無学渡世・第二幕の5
作用素というコトバ(あるいは概念)に頭がこんがらがる読者もありそうなので、ここは、もう少し慎重にというか解りやすく書き直す。作用素は量子力学では頻繁に登場するが、数学のコトバにしてみると、〈function〉になる。functionというコトバは、演劇(戯曲)の構造を解説するのに、かつて存在した「想流私塾」では戯曲に於ける「関数の構造」として扱っていた。簡単にいえばy=f(x)という関数においてのyを導き出す作用素、それがf 、functionだ。(x)を入力してfunctionすると、yが出力される。戯曲の場合のfunctionは、入力(x)がsamplingならば、yはremix、mixingとしてfunctionされた出力の意味になる。作用素とは、なんか入れた(どうにかした)ら、こんなん出ました、の、作用を持つ(行う)システム(からくり)という、箱、内出の小槌だ。
しかし、鬱病(うつ病)、・・・今後は「鬱疾患」(うつ病を疾病とする患者)という意味もふくめて語彙を「鬱疾患」と統一する。・・・鬱疾患のfunction(作用素・・この場合は倫理的負債)として出力されるのが精神疾患だとして、では、ナニかを入力して出力されるものが鬱疾患であるもの、とは、なんだろうか。ナニを作用素(function)に入力すれば鬱疾患というふうに出力されるのか。たとえば、鬱疾患を作用素に入力しても鬱疾患としか出力しない。(何か治療法を作用素に試みて入力するときを例えていっているのだが、ほぼ現状の医療は同義反復、自同律にしかならない)。
こういうことは、量子力学では、次のように述べられている。
/入力に対して規則的な変換をして出力するもの(作用素)の結果が作用する前と同じものであるとき、この入出力のことを固有状態といいます/
有名なものでは、シュレディンガーの波動方程式(波動関数)は、この固有状態を持つ。
鬱疾患はその論理でいってみれば、「固有状態」といえる。ここにこの症状、疾病の特異性がある。しかし、また、固有状態であるからには、それは「状態」として捉え直すことが出来るという思考の可能性がある。鬱疾患というのは、可能性から踏み入れば、「状態」なのだ。とすれば、この「状態」を探っていけば鬱疾患に近づくこともまた、可能におもえる。
「状態」には、固体、液体、気体などがある。そうしてなんといっても、昨今登場してきた「プラズマ」がある。「プラズマ」の「状態」とはどんな状態をいうのだろう。たとえば「雷」のとき姿を現す「稲妻」は、フランクリンが電気といっちゃったから、たしかに電気なのだが、電気としての状態は「プラズマ」だ。あの一瞬のピカッは、固体でも液体でも気体でもなく、電気を帯びたプラズマだ。
そこで、大胆にも/鬱疾患というココロの状態は「プラズマ」だ/といいきってみる。ココロの状態が精神病疾患で包括し得る脳内物質の変調ではなく、あたかも「砂」のような状態、プラズマ状態なのだ。
そうすると、私たちは鬱疾患を精神病疾患の脳内物質変調から鮮明に分断することが出来る。
では、鬱疾患はどのような「状態」で存在するのだろう。もちろん「砂」もプラズマ状態ではあるが、脳に砂が詰まっているという副詞的な表現は認められるとしても、まさかほんとに砂ではあるまい。
これを説明するのにも、量子力学は便利なので、そこいらあたりからトレジャーに迫ってみる。
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