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2017年2月18日 (土)

夢幻の函 Phantom share 35

エブの国が、つまりはビブやドブたちの住む国なのですが、しだいに弱々しくなっていることを知り、となりの国が攻め込みました。戦争をしかけたのです。

もう兵隊がほとんど動かなくなっていたので、エブは嫁を置きざりにして、ビブといっしょに逃げ出しました。けれども、帰り着くころに、家は戦火に燃えてしまって、アトかたもなく、父親も母親もとなりの国の兵隊たちのために、命をうばわれてしまっていました。

「やあ、兄さんたちおかえり」

それでもドブは笑顔で、兄たちの帰りをよろこびました。

「ドブ、父さんも母さんも死んだのか」

「ああ、戦争だったからね。しかたがナイよ。でも、父さんも母さんも寿命だったし、それに、ヒトは何処でいつ死ぬかなんてワカラナイもんだよ」

そういって、ドブはエブとビブに山羊の乳をふるまいました。

「田畑がふえたよ。また、いっしょにタネをまこう」

けれども、エブもビブも、なんにもヤル気がしないのでした。

「夢はかなったらオワリだ。けれども欲はチガウ。欲にはキリがナイ。エブ兄さんの夢はほんの少しのあいだだったが、げんじつになった。げんじつになったら、このザマだ。オレの大金持ちになる欲もかなったが、キリがナイというのは、カラダに悪いらしい。どうも苦しくてたまらない」 

そんなときに、となりの国の兵隊たちが、エブとビブをつかまえにきました。ツキはドブにしがみついていました。

となりの国の隊長さんは、それをみて、

「この二人はいいだろう。となりきんじょにきいたのだが、男のほうはちょっとバカで、娘のほうは口と耳が不自由らしい。そちらの二人だけをつれていけ」

それをきいたとたん、まずビブが弱りはてたようすで死んでしまいました。

それからすぐに、エブも、力なく、はててしまいました。

「ちょっとへんだが、死んだものはつれていってもしかたがナイ」 

ドブは穴をほって、エブとビブを埋めてやりました。ツキは兄たちの墓に、どこからか花をつんできて、そえました。それから二人は新しい田畑にタネをまきにでかけました。

すると、ツキのようすがおかしくなりました。

毒へびにかまれたようなのです。

「こんなところに毒へびなんていないはずなのに」

ドブは、いっしょけんめいツキの、てあてをしましたが、ツキはドブをみつめたまま死んでしまいました。 

ドブはしばらく泣きました。けれども田畑にタネをまくことにしました。

そのとき、あの二級天使があらわれました。

「おい、ドブよ、おまえはひとりぼっちになってしまったな」

「いいさ、オレには田畑がある」

「その田畑をたがやす力も、タネをまくチカラも消してやろう」

二級天使がそういうと、ドブのカラダからチカラがぜんぶ抜けて、ドブは、なえてしまい、土の上にたおれてしまいました。

「いいさ、オレはこのまま田畑の土になっていくさ」

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