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2020年10月

2020年10月19日 (月)

港町memory 145

まず、とある「明るいんっんっ」ニュースを紹介しておこう。ニイちゃんとおばさんが院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操をしているうちに。
/新型コロナウイルスの感染爆発が起きたブラジルのマナウス地域で「集団免疫」ができ、流行が下火になったとする研究論文が発表された。/のだそうだ。9月に英医学誌ランセットに載った米国の透析患者の血液を解析した論文では、感染歴を示す抗体保有率は高い地域で27.6%、平均で9.3%だった。スウェーデン政府の調査ではストックホルムが12%だった。日本の調査では東京や大阪でも1%未満だった。そこへきて、マナウスでは「集団免疫」だ。つまり、ブラジルのマナウス地域では、/新型コロナでは基本再生産数が2.5だとすると、集団免疫閾(しきい)値は(1-1/2.5)x100 = 60%となり、6割の人が免疫を保持することが流行を止めるために必要であることが示唆されます。(宮坂昌之老師曰く)/ということが計算上起こったというのだ。/致死率や重症化率を下げる新型コロナのワクチンが確立しないままの集団免疫の獲得戦略は、大きな犠牲を払う恐れがある。/のだが、それが、現実のものになったということになる。/通常の風邪の原因となるコロナウイルスも再感染するが「感染のたびに抗体が増えて免疫が強化される。感染を重ねると症状が軽くなるか無症状になる」(国立感染症研究所の松山州徳室長)。/という御意見は、あくまで「通常の」という理(断り)がついている。事実、COVID-19にいたっては、再感染者の容態は一次感染のときよりも悪いのだ。このCOVID-19、ちょっと狡猾な上に戦略が巧妙だ。先に記した宮坂昌之老師の計算法からいけば、マナウスでは、六割を超える人々がすでに感染していることになる。そうしてめでたく「集団免疫」獲得なのだが、ここで、今一度、宮坂昌之老師のコトバをおもいだしてみよう。/今まで集団免疫は、獲得免疫の、しかも抗体というパラメーターだけを見て判断していましたが、私は、それは間違っているのではないかと思っています。/(パラメータとは特定の事象や対象や状況などを決定したり分類したりする助けとなる任意の特徴量を言う。つまり、パラメータは、状態や振る舞いの評価、条件の特定などに際して有用あるいは重大な役割を果たす要素となるものである)。
要するに単純に六割の人々の感染という危険な経過(パラメーター)を経て、マナウスでは「集団免疫」を得たというのは、やや早計であるし、ここでも計測の精度が問題になるはずだ。よって、単純に「明るいんっんっ」ニュース、と諸手を挙げるワケにはいかないだろう。
産学共同のワクチン、治療薬は足踏み状態だということは前述したとおりだしなあ。
いましばらくは、私たちはニイちゃんやおばさんのように院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操をしつつ、このかなり手強いウイルスへの「反撃」をかんがえなければならないだろう。
「んで、でけんのかいな、反撃とかいうの。もう、わしはケツ割るで」
「とにかく恐いのは、〈油断〉と「連鎖被害」です。オレたちゃ、人類絶滅の現在(いま)を生きているんですから」
 と、また、ええカッコいうて、ニイちゃんは右膝関節炎、左膝半月帯断裂、右肘腱鞘炎、頸椎損傷の痛みに耐えて院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操をなんでか、やってるのであった。痛いんやったらヤメえや。

2020年10月18日 (日)

