港町memory 109
「なんですか、エライ疑問とは」
「医者ちゅうのは儲かるんやろ」
「そりゃ、いろいろでしょうけど」
「そんなことないで、もし、儲からんかったら、子供に家業を継がせたりするかいな」
「まあ、imageとしては、そうですね」
「たいてい、レクサス乗っとるやないか」
それはどうかワカラナイ。うちの近所の医師は軽乗用車だったけど。
「ほんでな、医療崩壊とかいうて、その、なんつうねん、最前線で働いている医者や看護師は命懸けなんやろ」
「だとおもいます。とくに賃金が高いとか聞いてませんから」
「そこや、そこやねん。なんで、国は最前線の医療十字結社になんぼ払ってんのか、いわへんねん、テレビ。わてはおもうねん、最前線で崩壊寸前のはな、」
「もう、何万人も亡くなってます」
「そや、そういうのはな、よっぽど義に厚いか、くじ運が悪いか、どうにもこうにもならんのが送られていきよったのか、どれかやで」
「まあ、泣きながら防護服と着替えている看護師のニュースなら、あったらしいです。海外のもんですけど」
「ほやから、レクサス売りぃ、いうてんねん」
ちょっと論理が飛躍しだした。
「そんなもん、仲間が苦しいいうとんねん、レクサスいうたら一千万やで。医者のあいだで、/みんなでレクサスを売って、最前線に防護服とマスクを送ろうっ/決起集会いうのをやな、やらなアカン。それもせんで、わてらの十万円、まだもうてへんねんけど、それを医療崩壊を防ぐために寄附しましょうはオカシイんちゃうか」
えらい、まともな、というか、オカシナというか、よく判断出来かねるこというおばさんやな。
「おのね、おばさん、医療崩壊というのは、いま始まったワケじゃナイんです。もう遠に崩壊しているのが、今度のCOVID-19騒動であらわになっただけなんです」
「ええ、もう、してたん。いつからや」
「医者というのは、赤の他人の命で商いをしている人たちです。そうかんがえてみて下さい。赤の他人のためにレクサス売りますか」
「売らんナ」
「おばさんのいうことはよおくワカリマス。まず、同胞の危機に対して、自らが立ち上がれっと、まあ、かっこ良くいえば、そうですよね」
「そのとおりや。それ、なんでやらへんねん、それが疑問やいうてるんやんかっ」
「それぞれの医者には、そぞれの持ち場があります。それぞれの持ち場で頑張ってたらエエのんとちがいますか」
「そうかな、そら、エエふうに聞こえるけど、それ、詭弁というのんとチガウか」
あらっ、難しくなってきた。
「観てみぬふりと、おんなじやナイか、えっ、そやないのんかっ」
剣幕というヤツだなあ。
「いや、そうじゃなくて、レクサス乗ってナイ医者も、持ち場持ち場でひとの命を守ってますよ」
「アタリマエや、それが医者の銭儲けやないか。原発の後始末やっとるのと、コロナ最前線で医療崩壊の中での命懸けと、似たもんやないか」
「いや、それとこれとは」
どうチガウのか、私も錯乱してきたので、アラ、エッサッサアと、アホのふりをして、院外処方箋薬局のお姉さんの冷たい視線に晒された。
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