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2017年2月 7日 (火)

夢幻の函 Phantom share 26

男はヘルメットとマスクをとった。

ありゃ、土方。

「何してんですか」

 もちろん、そう訊ねたのは私だ。

「五稜郭は無事だったよ。さすが要塞はチガウね。とはいえ、立て籠もって闘う相手などもういない。私もそんなつもりはナイ。歴史の上では、私は討ち死にしたことになっているが、それを都合よく、この瓦礫から始めてみるかな」

 何を。

 そんなことにはいっこうに頓着していないようにみえた。

「~さん、女のはなしをしよう」

 と、突然だ。土方さんが、笑いながらそういった。

「えっ、どうしたんです」

「きみは、さきほど女のことを考え考え歩いていたね。難しいことはナイ。女というのは〈おもちゃ〉だ。蔑視していっているのではナイ。祇園の芸妓などは自らそう誇っていってたよ。男はたしかに子供だ。いつまでたっても、そうだ。だから〈おもちゃ〉を欲しがる。そうして、女は〈おもちゃ〉に成りたがる。~よくも、私のことをオモチャにしたわね~と怒る、恨む、という女を描いた虚構があるが、あんなものはウソだ。男が女をオモチャにすることを、女は羨望している。男のオモチャとなって、弄ばれることを悦びにしている。それに気がついていた男は、マルキ・ド・サドくらいかな。彼の作品においても、姉のジュリエットは面白みがナイが、ジュスティーヌは魅力満載だ。つまり、オモチャとして最高のqualityなんだ。だから、私は聖母マリアをオモチャにしてみたんだ」

 それについてはno commentにしておきましょう。

「しかし女性も、お人形を持つじゃないですか」

「ありゃきみ、オモチャではナイ。人形というのは、読んで字のとおり「ひとがた」だ。ひとがたは、男の代用品だ。つまりは子供だ」

 そうなのか。そうなのかな。そうなんだろうきっと。

「ボクは、もてたよ」

 〈ボク〉ね。

 そりゃそうだろう。まだ二十代の美剣士だ。

「遊んだ、な」

 そりゃそうだろ。銭なんかどうでもイイってくらいに玄人だって寄ってきただろう。

「しかし、生活はなかった」

 あたりまえだろ。

「女房にしようとか、嫁にもらおうとか、いえるような生き方じゃなかったからな」

 カッコイイじゃねえの。

「どうせ死ぬのなら、子供が欲しいワ、と、いってくれる女のひとりくらい、いてもよさそうだったが、なかったな」

 ほう、そうですかい。

「つまりね、~さん、女ってのは概ね残酷なもんなんだよ。こっちが遊びなら向こうも遊び、割り切りがハッキリしている」

 そんなもんですよ。

「けれども、ぼくは、ほんとうは遊んでなんかいなかったんだ」

 ほんとかよ。

「男たるもの、跡目が欲しいのに決まっている」

 そういう時代だったからな。

「だから、どんな女にもいってみた。ぼくの子供を産んでくれないか」

 ほーっ、そんなこと、いったんだ。

「そうしたら、どんな女も、歳さん、冗談ばっかり、ほほほほほほっだ」

 あたりまえだ。それをして、残酷は、ナイんじゃないのかな。

「~さん、女という生き物は、函だ。夢と幻の函だ」

 ええっ、そこにつなげるっ。ラストシーンのせりふになっちゃうぞ。

 

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