港町memory 144

港町memory 144

きたかチョーさん、待ってたワケではナイけれど。
ニイちゃんは屈託した顔で院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操をしているおばさんをみつめていた。
ニイちゃんの脳裏にあったのはCOVID-19の「連鎖被害」のことだ。そのなかでも、もっと忌避すべき「連鎖差別」というものだ。
/「この顔に、ピンと来たらコロナ注意! 今治で初コロナ感染」新型コロナウイルスの感染者を誹謗中傷するチラシをバラまいたとして、愛媛県今治市の古物買い取り会社代表の野間翔太(26)と自動車整備士の岡本賢矢(26)の両容疑者が13日、名誉毀損の疑いで県警今治署に逮捕された。/(アットニフティニュース)
こういう手合いには、COVID-19を肺いっぱい吸入させればイイのだ。
/実は公表の前日、感染者の陽性が判明した時点で、一部で男性の名前が特定され、情報が爆発的に広がっていた。「〇〇が飲みに行きました」と感染者が出入りしていたとされる飲食店約10軒がリストアップされ、LINEで拡散されていた(同)/
SNSに善悪などはナイ。SNSは拳銃ではナイといっているのと同じで、人を殺すためのアイテムではナイということだが、ヒトも人心も殺すことが出来る。
/現地で飲食店を営む店主がこう振り返る。「LINEが回ってきた途端、街から人の姿が消えました。リストに載っていたスナックはちょうど周年記念で、店の前に飾ってあった花とスタンドが何者かに倒された。嫌がらせや『感染者がいるのか』といった電話が100件以上かかってきたそうです。この辺りの売り上げは、軒並みダウンしました」・・・別の飲食店の経営者もこう嘆く。「被害者の方はうちのお客さんではなかったのに、リストに載っていたため、直後から予約のキャンセルが相次ぎました。何の連絡もなく来なかったお客さんや無言電話もありました。狭い街ですから、すぐにSNSで噂が広まりました」/
これらは、「連鎖被害」の、直接被害からの深化、あるいは拡張していく〈関係の確率性〉の誤解(関係のナイものをさも関係があるかのように結びつける)のprocessを目の当たりに描いている。/『感染者がいるのか』といった電話が100件/は、やがて、「感染者と接触したものはいるのか」「感染者の友人はっ」「勤め先は」となり、「結婚はゆるせません。あの家の親戚には感染者が出たんですよ」と、かつての被差別部落民差別と似たようなchartとなる。私の祖母は京都の被差別部落出身者だったが、なにかの理由で日本から脱出しなければならないまでになった。(積極的に出たのかも知れないが)戦前のことゆえ、それが合法的な移民だったのかどうか、ワカラナイのだが、かのマレーの虎ハリマオと一緒に馬賊をやっていたらしく、ハリマオ捕縛投獄のあたりで帰国している。
と、そこまでニイちゃんの脳裏がハナシを広げていたかは別にして、
「うっとこは親戚縁者ちゅうのが多いねん、ほんなもん、誰かは感染しとるわ。ついでやさかいにラジオ体操第二までいっとこけ、と」
おばさんは、カラダ全体を使うわけではないので、手足を蛸みたいに動かして盆踊りしているかのようにみえる。おばさんくらいの年代のものは、ラジオ体操とは縁が深いのだ。そもそもラジオ体操は、帝国海軍において基礎体力向上のために考案された。それが、庶民に降りてきた。従ってキチンとやると、けっこうキツイが、速く歩いたりジョギングだったり、ジムだったり、岩盤浴だったり、ヨガだったり、スクワットだったり、なんかよりはほんとうは安全で効果があるのだ。「ゆっくり大きく、正しく」身体を動かすことが基本だからだ。そうして、この体操はそれがそのとおりに行われているかどうかが一目でワカル。この体操は、正しくヤルと、/動きが美しい/のだ。
おばさんの泥鰌すくい程度ではどうにもならないが、気休めもまたmentalにはタイセツだろう。
ニイちゃんはおもう。
「COVID-19に追われている。それが現在(いま)なら、ジョン・ウィックのように、追ってくる敵に対して出来るのは、同等の〈反撃〉、だな」
ニイちゃんは、スグに格好イイ妄想に陥るからナ。ジョン・ウィックが院外処方箋薬局の入り口付近でウロウロするかいな、ほんまに。
「攻撃は最大の防御なり、というのは、あれは囲碁の格言に過ぎない。そんなことを知っているのは、囲碁ファンの中でも少ない。まるで『孫子』に出てくるような格言だからな。けれど、『孫子』には、それと逆のことなら述べられている。なんだったかな、孫子の兵法には、「攻撃は・・」なんてことはいわれていない。その代わり、守備、守ることのタイセツさはあったとおもう。COVID-19から、心身を守る。防衛戦だ」
ニイちゃんは院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操を始めた。ただし、おばさんよりは正確な。せめてブロガーの祖母くらいには/恐れず侮らず/の防御にはなるかもしれない・・・かな。

