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2019年6月16日 (日)

港町memory 16

六年前だったかとおもうのですが、そんなことは記録をみればワカルことですが、面倒にクサイのつく性分で、それはどうでもイイヤのココロ。劇作家大会が、兵庫県の豊岡、つまりは城崎温泉であったんです。
私の仕事は(このときはまだ会員だったんだけど)樋口ミユさんの適当な質問に適当に応えるというもので、これは、あんまり良くなかった。失敗。ちょっと事前の打合せと段取りを軽視し過ぎた。(ので、大分大会のときは、かなり綿密にメールなどをやりとりして、同じ様なイベントをやりましたが、これは大成功。嬉しかったのは、二十一年務めた私塾の塾生が大勢わざわざヤってきてくれたこと。そうなんだよなあ。みなさん、いま何処に立ってどこに進めばいいのか、底の抜けた世界で、路頭に迷ってんだなあ。ま、それはともかく)
このときね、夜はナニもすることがナイので、遊技場でスマートボールなんてので遊んでたワケであります。すると、従業員のお姉さん(オバサンなんですが)が、「蛍は観てきましたか」と声をかけてくれて、「蛍なんて出るんですか」と、場所を訊くと、なんのことはない、温泉街の中心を流れる河川が、くねって細くなって、裏手にまわって、と、要するにその遊技場の裏口抜けたら、そこなの。
冗談じゃねえぞとおもいました。
その数。十匹や二十匹じゃナイ。桁がチガウ。200~300。これはもう雪。(ちなみに蛍の光、窓の雪というのは、蛍の光が窓からみると雪のようにみえたという解釈はマチガイ)。しかし、もう、蛍の群れというより、点滅する淡い青い雪なんですねえ。
「うちのおなかんなか、百億のネオンサインと千億のイルミネーチャンや」
でござんした。

そいで、今年、ふいに行きました。そのまえにウェブを観たら「六年前までは数百匹飛んでいましたが、いまは数匹」と書いてある。
でも、まあ、これも見納めかなあと、行きました。
8時頃から9時ころまで、数えて十匹にとどいたかどうか。ともかくは舞っていました。
むかしは、蛍というのは、亡くなったひとの魂が現世に戻ってきて、光ってるんだよとかいわれていたらしい。とくに戦時中は、そのハナシは盛んで、「お兄ちゃんがもどってきよったけんね」なんてドラマでせりふになってたりネ。
たしかに、それは〈死〉に近い色合いかも知れません。が、私は、チガウ意味で、あの輝きもまた、光の波動なんだから、なんらかのenergieであるはずで、たしかに死したものの仮の姿(仮のenergie)かも知れないねとはおもいました。
昨今、私の周囲は死が澱んでいて、私にまでまとわりついているから、それならそれで、これをどう泳ぎきるかも、一興。もとより三途の川の渡し賃など用意する気はありませんから、私は、泳いで渡るつもりですから。
一匹の蛍が、ことば通り〔水先案内人〕とやらをしてくれそうな、今年の夏の初め。
/五月雨近しと雲流れ 五月雨すぐと風の囁く くわえ煙草の死に損ない/

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