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2017年1月17日 (火)

夢幻の函 Phantom share⑫

「こんな大火は、タイカの改新以来ですよ、たぶん。どうします。突っ込みますか」

「男というのは、突っ込むのが好きなものです。とはいえ、なるべく小火(ボヤ)のところから入って行きましょう」

 そうすると、ロシア正教会と隣り合わせにあるローマ・カトリック教会の坂道、片方に本願寺一向派の本山寺を観る急な坂道、を、下っていかなければならない。

 らしい。地理はよくワカンナイので、ハルちゃんがそういうんだから、

「そこ、降りればいいじゃナイですか」

「ええ、でも、ひょっとすると、火から逃れるためにレミングたちが、その道を塞いでいるかも知れませんよ」

 ハルちゃん、それは、まったく実証されていないんだよ。たぶんハルちゃんは、レミングの集団自殺、動物生態学でいうところの〔密度効果〕のことをいっているのだが、つまり、個体数を調整するためにハーメルンの笛吹だか法螺吹きだかが吹く笛に合わせて、海に集団でなだれ込み自殺をする種が在るという、いまだかって記録には残っているが、誰も観たこと(観測したこと)がナイ伝説を、ハルちゃんはいっているのだ。

「あの、レミングというのはmetaphorですけど」

「あっ、そうなの」

 つまり、そこに避難民やら避難自動車やらが押し寄せているのではナイかと、そう注意を喚起させているワケか。

radioをつけてみて」

newsですか」

「そうそう」

 switchが入る。と、『2001年宇宙への旅』のテーマ『ツァラトウストラはかく語りき』(リヒャルト・シュトラウス)が厳かに鳴り響き始めた。

 函館市の道路は広い。これはかつてやはり大火があって、何処どの大金持ちがポンと寄付金を出して類焼、延焼を防ぐために広くしたもので、その中央を路面電車がいまも走っている。(このかつての大火と何処どの金持ちの寄付と広い道路については、ネットを検索すれば出てくる。だからそのことについての詳細が知りたければ、そういう輩はそうすればイイ)。

 函館に降り立ったもの(というか訪れたもの)が、その街の外観にヒジョーにmentalに反応するのは、条例による夜景を守るための高層建造物の禁止と、広すぎる道路に潜在的な異和感を覚えるからだ。逆に私などは名古屋という広い道路の街を観慣れてしまっているために、この函館の道路の広さに当初は気がつかなかった。夢の中だから、感覚がこんな変な具合なんだろう、程度に思っていた。

 時々ではあるが、水族館を見学して、帰り道に自殺するものがあるという。これはとある水族館の副館長からの裏情報なので信じなくてイイ。

 が、水族館もmental系が弱いひとはココロの辛い日は見学を避けたほうがイイ。これは副館長も私のその提案に同意している。

 函館も同じだ。

 夢の中だ。

 ちょうど自分の夢の中に自分が迷い込んだ、そんな心情に陥る。ましてや、いまその都市は一部を紅蓮の炎が包んでいる。かの道路はハルちゃんのご託のとおり、レミングでごった返している。

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