2020年10月14日 (水)

港町memory 143

ある意味では(というのも、免疫学者の予想ではそうなるのでは、という見識が多かった)予想通りの展開になってきた。
・米製薬大手イーライ・リリーが開発中の新型コロナウイルス抗体薬について、臨床試験(治験)を一時中断した。
・12日にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が新型コロナワクチンの最終段階の治験を一時中断したと発表した。
・9月上旬にも、英製薬大手アストラゼネカが新型コロナワクチンの治験を中断。
・米ネバダ大の研究チームが、米西部ネバダ州の25歳男性が新型コロナウイルスに再感染したと発表した。研究チームが1回目と2回目の陽性時のウイルスを比較したところ、異なる系統の遺伝子を持つウイルスに感染していた。
・再感染が生じたとされる国・地域は世界で5例目という。人口の大部分が感染して免疫を得る「集団免疫」戦略に疑問符がついた格好だ。つまり、WHOの「人口の六割感染で、集団免疫」は、ここで吹っ飛んだ。(この理論のマチガイは、流行の第一波でとっくに否定されている)。

院外処方箋薬局の入り口付近。
「つまり、ニイちゃん、いま、サイコーにノーテンキなのは、アメリカ大統領のトランプやな。なんや、自分、治ったさけ、自分が治ったクスリをみんなに分けたる(もちろん、一票いれたらやろけどナ)いうとるで」
なるほど、おばさんのいうとおりかも知れないな、とニイちゃんは沈む夕陽に照らされていた。昇る夕陽など無いのに。
「ほんでなあ、ニイちゃん、どうなんねん。もうオワリか」
「えっ、ああ、COVID-19ですか。まだ始まったばかりですから、要するに功を焦った結果じゃないですかね。下手な鉄砲も数撃てば当たる、はずが、ことごとく外れたけれど、ここは慎重にというところで留まったというのは医学としてはイイことだとおもいますよ」
「トランプはどないなんやろな。ほんまに治ったんかいな」
「あんなもんは、政治の領域ですから、医学とはなんの関係もナイとおもいます。せいぜい、トランプの血清治療とか、やったらいいんです。前回の大統領選挙のとき、敗れた候補者のヒラリー・クリントン女史は、オバマさんに、こういったらしいです。/私は敗れたが、中国に負けたワケではナイ。アメリカには「神」が在る。中国にあるのは「権力」と「経済」だけだ。神の無い国がアメリカに勝てるワケはナイでしょう/。とは、いうものの、アメリカの「神」が、まあ、トランプを観ていたら、どんなものかよくワカルわけですから、中国は半世紀先には米国と拮抗くらいにまでは勢力を持つでしょう。それから、そのうちトランプは「私は神だ」といいだすのに決まっています」
「ほなら、今度の選挙、トランプ勝つんか」
「勝つというより負けない手だては幾つも使うでしょう」
「なんや、それ」
「無効票で、裁判とかね。そいで、私は神だから、米国大統領は永遠に私だとか、もう、あのひと、キの字入ってますから」
「そんな悠長なことしててええんかいな」
「ひょっとすると、南北戦争以来の内戦になるかも知れませんね。アメリカの憲法はそれを認めていますから」
「そこで中華ラーメンの高笑いか」
「中華は、もう地球上の戦略は全て立て終わったので、次は月面狙いに移行してるでしょう」
「えっ、月、行くのギョーザ」
「資源、豊富ですから。まず、tenantを月面に打ち込んで、ここは中華のもんやっ、とかいうんじゃナイかな。要するに、いまの暴力団の縄張り争いと同じ方法。これを『ハーロック』の、とはいいたくない。あの漫画家の作品の中では唯一好きな作品ですから」
「まあ、わしらは、生きていてもアト3~5年が精一杯や。これからの若いヒトは苦労やなあ」
「ともかく民主主義は10年以内にオワリますね。敗戦です。これからは独裁が有利だと、菅総理も気づいているでしょうから、日本もキビシクなるでしょうね。ともかく権力の名にかけてですね、菅総理が在任中にヤルことは、憲法改定だとおもいます。日本は法治国家になりますね」
「法治国家ならええやんけ」
「法が権力を持つんですよ。法に治められるんですぜ。その傾向は昨今、あからさまになってきてますからね」
「あのな、わしな、ちょっと、院外処方箋薬局行ってくるワ」
 いうとおばさんは、院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操を始めた。ニイちゃんはこうおもっていた。/首都直下、富士山噴火、南海トラフ地震、何か起こらないことには、どうにもならんな/

