一寸一休②
倫理と科学はときとして乖離することがある。(そのほうが多いのかな)。人倫は倫理の則だが、医学は科学の公理、定理だ(まだ法則までは発見出来ていない)。
虚空旅団「春はやて」は公演中止について、主催の高橋は何を「詫びた」のか、その倫理性については、主催者の筋道を求めるものではナイ。「ヤルヤラナイ」は主催者の権利だ。
感傷的にいえば、COVID-19との闘いに撤退を余儀なくされたということの重要さを噛みしめて膝をついたというしかナイ。勝敗は兵家の常(かちまけはへいかのつね)だ。それをこそ、闘っている証左という。大言壮語の後でケツを拭く間もない政治家より遥かに大事なことだ。
ただ私は、政治的、社会的、経済的、倫理的、さまざまに捉えられているCOVID-19について、医学的にお復習いをしておこうとおもう。虚空旅団が何を決としたのかは、深入りはしない。ただ、私はもう一度「医学」としてCOVID-19を見直してみたいのだ。とはいえ、私は医事労働者ではナイので、他人の褌を借りる。
以下は免疫学フロンティア研究センター招聘教授、宮坂昌之氏の、ヤフーニュース・インタビュー(5/16・土)から私が適当にひろって編集したものだ。要するに「集団免疫」についてもっぺん確認しておきたいのだ。「集団免疫」書き方を広義に変えれば「ワクチン」のことになる。先進医療国はワクチンの製造を違法ギリギリで競ってきた。ここで抗体寿命が、インフルエンザに遠く及ばないとすると、治療薬のナイいま人類は路頭に迷う。
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どうも、このウイルスは免疫を起こす力が非常に弱いし、起こっても遅い。抗体だけを見ていると、判断が非常につきにくい。
今まで集団免疫は、獲得免疫の、しかも抗体というパラメーターだけを見て判断していましたが、私は、それは間違っているのではないかと思っています。
ウイルスに対するからだの防御というのは、獲得免疫だけが規定しているのではなくて、われわれの免疫は自然免疫と獲得免疫の2段構えになっています。自然免疫が強かったら獲得免疫が働かなくたってウイルスを撃退できる可能性があります。自然免疫だけでウイルスを撃退することもあるから、抗体の量や陽性率だけを見ていても集団免疫ができているかは判断できない可能性があります。今回はそういうことが起きているのかもしれません。
問題は、集団免疫に対する考え方です。
/これは「特定の集団の何割が免疫を得たら感染流行が収まるか」を計算するものであって、もし免疫がなかったら何割死亡するのかということを示すものではありません/。
そこが間違って使われていると私は思います。
新型コロナでは基本再生産数(Ro)が2.5だとすると、集団免疫閾(しきい)値は(1-1/2.5)x100 = 60%となり、6割の人が免疫を保持することが流行を止めるために必要であることが示唆されます。ただし注意すべきなのは、この場合、一般的には「免疫」とは抗体ができることを指していて、「獲得免疫」のことであるというのが暗黙の了解となっています。
しかし、個体レベルではウイルスに対する防御は2段構えであって、自然免疫と獲得免疫がウイルス排除に関与します。
もし自然免疫がうまく働けば、少数のウイルス粒子が侵入してきても自然免疫だけでウイルスを排除できる可能性があります。つまり獲得免疫が働かなくてもウイルスは排除できる可能性があります。
実際、最近の研究結果から、自然免疫はさまざまな刺激によって訓練され、強化されることがわかっています。集団免疫のことを語る際には、獲得免疫のことだけではなくて、個人レベルで働く自然免疫と獲得免疫の両方を考慮に入れる必要があると思われます。
新型コロナウイルスの場合、上に述べたように「6割程度の人が免疫を保持することが流行を止めるために必要である」と信じられていますが、実際にそうなっているでしょうか?
例えばこれまで激しい流行があった中国湖北省武漢市でも、またクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも感染した人は全体の2割程度でした。集団の6割も感染をするようなことは観察されていないのです。
接触制限によってR値(基本再生産数)が1.2まで下がると、上記の公式で集団免疫閾値は20%以下(注:16.7%)となります。これが、実際に武漢市やダイヤモンド・プリンセスで起きていたことではないかと私は考えています。
つまり、一部の人たちは自然免疫と獲得免疫の両方を使って不顕性感染の形でウイルスを撃退したのかもしれませんが、かなりの人たちは自然免疫だけを使ってウイルスを撃退した可能性があるのかもしれないということです。
この集団免疫の考え方を援用して言われてきたのが「われわれはこのウイルスに対して免疫を持たないので、無防備の状態で感染が広がると集団の中の60%ぐらいの人たちが感染するであろう」ということです。
実際、イギリスのファーガソン教授もスウェーデンの疫学者アンデシュ・テグネル氏も、さらには厚生労働省クラスター対策班の北海道大学大学院、西浦博教授もこの数字を挙げていました。しかし、私はこの仮定は違うと思います。前述したように、このようなことは武漢市でもダイヤモンド・プリンセスでも起こってはいません。これはスペインでもイタリアでも起きていません。
特に/このウイルスが起こす免疫はあまり高くなく、持続も短いようなので/、免疫学者の目から見る限り、集団の60%もが免疫を獲得するような状況は、余程良いワクチンが出てこない限り起こり得ないでしょう。
集団免疫閾値はこの新型コロナウイルスの場合、60%は成立しない。たぶん良くて20%だと思います。2割だったら今後ワクチンができてくると確実にそこは到達できると思います。
/ナチュラルな状況で人が感染して治るという状況だと、おそらく毎年、このウイルスにお付き合いすることになると思います/。
免疫学フロンティア研究センター招聘教授。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学博士課程修了、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所、1994年大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター臓器制御学研究部教授、医学系研究科教授、生命機能研究科兼任教授、免疫学フロンティア研究センター兼任教授。2007~08年日本免疫学会長。宮坂昌之氏
たしかに、COVID-19は、免疫はかなり低い(獲得免疫が弱い)というニュースがある。つまり抗体寿命が短い。いいかたを変えれば、ワクチンによっていったん陰性になった患者が陽性に戻って罹患再発することが多々起きている。これは人類にとって驚異ではないか。
東京オリンピックが、COVID-19との闘いだなんて、戦時大本営みたいなこといってないで、ちったあ、まともに現実を認めましょうよ。
「go to travel 」「go to event」を政治的に煽動するなよ。黙示録の喇叭を吹くのはヤメにしましょう。
二幕目の幕が降りて、幕間(まくあいと読むんだよ)です。
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