夢幻の函 Phantom share 23
茫漠としているうちに、また後ろからさっきの声がした。
「ここからどうやったら、出られるっ」
と、妙なことを質してきた。振り向くと猟銃を構えた頭陀が立っている。
「誰なんだあんたは」
「俺が誰だかはもう忘れた。眠っているうちに、夢をみていて、その夢が自分の夢ではナイことに気付いたら、迷子になった」
「さっきは、自分の夢だと、そういったじゃないか」
「そうあって欲しいからそういった。これは、ひょっとしておまえの夢か」
なるほど、黒の女王より錯綜している。
「だったら、どうなんだ」
「これで、お前をぶち抜いて、お前の夢が終われば、俺は現実に帰れるかも知れない」
なるほど、理屈だな。
「じゃあ、そうしてみろ」どうせ、夢なんだから。
しかし、夢の中で殺されるというのはどんな気分なんだろ。
いや、気分というか、いったい何がどうなるんだろ。
男はtriggerを引いた。
暴発した。
頭陀は肉片になって飛び散った。
まあ、こんなとこだろう。
こんなところだろうけど、私はこの夢の中の函館の焼け跡で、これから、アリスさながら、さまざまなイロイロと邂逅、遭遇、していくことになる。
20回くらいで終わるかと思っていたが、書き出すとDon Quijote、先行きのことなど考えてナイのだから、無論、夢なんだから、それに編集者や出版社や読者への気兼ね気づかい一切ナシときているので、退屈しのぎにヒジョーによろしい。よって、テキトーなるこの小説は長くなるような予感がする。
もちろん、殆どはrealとfictionの微分係数の構造で描かれている。誇張はあるが、嘘ではナイ。虚構ではあるが、嘘ではナイ。
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