空的に交錯しているからだとおもわれる。具体的にいえば、使用されている兵器は最新式の初めて名を聞き効力を知るものなのに、その戦場と戦死した兵士たちや無残に殺された非戦闘員の市民たちは映画の1シーンのような第二次大戦のままだからだ。
さらに、戦争は「ハイブリッド戦争」に変容し、電子戦、サーバー戦、情報戦が主流になって登場した。実戦の現場はさながら、欧米の兵器の実戦実験場と化した。もはや「核」すら「最終兵器」なのかどうかアヤシイものだ。
此度のフィンランド・スウェーデン両国のNATO加盟申請は、ロシアの驚異からの防衛というより、第三次大戦への同国の姿勢であることは、フィンランドのマリン首相の自国での事前の準備、ことの運びを観るにつけ確かなことで、トルコの反対など想定のうちといった感じがする。トルコの横やりも表向きの取ってつけた事情に過ぎず、何れにせよ加盟申請時点で即時敵と見做されることは政治上当然で、両国が守れぬNATOは現在の「死に体」の国連と同じと存在を舐めきられてしまう。一般人のこのニュースに対するコメンテートも、トルコの件については「お見通しだよ」といったふうで、大衆という存在はまったくのところ莫迦ではナイ。
ほんとうにバカなのは日本の政治家連中で、与野党を含めて「木を見て森を見ず」と迷妄しっぱなし。なんでここで憲法改定の論議を持ち出すのか、ドサクサの狡猾にも程がある。「敵基地攻撃」を「反撃」と呼び方を変じて満足げに頷いている様子などは、こいつらほんまにオカシイのとちゃうかといいたくなる。要するに、問題は国防費、防衛費の予算だけで「専守防衛」は堅持するのがアタリマエではナイか。日本国憲法を軽視するんじゃネエぞ。
すでに、第三次大戦は始まっている。それをアメリカだけが儲けているやら、インドは経済優先だ、ロシアは悪者でウクライナは頑張っているやらで誤魔化しつつ、此度の飛び回り岸田総理あちこち外交が殆ど成果など無かったことを隠蔽しているのだから、バイデン来日において岸田が「もう、何でもしまっさ。云うとくんなはれ」で幕を降ろしてもらっては、こちとらは焦燥を掻きむしられるだけだ。
とりあえず、了。
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