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2017年1月 9日 (月)

夢幻の函 Phantom share⑤

「海岸沿いの道路をdriveします。右手に立ち並ぶのが温泉宿よ。そうして、左手の海沿いに漁師の家並みがみえるから」

 たしかに、レイさんのいったとおり、海岸沿いのきれいに舗装された道路の左側は、漁を業にしていることが一目でワカル漁師の家並みが在る。網を縫ったり、漁船の補修をしたり、漁師と書いたハチマキまでしている。いったい、なんの漁をしているのだろう。つげ義春の『ねじ式』じゃあるまいが、メメクラゲ漁なんてのをやってんのかな。

 右側は絶壁ともいえる山林で、そこに貼りつくようにして温泉宿が立ち並び、それぞれの宿は宿屋らしい看板を出しているのでたしかに温泉宿らしいのだが、「んとか荘」「ったり旅館」「んな屋」「旅籠どや」「っぱなホテル」「うしてもリゾート」「とぶき館」などなど、なにか脱字があるような名称ばかりで、私は内心苛ついた。足らない。足らない。と呟いていると、何が無いのかに思い当たった。温泉街にはつきものの、土産物などを売っている繁華街、風俗街、歓楽街がまるでみあたらないのだ。これを温泉街と称していいものだろうか。

 いくら、夢の中とはいえ、だっ。

「この山はみんな噴火山なの」

 レイさんはそんなことはお構いなしで、というよりも、それがまるでアタリマエなのだという確信に満ちた胸部を乳首の目印で誇らしげにゆらしながら、という悪文まで書かせて、今度はそんなことをいう。

「噴火山っ。んと、あの、それは活火山のマチガイじゃないんですか」

「いいえ、噴火山よ。あとで、この山々の裏側に回ります。そうしたら、それが観てとれます」

 だいたいこの海岸沿いのまるでdrivewayのような道路は何のために造られたものなんだろうか。

「この道路はね」

 その疑問に答えるようにレイさんは、軽くハンドルをさばきながら、ふふっと笑みをこぼすと、

drivewayなの」

 と、直截的なことをいうのだった。 

 私はいつか、いや、この夢の中に在るうちにchanceがあればこの女、溶かしてやろうと決意した。が、慌てて誤植に気付くと、溶かしてじゃナイ、犯してだっ、と校閲を叱責しているplotの横滑りに、ここは誤魔化せと、いまひとつの疑問を彼女に質した。

「この温泉宿はまるで長屋のようじゃが、かのような宿屋にいったい宿泊客というものがあるのかの」

 あれっ、校閲のヤロウ、これじゃあ、侍じゃナイか。

「こごは、温泉宿であるでねえ、長屋さ、ようでがんすが、やっぱり、温泉街でござんすか」

 南部訛りだ。

「ええと、でやすか、でござんすか、でごぜえやすか、と、次第に丁寧な問いかたになるのが、南部訛りだと勝手に考えたんですが、いや、もうこの件に関してはイイです。で、行き先は何処なんです」

「噴火山の噴火で出来た湖。大沼湖というんです」

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