2020年10月10日 (土)

港町memory 142

「私は非時間論者ですから、〈終り〉とか〈始まり〉はナイんです」
「なんや、どこに酒壜隠し持っとんねん」
「酔ってなんかいませんよ」
「ほんで、ヒジキがなんやて」
「COVID-19で世界の新しい時代が始まったとか、世界が終わるとか、とかは了解しないんです」
「えんえーっ、なんやようワカランなもう」
「ワカルようにいうと、良いワクチン、これは抗体寿命がせめては半年は在るものです。あるいはタミフル程度の治療薬が出来るまでには、アト2年はかかるだろうとかんがえてます。2年なんていうと、時間じゃないかといわれそうですが、それはニュートン力学的表現ではしょうがナイことです。具体的なことをいえば、マトモな演劇ができるようになるのは2023年からでしょう。アト2年は我慢、辛抱、忍耐がつづくとおもいます。それからシノギも。劇団にせよ、unitにせよ、produceにせよ、劇場側にせよ、それは覚悟というより諦念しなければならないでしょう。
マスコミ報道は、演劇集団の集団感染にすぐ飛びつきます。底の浅い、裏の薄い調査、見識、表の感覚だけでの、マス・イメージです。こういうものは切り貼りですぐに出来上がります。
何が関係の妄想性で紐付きになるのか、見当もつかない。しかし、カンブリア紀の大絶滅のようなことが起こらないように、ヒトは死ぬのです。血と遺伝子を固定化しない。定型させない。もし、ヒトが死ななければ、自然免疫機能は破壊され、やがて、同種のものが一斉に絶滅する危機がやってくる。そうならぬようにヒトは死ぬように出来ている。/ヒトの死はけして無駄ではナイ/のです。これが子孫を残すというほんとうの意味です。子孫を残すということは、ほんとうは希望を残すということでなければなりません。ヒトの死は希望なのです。
いっときの悲しみや苦しみに欺かれててはいけない。騙されてはいけない。攪乱されてはいけない。錯覚してはいけない。
ニュートン力学的表現だけが、ヒトの姿ではないのです。私たちはこの宇宙の一部であり、宇宙と関係するものであり、そうして宇宙全体と同じものなのです。ありきたりなことをいってしまいますが、私は希望の価値を信じます」
いうとニイちゃんは、その場に崩れた。
おばさんは慌てて院外処方箋薬局の入り口に走った。走ってどうなるねん。

2020年10月 8日 (木)

