無料ブログはココログ
フォト

« 第十七回 | トップページ | 第十九回 »

2018年9月23日 (日)

第十八回

 再び、pearは跳んだ。と、同時に右近が材木から跳ぶのが、二人には視えた。

 このときぞっ、逃すなっ、このtimingを。と、ばかりに赤星、南郷、両者の唇から吹き出されたモノがある。

 それは吹き針、含み針の一種にはチガイナイが、材質が金属ではナイ。透明のところをみると、ギヤマンか或いは石英ガラス(crystal)、いや、微妙に振動を伴っているところを鑑みれば、quartzと称するのが正しいかも知れぬ。この微振動のために針は視覚では捕捉出来ない。また、これが身体を貫通せしめれば、その振動の波動で骨の髄を砕くことは必至とおもえる。しかも別々の方向から、というより、周回、跳躍しながらの二人の唇から吹き出されるモノの飛来であれば、その攻撃は四方八方、さらに宙空からとなり、避けることは不可能になる。

 のばず、なのだ。赤星も、南郷も、そう信じていた。そう信じていればこその必殺の攻撃だ。このとき、右近の鍔はすでに打たれていた。鍔鳴りは始まっていた。

 彼らの武器は右近をあらゆる方向から貫通した。と、pearには視えた。

 が、あろうことか、赤星の針は南郷に、南郷のそれは赤星に、片方は頭蓋、もう片方は胸部をそれぞれに貫通したのだ。この思いも寄らぬ事態に、

「まさかっ」

「なにゆえっ」

 と、血飛沫とともに地面に激突した赤星と南郷を哀れとおもったか、それとも何か苦吟することでもあったのか、横たわるpearをみやりもせずに、右近、

「哀れだが、勝負とは非情なものだ。工夫され修練された武器だが、拙者には稚戯に過ぎぬ」

 と、ひとこと呟いた。。

 瀕死ではあったが、赤星も南郷もその身を起こした。

 去りゆく右近の背姿。これが、彼らがこの世で観た最後の視像となるのはマチガイのナイ事実だろう。

 再び、赤星と南郷が地に横たわると、駆け寄ったのは、只飲理兵。

「恐るべし、畏るべし、楠木右近。赤星と南郷霧丸の必殺の技を破り、いとも容易(たやす)く二人を屠(ほふ)るとは」

 只飲理兵は、赤星と南郷を並べてその両手を重ねると、怒りと憐憫の交錯した眼差しで二つの亡骸をみつめ、

「しかし、赤星、南郷、おぬしたちの戦いは無駄にはすまい。右近めの戦う姿、しかとこの目で観たぞ。仇は必ずやこの只飲理兵、この槍でとってみせるぞ。南無三宝」

 と手を合わせた。

« 第十七回 | トップページ | 第十九回 »

ブログ小説」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 第十八回:

« 第十七回 | トップページ | 第十九回 »