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2017年2月14日 (火)

夢幻の函 Phantom share 31

ドブ記

 

 

ある天国のお昼すぎです。

あんまり神さまがたいくつそうにしていたので、大天使のルシフが近づいてきました。

「ヤハイさま、ずいぶんと、たいくつそうですね」

ヤハイというのは、神さまのなまえです。

「そんなふうにみえるかな」

ヤハイは大きなあくびをしました。

「どうです、このまえつくった、ヒトを使って、遊んでみませんか」

「ヒト、そんなものつくったかな」

「いっしょにつくったじゃありませんか。わたくしたちとよく似たのを」

「そういや、そうだったな。それで、どんな遊びをするんだ」

「試してみるんですよ」

「試すって、何を」

「ヒトが、どれだけヤハイさまのことを信仰しているか、そいつを試してみるんです」

「オモシロイかな」

「そりゃあ、オモシロイですよ」

「じゃあ、やってみるか」

神さまは、目をまんまろにして、わくわくしながらルシフをみつめました。

「で、ナニをどうする」

「まず、遊ぶあいてをえらびましょう」

そういうとルシフは、てきとうに地上に向けて指をさしました。

 

ルシフの指先の地上。そこには、三人の兄弟と、一人の娘と、その父親と母親が住んでいる農作地と小屋のような家と、小さな納屋がありました。

いちばん上の兄はエブ、二番目がビブ、三番目はドブという名で、末娘の名はツキでした。

農作地といっても持っている田畑は少なく、牛と山羊と馬が一頭ずつ、納屋のそばに飼われているのでした。

 

「あのものたちをどう試すのか」

と、ヤハイはルシフにたずねました。

「それは、わたくしの手下の二級天使にやらせます。なあに、ヒトのことですから、わざわいがふりかかれば、すぐにヤハイさまを呪いますし、うらみますよ」

「呪われたり、うらまれたりは、ヤだな」

「いえいえ、そこで救ってやるのです。そうしたら、あのものたちは、また神、ヤハイさまをあがめます」

「なるほど、しかし、そんなことがオモシロイのかな」

「オモシロクするんですよ」

ルシフがたのしそうに笑うと、ヤハイもうなずいて笑いました。

 

ルシフの手下の二級天使が、すぐに兄弟と娘、両親の情報をルシフにしらせてきました。

「兄のエブは、びんぼうな暮らしがイヤで、兵士になって戦争にいき、やがては国王になる夢などをもっています。ビブもびんぼうから逃げて、大金持ちになりたいと思っているようです。ドブとやらは、少しバカのようで、とくに何も考えてはいません。ツキという娘は口がきけませんし、耳がきこえません。父親と母親は、もうなにもかもあきらめています」

「戦争に国王か。それと大金持ちだな。よくもそんな、だいそれた出来もしないことを。しかし夢や望みは大きいほうが、やぶれたときのショックも大きい。ドブというのはバカのようだが、バカはバカなりに欲しいものもあろう」

二級天使はルシフの命令で、地上におりていきました。

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