港町memory 141

「缶ビール片手に院外処方箋薬局の入り口付近でクスリ待ちしてるひとなんて、おばさんだけですよ」
「まあ、ええがな。もう秒読みやからなあ、処方薬は義理や。要するに、いまの内閣と一緒やな。ほんなもん、いっときの天下取りやさかいにな。デジタル庁を強化するたら、だいたい、そういうこというてることがもう時代遅れやちゅうのんが、ワカッテへんなあ。学術会議たらなんたら六人ほどアカンいうたらしいけど、学問の自由みたいなもんと関係あんのかいな。あんのやったら、そこんところを野党も攻めなアカンねんけど、野党は学問ナイのかアルのか、質疑も答弁も、なんの具体性もあらへん。そらな、与党がマトモに応えへんのはのっけの承知やろ。あのな、国民の、というか、わしなんか、そんなんが公務員やということ知らんかったワ。ほら、コムインやめさせられたら、食うていけへんからな。コムインで教授とか、ヨウワカランねんけど、そういう両刀というか、たしか、コムインて他に仕事持ったらアカンと聞いたんやけどな。まあ、なんでもかんでも銭ちゃうんか。菅総理は叩き上げやろ、ホイホイホイで塾で大学行って、シャボン玉ホリデーで教授になって、みたいなセンセの学問の自由みたいなもん、うちかて知らんワ。なんの研究してはんねん。いちいち「こういう学問してんねんけど、外されました」ていうたらええやんけ。ニイちゃん、あんたら芝居もんもよういわれたんとちゃうのか。/好きなことしてるんやからな、エエな。好きやからこそ出来るんやな/どやっ、いわれたやろ。あれはほめ言葉やナイくらい知ってるやろ。ひとが真面目に働いてんのに遊びくさっていわれてたんやで。ほやから、不要不急やねんで。この世の中、世間はな、/好きなことしてたら/アカンようになっとんねんで。さらにや、さらに/好きなことして/ほんで銭クレは、アカンねん。ほんなもん学問の自由たらと、なんの関係もナイねん。缶ビール片手のクスリ待ちとおんなじやねんで。あのな、いまの世界はいうてみたら「戦国時代」や。下克上ちゅうやっちゃ。なんど手柄とらな、何いうてもアカンわ。学問の自由を保証するのに銭クレみたいなもん、通るかいな。いまの総理大臣が、任命権があんねんやったら、任命したないんやったら、ヤメで、ええねん。いまの政治に都合の悪い学問みたいなもんしてもろたら困るに決まっとるやんけ。判事やったか、なんやったか、賭麻雀でやめさせられるんやで。麻雀と裁判とどこが関係あんねん。被疑者にリーチかけるんか。ニイちゃん、あんたもわしも、そう長いことこんな世間に付き合わんでもエエのだけが、不幸中の幸いやなあ。ニイちゃん、ほんで、うつ病て一日にニイちゃん、何回くらい自殺しとなんねん」
「おばさん、酔っぱらってようしゃべりましたね。うつ病でもどんな病気でも死んだら治りませんよ。生きていても治らんのですけど。治らないということで諦めるしかありませんね。私なんかは、そうね、自殺したくなるたびに、死んでも治らんぜ、と、そういいきかせますけど。まあ、せいぜい壊れきるまで使って、動かなくなったら、オワリでいいんじないでしょうか。演劇、不要不急、けっこうですね。世の中に不要不急のもの、そんなにナイですよ。ですから絶滅希種でいいんじゃナイですか。奇種でもイイですし」
おばさんが、少々自棄だったので、ニイちゃんもちょっとむくれた院外処方箋薬局の入り口付近だった。

2020年10月 1日 (木)

