港町memory 152
「先住民を殺戮し、その土地と住処を奪い尽くし、飢えた狼のような侵略と蹂躙とを、いうに事欠いてフロンティア精神と吠えたのがアメリカ合衆国やで。フロンティアやて、あんた、あれが、アメリカの開拓やで。いまもむかしも、いうてみたら、ペルーが黒船で来よった世界から、アメリカ合衆国はおんなじやねん。そやさけ、トランプでええねん。民主主義みたいなありもせんもんは死んだ。けんども、アメリカン・ドリームはオバマの時代からまだ続いとんねん」
と、突然語りだしたおばさんは光輝く菩薩にみえた。
もちろん、ニイちゃんの垣間見た幻だ語りだしたなのだが。
「原爆という血も涙もない兵器で、日本人を虐殺し、焼夷弾という日本の家屋を研究し尽くした火炎地獄攻撃で町もひとも焼きはらわれ、死屍累々の黒こげの死体の上にわしらは生きとんねんで。それがアメリカやし、それがいま生きているわしらや。そやから、アメリカはトランプでちょうどや」
「でも、バイデンになりそうな気配ですよ」
「そやさかいにな、ニイちゃん、どっちもどっち、目くそと鼻くその叩き合いやいうてんねん。バッタもんとパチもんの争いや。トランプは政治の素人や、そやさけ、ウソもハッタリもすぐばれる。いうてみたら、アホは恐いもん知らずや。バイデンは政治のプロや、ばれへんようにヤッっとるだけや。まだ民主主義みたいなもんがあるとおもてる半ボケの爺や。まあ、ヤッとることはどっちもおんなじやというこっちゃ。不正のナイ政治みたいなもんは、日本なら卑弥呼の時代(中華ではもっと古く)からの伝統みたいなもんや。と、リチャード・ウーはいうてるな。彼氏が書いとるcomic原作はみなおんなじThemaやな」
「『卑弥呼』も『ダイマジン』もそういえばそうですね」
「バイデンが勝ったら、まあ、選挙には勝つやろけど、さあ、後がたいへんやで。バイデンは年齢からみて、大統領は一期だけやろ。そうすると、副大統領がどんだけやるかやな。四年後はおそらく、副大統領のカマラ・ハリスとオバマ寄りのマサチューセッツ州選出上院議員エリザベス・ウォーレンの候補者争いになるはずや。共和党か、もっぺんトランプ出しゃええねん。リターンマッチや。そんなんはエエ。あんな、これはこの四年のあいだに、米国が中華をとるか台湾をとるかというごっつい問題がからんでるんやで。これは日本にとって最重要課題や」
急に政治評論家になったおばさんに、ニイちゃんどう対処していいものか。
ともかく、選挙結果が出てからのおばさん菩薩の動向がオモシロソウではある。
~オレは台湾がええなあ~と、ニイちゃんの独り言は、院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操をしているおばさんには聞こえなかった。
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