港町memory 110
「ニイちゃん、おもろいニュースがあるで」
という、おばさんの声でアラエッサッサをやめることが出来た。院外処方箋薬局の薬剤師に首根っこを捕まえられて外に放り出された直後だ。
「なんですか、今度は」
「これやこれっ」
と、要点だけを(そうしないと、おばさんの説明では二時間くらいかかる)述べると、
/東京女子医科大学(東京都新宿区)が2020年6月から、対面授業の再開に向けて準備を進めていることが5月15日、分かった。事前に全生徒約1000人にPCR検査を受けさせ、陰性者のみ登校させる/
とのこと。この何処が今更おもろいのか。
「アホやなあ、ほんまに、ニイちゃん、そうおもわんか」
「うーん、たしかに、こういうやり方はねえ。事前に全生徒約1000人にPCR検査、こんな数、出来るのかな。/学生や保護者の間では「なぜ焦って6月から開始するのか」「感染リスクが高い東京に向かうことが大変不安です」などと反発が広がり、嘆願書が出される事態。/女子医大は5月11日付で、学生と保護者に「6月登校にむけての準備のご案内」と題した通達を出した。感染状況に「回復の兆し」がみえたため、6月に対面授業を再開する準備を進めている。院生を含む医学部、看護学部の全ての学生にPCR検査を実施すると知らせた。/うーん、やっぱり医大やからかなあ。こんなにいっぺんに」
「しかしな、これな、経費は全部学生負担や、つまり親の負担や。検査費(1万6000円~)やて。ここで儲けるワケや。P検の数が不足やとかいうてるのに、すぐにでけんのやな」
「いや、できませんよ、そんなこと」
「そやろ、そやからオモロイいうてるやんかいな。学生さんのほうはな/「貴重な医療リソースは本当に必要としていらっしゃる方のために使うべき」/とかいうてはんねん、さすがに女子大でも歯科医大の女の子はチガウな」
私はつづきを読んだ。(だいたい、その記事のある新聞はおばさんが持っているのだから)
/「地元ではコロナ患者・疑いの人に対し厳しい印象を持つ人が多い。感染者が多い東京に一度でも行ってしまうと、かなり長い間地元に帰れなくなってしまう懸念があり心配である」「県外から通っており、高齢者と同居する私としては感染リスクを限りなく少なくしたいです。現在感染リスクが高い東京に向かうことが大変不安です」「どう努力しても3密を避けられない状況で、たった1回の『感度は低く特異度が高い』検査をするメリットと、無症状の陽性者や偽陰性者と濃厚接触するデメリットを考えて頂きたい」「検査キットそのものだけでなく、検査をされる先生方や検査技師の方々の労力や時間など、貴重な医療リソースは本当に必要としていらっしゃる方のために使うべきではないですか。意味や必要がない検査は患者への負荷も考えて行うべきではないと授業で何度も習ってきました」/
「なるほど、もっともですね。理路では勝っていますね」
「なっ、アホやろ」
「だから、学校のほうがデショ」
「なにいう天然、ボケ。アホは学生さんのほうや、だいたい、/授業で何度も習ってきました/みたいなことが世間で通じるとおもてるのは、世間知らずのアホやで」
「いや、カシコイとこもありますよ。/オンライン授業は、慣れてもきたのでコロナが落ち着くまではオンライン授業の方が学生としては安全です。学校は大学病院の敷地内にあるので、信頼して通院や入院をしてくださっている患者さんのためにもなると思います/これはカシコイでしょ」
「そやから、そんなもん世間に出たらいっぺんに引っ繰り返るワ。歯医者といえど、人生は甘くはないで。けど、あえてやで、カシコイというなら、/地方の学生が一日だけ東京に行って検査をして帰ってくることがもし地元でばれてしまったら、周囲に非難されるとか、東京に行ったためにコロナに感染したらそれも非難される。親が開業医の学生も多くて、病院の経営に影響します。それを懸念する保護者も多いです/ここやな。ちゃんとワカッテるやないか、上京の端役がでけとんねん。さすが歯科医の女子大生や」
「状況の把握ですけど。褒めてるんですか、貶しているんですか。どこがオモロイんですか、私は不快だなあ」
「ニイちゃん、エエ歳して正義の味方みたいな顔せんとき、ええか、いちばんオモロイのはここや。/焦って6月から開始するのか理由が知りたいです。わざわざマスクとゴーグルとフェイスシールドを着けてまで授業に臨まないといけないのか。そこまでしてやりたいのはなぜなのか。ここまで強硬的にやられてしまうと裏があるのかと考えてしまいます/。なっ、ようワカッテるわ、こんなもん、裏がなかったらヤルかいな。ほんでガッコはこういうとんねん/「この度のご質問については、回答を控えさせていただきます」/こんなもん、ソノトーリ大臣の答弁やがな。裏がアルというてるのとおんなじやで、大笑い三人組や。うちな、いま「あかねちゃんデンタル」で虫歯みてもろてるんやけど、そこの女医さん、丁寧でエエわ。やっぱ、歯医者は女医さんやな」
私は、逆に歯が痛くなってきた。歯医者は女医さんというおばさんの言い分に異論はナイが。
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