港町memory 140

港町memory 140

「おひさしぶりやんけ、ニイちゃんほいほいと」
おばさんはえらくご陽気に院外処方箋薬局の入り口付近に現れた。ニイちゃんは最近うつ病の症状がひどいので屈託している。
「どうしたんですか、ご機嫌ですね」
「なんやな、あれ、テレビで、ワクチン出来たいうとったんや。テレビ。COVID-19オワリやで」
「そうですか、ほんとなら嬉しいですね」
「ほんでな、ここの院外処方箋薬局にワクチン売ってへんかいなと、ノゾキに来たんや」
「ワクチンは治療薬じゃナイですよ」
「ほな、なんやねん。犀とカインとアベルとかいうのがそれか」
「サイトカインは免疫系を機能させる情報伝達物質の一種です。
「そうしたらあれけ、マックロファー爺、け」
「マクロファージはたしかにキラーT細胞のように侵入異物を殺しますが、白血球の一種ですね」
「ほんなら、ワクチンてなんやねん」
「〈獲得免疫〉を人工的につくったもんでしょ」
「獲得メン駅て、あれか、各停が停車する駅か」
「〈自然免疫〉もあるんです。どちらも身体の中で抗体・・・異物を抵抗殺傷する作用素、機能、このばあい「体」なので、抗体とは免疫によってつくりだされた身体のメカニズム機能と、簡単に覚えておけばイイとおもう・・・になるもんですけど」
「あっ、聞いたことがあるわ。集団免疫とかいうアレやろ。アレはユングのいう集団的無意識と関係あんのか、ニイちゃん」
おばさんは、いきなり賢くなる妄想性躁病だとかいってたなと、ニイちゃんはぼんやり記憶を辿った。
「ユングとは関係ナイですね。集団免疫というのは、うーんと、免疫学の宮坂昌之老師がいうには、/ウイルスに対するからだの防御というのは、獲得免疫だけが規定しているのではなくて、われわれの免疫は自然免疫と獲得免疫の2段構えになっている。自然免疫が強かったら獲得免疫が働かなくたってウイルスを撃退できる可能性がある。自然免疫だけでウイルスを撃退することもあるから、抗体の量や陽性率だけを見ていても集団免疫ができているかは判断できない可能性がある。今回はそういうことが起きているのかも/とおっしゃってますね」
「あら、ま、そんなんがあんのかいな」
「あっても、抗体の中には、善玉と悪玉と役なしの三つがあって、今度のCOVID-19にはこの三種類とも出来てしまうらしいです」
「つまり、要らんもんも出来る」
「というか、逆にキケンなものも出来るということですね」
「そやけど、人工ワクチンには、そんなんナイやろ。それは、COVID-19の獲得免疫各駅停車のハナシやろ」
「私は前々から不思議におもっていたんですが、クルーズ船みたいな密の濃いところで、たとえばWHOなんかがいうように人口の60%が感染しないと、獲得免疫は出来ない理論が、ぜんぜん通用していないことです。WHOの理屈は、いったように「集団の6割程度の人が免疫を保持することが流行を止めるために必要である」です。実際にそうなってないんです。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染した人は全体の2割程度でした。集団の6割も感染をするようなことは観察されていません。つまり、多くの人は感染が成立する前にウイルスを撃退したとのかも知れないんです。
いい方を変えると、この集団免疫の考え方では「われわれはこのウイルスに対して免疫を持たないので、無防備の状態で感染が広がると人口の60%ぐらいの人たちが感染する」になります。実際、イギリスのファーガソン教授もスウェーデンの疫学者アンデシュ・テグネル氏も、さらには厚生労働省クラスター対策班の北海道大学大学院、西浦博教授もこの数字を挙げていました(2020/05)。しかし、この仮定は違うのではないかと免疫学の宮坂昌之老師は述べています。私もそうおもいます。それで納得してます。なぜなら、このようなことは発生地とされている武漢市でも、大密室殺人事件ダイヤモンド・プリンセスでも起こってナイからです。これはスペインでもイタリアでも起きてナイんです。
さらに宮坂老師が述べてらっしゃることを、私の記憶で復唱すれば、
/新型コロナウイルスは抗体のつくり方が弱くて、タイミングも遅い。抗体だけ測っていて良いのか。抗体検査による陽性率は、誰が測定するのか、サンプルの保存の仕方にもよるが、PCR検査の陽性率から見ると、東京では10%を切っているようだ。あれほどPCR検査を実施しているドイツでも陽性率は6%ぐらい。100人で6人ぐらいだ。このことを考えると、おそらく東京でも感染者は100人に数人かそれ以下になる。つまりCOVID-19のウイルスが起こす免疫はあまり高くなく、持続も短いようなので、免疫学者の目から見る限り、集団の60%もが免疫を獲得するような状況は、余程良いワクチンが出てこない限り起こり得ない/」
「なんど、そないなええワクチン売ってないか、いてみてこ」
おばさんは、ニイちゃんのハナシを聴くや、陽気さも薄れ、ご機嫌でもなくなって、院外処方箋薬局の入り口付近でラジオ体操を始めた。ニイちゃんは、「一寸一休」の重複になったなあと、また、うつ病の容態を悪くして、その場にへたり込んだ。あのな、早いとこ、院外処方箋薬局に行って、クスリもらえちゅうねん。

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