港町memory 111
「うーん」
院外処方箋薬局でおばさんが唸っている。
「どこか具合が悪いんですか」
「ニイちゃん、あんたアホか。具合のエエもんが、病院来て、院外処方箋薬局にクスリもらいに来るかちゅうねん。謎や、疑問やないで、今度は謎や」
「かんがえているんですか」
「便秘で悩んでるみたにみえるか」
そうみえなかったというとウソになる。
「あのな、いま、コロナな、世界で4,634,068人感染の死者が311,781人や。知ってたか」
「えらい詳しいですね」
「ところがや、日本では、16310人感染、死者は748人、どっちも5/17現在や」
なるほど、dataは新聞読みながらだから、それでいいのだろう。
「これはちょっとおかしい。やっぱり、P検査で誤魔化してるのとチガウか」
「いや、そうではなさそうです。というか、私もそうではナイとおもいます。日本の罹患数と死者の少なさは世界的にほんとに謎なんです」
「しゃーろ、謎やで。べつに、安倍ちゃんナンニもしてへんみたいにおもうんやけど、なんど、スゴイことしたか。宣言出しただけやろ。ニイちゃん、どうおもうねん、、中日文化賞もろたんやろ、なんど、賢いこというてみいな」
「私の受賞は演劇ですから、医学や生物学とは関係ありませんが、マチガッテていいのなら、私のかんがえをいいますと、」
「もったいぶらんと、はよ、いえっ」
「水道水だとおもいます」
「ほう、水道水。そんでオワリか」
「アジアで唯一、水道水の水が飲料、つまり、飲めるのは日本だけなんです」
「ええっ、そんなもんかっ」
「で、手洗いがいろんなところで出来るのも、日本だけです」
「そやな、あちこち水道だけはあるなあ」
「これは、欧米と比較しても希有なことです。日本の水道水は塩素消毒がされています。ですので、石鹸を使わなくとも、そのまま流水で手を洗えば、COVID-19は ある 程度は落せます。それに、」
「ワカッテるわ、みなまでいうな、それくらいにして桶屋の三吉。風呂やろ。日本人は風呂好きやからなあ、たいてい、毎晩風呂入るなあ。あんだけでも、けっこな消毒やで」
「そうなんです。それに、」
「待て、それ以上イワンの馬鹿。トイレが水洗や。最近はケツまで洗うてくれよる。どや、」
「そうですね。つまり、上下水道の完備がひじょうに衛生的で、管理されていると、ここが他国との大きなチガイです。これって、医学者のような賢い方はけっこう見過ごしてますが、私たちのように単純な庶民大衆としては、すぐに気づきますよね」
「私、たち、てなんやねん。わては中流階級のまあ、下のほうやけど、愚民大衆やないで」
「そうでしたね、下でしたね」
「そこだけ強調して、どないやねん」
「それと、お茶飲むでしょ、けっこう。その水もまあ、水道水ですし、緑茶はインフルエンザ予防にもなるし、総合的にかんがえると、/水がチガウ/、これだけやナイでしょうか」
「/水がチガウ/これは、えらいこっちゃで。しかし、塩素はとり過ぎると毒やいうてたで、テレビ」
「原水に含まれている有機質の一種であるフミン質などと遊離塩素が反応してできるトリハロメタンや、そのほかの有機塩素化合物が、発癌性物質として問題になって、使用量は抑制されるようになってますね。現在では、浄水方法が発達したことなどによって、使用される塩素は微量になってます」
「とはいえ、塩素やな。そうか、謎は解けた。これからは水道水や、水道水で第二波撃退や。ここの院外処方箋薬局でも水道水売っとるやろ。ちょっと聞いてみたろ」
おばさんは、嬉々として、院外処方箋薬局のお姉さんを呼び出した。
それから、
「エライこっちゃ、ここは水道水はタダやねんて。えらいサービスやで」
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