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2019年4月20日 (土)

第五回

倒せる。これなら斬られずに右近を倒せる。
 左近、鼻息が荒くなった。
「どうした、蓄膿症か」
「いえ、ちょっとコーフンしているだけです」
「何十年ぶりかの師弟対面じゃ、飯でも食っていくか。地酒もあるからの」
「ははっ」
 左近、深々と頭を下げた。
「その前に風呂に入りたいとはおもうが、先客があって、いま、風呂はそやつが使っておる最中での」
「先客っ、といいますと」
「うむ。よくワカラヌのだが、ときどきやって来ては、風呂に入って飯を食っていく」
 まさか、それは内弟子ではあるまい。内弟子がそんな振る舞いをするワケがナイ。
 が、確かに風呂から鼻唄が聞こえる。そればかりか、
「おい、爺、ちいとぬるいぞ。ちょっと焚け」
 なんてこともいってる。師匠の仙洞を爺呼ばわりするとは何者っ。
「いったい何者なんです」
「それはな、ワシもなんべんも訊ねたのじゃが、~まあ、いいじゃないの~としかいわんのでのう」
 不敵なヤツ。
「ひょっとして手合わせなどは」
「いや、それは目的ではナイらしい」
「では、目的は何です」
「風呂と飯かな。ときどき、小遣いをせびりもするが」
 ちょっと顔をみてきてよろしいかと、左近がそう師匠に小声でいったのは多少のワケがある。まさか、隠し子の類ではと妙な憶測をしたのだ。しかし、
「いや、顔はワカランのじゃ」
 と、師匠からは意外なコトバが返ってきた。
「ワカラン、とは」
「ずっと、覆面をしておるからなあ」
「ふっ、覆面っ、風呂に入るときもですか」
「顔は洗うとはおもうが」
「いや、そういう問題ではなくて、」
「時々、泊まっていくが、そのときもマスクをしておるなあ」
「マスク、覆面ではナイんですか」
「たぶん、あれは布を顔に巻き付けた覆面ではなく、maskという」
 コトバを遮るカタチになったが、左近が、
「つまり、目出し帽、などといわれる、時代錯誤になりますがプロレスの覆面レスラーがしている、あの、」
「そうそう、ミル・マスカラスみたいなの」
 なんというヤツだ。
 と、また風呂場から声がした。
「ぬるいんだけどなあ、爺」
 斬り棄ててヤルっ、と左近が憤ったのも無理はナイ。手は刀の柄を握っていた。
 左近は師匠の止める声を無視して、風呂場に向かって疾走し、入り口の戸を開けた。
「キサマあっ、何奴、何者、何様のつもりだっ」
 湯の上から覆面だけしていた人物がそのまま、ザザッと立ち上がった。
 女だった。
「えっ、」
 左近、おもわずヘナった。
「何をドタバタしてんのよ」
 その女は左近を笑うように、そういった。覆面だったので表情はよくワカラナカッタが。
 肉(しし)はslenderではあったが、カタチの良い乳首とbust、くびれたwaist、自分は湯あたりしているのではないかと左近は疑った。これは斬れぬ。
 おもわず左近の口走った一言。
「もったいない」
つまり爺、いや、師匠の仙洞は女を連れ込んでいるだけではナイか。
「惚けてやがるな、師匠。しかし、もったいない」
 再度、左近は呟いた。手は刀の柄から離れていたが、左近のpenisは屹立していた。
 そっちで戦闘準備してどうする、左近。

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