珍論愚談 17& 無学渡世・七
クマゴロ「&、なんてえのをつけるのは、ニイちゃんのことをあっしが話すってことで、ニイちゃんにしてみりゃ、ひとにはいえない秘密のおハナシ。秘密をこんな公のところに書いていいのかって、そりゃ、オリ・パラのあの森さんなんか老害かなんかでテレビでヤってんだから、max180のここくらい、いいんじゃナイノってことで。
栗塚旭さんと、土田早苗さんのコンビが活躍の『風』って時代劇というより時代活劇、なんつうか、明るい眠狂四郎ふうのドラマ、ルパンものみたいなのね、こいつをニイちゃん、boxで買ってきて、なんだか高校生の頃に観ていたらしくって、正味45分の一話完結だから連続ドラマなんだけどイライラしない。この何話目だかに、贋金づくりのツナギ、悪女役で猫が、ああ、猫ってのは三味線弾きのことなんけどね、そのうら若き師匠が出てくる。こいつにニイちゃんの目が釘付け糠漬けになって、「オレ、この女優さんなんだかずっと観たことあるんだけど、何かの連続ドラマでうーん」と頭抱えて、これが尋常じゃナイ。「いやあ、ただ記憶しているというふうじゃなくて、ナンカ特別な入れ込み、心情があったようなうーん」で、その日はいろいろネットをほじくったけど、ワカラナイ。ところがよくあることなんだけど、ひとってのは、急にフワッとおもいだすんだよなあ。「あっ、待てよ」と、ユーチューブ入って、引っ張ったのが『風雲黒潮丸』。これニイちゃん八つ、小学生にして二年生か三年生の頃のテレビ時代劇。ニイちゃん、エッセーで『風聞黒白〇』なんて書いているのに、つまりそれほどファンだったのに、おもいだすのが遅すぎらぁ。こいつは、全編五十六話もあるのに、フィルムは日本お得意の事情で一コマのカケラも遺っていない。フイルムグラフィーだって、まったく無い。しかし、まあ、誰だかはワカッタ。青柳三枝子って、『風雲・・・』では少年剣士だけどほんとは少女で、小夜姫(少年剣士のときは小夜丸といってた)、ニイちゃんが視聴していた当時は十五歳あたり(よって現在は七十五歳)。月刊誌にドラマの宣伝ニュース写真が二枚。「ああ、たしかにこのお嬢さんだ」って、いまはうんと年上なんだけど、時間非在論者のニイちゃんにはそんなことはどうでもイイ。「哀しいねえ、ニュートン力学世界は」。
そういや、ニイちゃんの演劇、やたら女性が少年役で出てくるんたけど、原点はここにあったようで、そういうことにもニイちゃん、やっと気付いたご様子。「もうひとり、ヒロインがいて、主役とそのヒロインは許嫁だから、何れは主役は小夜姫じゃなくてそっちと、だけど、オレは小夜姫のファンというより恋慕でいっぱいだったから、どうか主役と一緒になれますようにって、ズッとおもっていて、それで願いが叶って、黒潮丸(主役)と小夜姫は結ばれるんだ。なんかもう、シラノみたいなの、オレの存在って」
ニイちゃんのおもいで結ばれたワケじゃナイんだけど、ねえ。で、ニイちゃん、最近はビョーキ。「他のドラマ出演なんてのはぜんぜん世界がチガウの。オレは小夜姫がいいの。青柳さんなんか知らないよ」なんてこといって、ユーチューブに日参しては、主題歌歌って雑誌写真観て。おいらもう、なんか、ニイちゃんのほうが哀れでセツナクて、どうおもうご隠居さんよう。
ご隠居「ニイちゃん、八つだったんでござんしょ。ませたガキというか早熟というか、愛情がメビウスの環だねえ。長生きしないほうがよろしかろう。しんどいだけですよ。たまにいるんだよクマゴロ、こういうニイちゃんみたいな地球外生命体てのが、現実より虚構幻想の世界で昼寝してるみたいのがねえ。まあ、そっとしときな。
クマゴロ「へい。触らぬチンポコに勃ったりはナシ。
遠くでニイちゃんの歌声。
ηルソン アンナン カンボジアァ はっるかにとおくエスパニィア~