想流私塾・2018/10/15 塾長lecture ①
当日、時間不足(というより横道に逸れてつまらぬハナシばかりしていたので)により、完遂出来なかったlectureを最初からここに何回か連載で掲載しておきます。
(という、塾生たちへの約束でしたからね)
仏説摩訶般若波羅蜜多心経
唐三蔵法師玄奘 訳〔口語訳・解説・北村想〕
まず、この経典のタイトルを私なりに訳しておきますと、〔わたしたちとはナンであるかについての釈迦仏の教え〕というふうになります。もちろん意訳です。
経文全文はそこいらにいろいろと掲載されている書籍がありますし、ウィキペディアでも調べられますので、ここに記すのは略します。
まず、
観自在菩薩/かんじざいぼさつ/
ですが、「観自在菩薩」とは 〔すべてを自由自在に観ることの出来るもの、また、「衆生 しゅじょう」、大衆のことでんな、これらのひとびとを救おうとする〈悟りたる衆生〉である存在、あるいは、そのために永劫の修行を続けている存在〕とされています。つまり、菩薩もまたひとりの衆生だということです。で、この菩薩というのは何処におるんかというと、菩薩はわたしたちの〈内〉においても存在しており、けして、わたしたちの〈外〉に在るものだけをいうのではナイとこの経典はいうてます。これは、釈迦仏陀もまた同じようにわたしたちの〈内〉に在るのであって、従って、けして「わたし」と「菩薩」や「仏」を分けて隔ててかんがえてはいけないということになります。
これは、「悟り」というものが、釈迦の外から釈迦にやってきたものではなく、釈迦が自身の〈内〉に在るものを悟ったというかんがえに由来しています。
この戒めを「摩訶 まか」と称します。経典のタイトルのあたまにある「摩訶」とは「仏と衆生を分けず 隔てない大きなこころ」という意味になります。
このかんがえかたを「摩訶」の智恵、「般若 はんにゃ」と称します。このように『摩訶般若波羅蜜多心経』を説いた(解いた)のは臨済宗の一休宗純禅師なので、ここでは一休禅師の解釈を基本に『般若心経』とはナンであるかをかんがえていくことにします。
もちろん他にもさまざまによく似た解釈はあります。
たとえば、曹洞宗道元はこう述べています。/「只管打坐 しかんたざ/座禅とは釈迦と同じ心境になり、ただひたすら座ることである」/
また、大乗仏説の『維摩経 ゆいまぎょう』においてはこの「分かつことなく隔てナイ」を「不二の法」と説いています。「法」とはもともと仏教用語で、訳すと「真理」という意味になります。
「不二の法」とは、たとえば一枚の紙が表と裏のように分けられるようにみえても、それは一枚の紙であり、なにごとも、ほんらいはひとつである、すなわち、すべての相反するようにみえるものも、ほんらいはひとつであるという考えかたです。この〈分けられない〉という理(ことわり)は釈迦仏陀の思想の真髄といえるのではないかと私はかんがえています。コトバをすすめていえば〈分けられない〉は〈分けてはいけない〉という積極性を持ち、そもそも「分けることが出来ないものを分ける」ことによって、そこに煩悩や苦悶が生ずることになるのだという教えに発展していくからです。
この〈分けることは出来ない・・・分けてはいけない〉は『般若心経』の重要な要素、概念 意味、価値だとわたくしはかんがえています。何故なら、分けてはいけない〈内〉とはナニか、〈外〉とはナニかという問いかけと、その理解が『般若心経』の解読にとって必要不可欠なものとなる、と、予感しているからです。これが、私のいちおうのalgorithmです。
行深般若波羅蜜多時/ぎょうじんはんにゃはらみったじ/
菩薩が〈此岸/しがん「衆生世界」〉から〈彼岸/ひがん「煩悩を解脱/げだつ」した世界〉に渡る修行をしたのち、つまり、もう修行すべきことのナイところまでいったときということですが、『法華経/ほけきょう/正式名称は妙法蓮華経/』によると菩薩は彼岸に至って仏陀となったアト、再び菩薩にもどって修行を始めるとあります。このcycle
は、修行とは 〈永久革命〉と同じことであるというかんがえかたで、宮澤賢治の『法華経』信仰もこれと同じかんがえであるとおもえます。 だからこそ、あの北一輝や石原莞爾も法華経の信者だったのです。
〔ともかくも菩薩はこの教説ではとりあえずいったところまではいった、ということにしておきます〕
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