無学渡世・第二幕の4
鬱病(うつ病ともいうが)の治療法はある。治療して治る鬱病は無い。治療できるうつ病もあれば出来ない鬱病もある。鬱病(うつ病)とはそんなヤヤコシイ病気、疾病、疾患だというふうな捉えられ方をしている。なんでやのん。
此度、また鬱病について書こうなんて気になった一因は、「コロナうつ」というコトバを目にしたからだが、これはCOVID-19のウイルスでうつ病にあるというものではナイ。てっとりばやく結論を先にいってしまえば「不要不急」の時間というものが、このニュートン力学世界においてはたいへん「必要」なものだったということに人類が気付いた(そんなこととっくに知っているヒトもいたけれど)ということで、この詳細はミヒャエル・エンデの『モモ』に書かれてある。
ちょうど、いまの「緊急事態」というのは『モモ』における「不要な時間」を消去させていって、必要なことだけをスル世界にしましょう、という、あの「時間どろぼう団」の暗躍する事態なんだなあ。そこでうつ病が増えた。この答えは半分しかいい得ていない。
うつ病という病気(疾患・疾病)は〈こころの病気〉だ。けれども、けして精神疾患ではナイ。私なんかはふだんはうつ病に対して、常識的に精神疾患というコトバを使うけれど、ほんとうはそうではナイ。精神科医の中にも同じような情況に身を置いている者も在るとおもわれる。
では、「精神疾患」と〈こころの病気〉とでは何がチガウんだろう。
簡単に雰囲気だけでいってしまえば、「精神疾患」には倫理的な負い目、/疵/のにおいがする。何か倫理的な疵が視覚化される。でも〈こころの病気〉であるうつ病はそうではナイ。よく「傷ついた心」とかいうけれど、それはまったく視覚化されず、倫理的な負債のために気分を害しているだけなんじゃないかナと、私は「私、傷ついてしまったワ」、どうしてくれるのよと、責めてくるヒトにはいつも「それは怒っている、気分を害しているの、と、どうチガウのですか」と訊ねる。そうすると「そんな責められると、よけい傷ついちゃう」といわれるだけだけどね。そのヒトは腹が立っているだけで、それは視覚化されてよくワカルのだけど、けして〈こころ〉が疵ついているのじゃナイ。そんなものは視覚化不能だ。疵ついたというひとは矛先に向けて「あなたは倫理的に私に対して負債を持ったのよ」といっているのだ。この「倫理的負債」と「精神疾患」は因果関係の何処かでヒモ付きだとおもう。〈こころの病気〉に倫理的なナニかが侵入した場合、それは「精神疾患」になる。
では〈こころの病気〉とは、ナニか。これは、/ワカッテイナイ/といってしまったほうがスッキリする。〈こころの病気〉とは、ナニか。いま私に在る〈こころ〉は自分のものではナイところの〈ココロ〉だ、ということしか自分にはワカラナイ。
うつ病には、倫理のヒモは付いていない。うつ病(鬱疾患)と「倫理的負債」は何の関係もナイ。〈うつ〉な〈こころ〉は「倫理」なんて、これっぽっちも感じていやしない。
だから、またまた簡単にいってしまえば、「倫理的負債」さへ消去させることが出来ればうつ病が精神疾患になることはナイ。
COVID-19、コロナで陽性といわれて、「すいません」と泣いて謝ったりするひとは、〈こころ〉に負債を持ち込んだりひるひとだから、うつ病自殺なんてことになって、と、先がみえている。「コロナうつ」というのはそういう類の疾患なのだ。しかし、それはうつ病ではなく精神疾患だ。そこで向精神薬治療が始まる。けして本質のうつ病が治療されているのではナイ。
養生訓・「こころに倫理的負債を持ち込んではいけません」
倫理的負債を持ち込むと、うつ病治療は精神疾患治療に移行する。つまり、ということは、うつ病(鬱病)は「精神疾患」以前のfunction(作用素)ということになる。
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