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2017年1月23日 (月)

夢幻の函 Phantom share⑯

「あのね、イエスは私の子供では、」

 ちょっと待った。それはいわないほうがイイ。いや、いわせないほうがイイ。夢とはいえ本来は小説だ。バチカンの三つの封印書の最後の封書はまだ開かれていないが、そこにはイエス出生の秘密と神の国というのは何か、とうことが書かれている。これは死海文書の中から発見されて、長い間、解読(というか復元)されなかった『ユダの福音書』にも書かれていたとかなかったとか、で、最近コンピュータ技術を駆使して、その三分の二までが読めるようになった。もちろん、バチカンは重要なその部分だけを回収して、秘匿。ここで、私がそのことを書くと、手がまわって暗殺されかねない。

「マリアさん、それはイイ。ここは夢の中だから、それより歳さんと一緒に逃げて、海を渡り、Chinggis Khanとなって、」・・・いや、それは出来ないな。

 だったらもう、迫り来る炎の中で焼け死んでもらうか。ジャンヌ・ダルクだ。

 しかし、私とハルちゃんは逃げないと。

 夢の中とはいえ、ハルちゃんが焼死するのを観るのは忍びない。

 ハルちゃんの手を引っ張って外の広い道路に飛び出すと、本願寺一向宗の集団が、坊主を先頭に筵の幟を掲げて後進しているところに出くわした。後進だ。行進ではなく、彼ら烏合の群れは、歩をアトへアトへと向けている。

「歴史逆行、史実変革、南無阿弥陀仏」

 何を唱えてやがんのか。歴史を逆行させられるものなら、一向一揆や天草四郎の島原の乱までとはいわない。唐牛健太郎よりまだこっち、東大安田講堂の時計台までやってくれ。

「えっ、どこさあ~、それっ」

 タクシーの運転手が歯茎を剥いた。何でタクシーなんかひろったんだろ。

「いえっ、いいです。降りますから」

 そうか、ハルちゃんの車が燃え出していたからだ。

 タクシーから降りると、地面に激しい揺れを感じた。

「地震だな。下北半島からこっちへの、火山帯か、活断層が蠢いてやがる」

「沈むのかな」

 ハルちゃんが私の腕にしがみつきながら、森から逃げ出さんとしている小動物のような瞳で、私をみた。

「あのね、日本列島というのは海に浮いているんじゃナイのよ。だからブクブクとはいかないと思うよ」

「~さん、ほら、むかしの日本のあまりオモシロクナイ映画で『日本沈没』というのがあったでしょ」

 あったあった。日本のSF小説の大御所が原作のアレね。原作のほうは400万部以上売れて、原作者が、印刷所の輪転機を止めてくれと、出ないと税金が巨額になるばかりだと、出版社に電話したとか、そういうほんとかウソだかのepisodeがある。

「あのときさ、うちの店のお客さんでね、半剃りの留さんというのがいてね、なんで半剃りなんてあだ名かというと、髭があまりに硬くて、いつも三本shaverを使っても、半分しか髭が剃れないのよ。でね、そのひともその映画観て、お店でこういったのよ。・・・日本沈没なんて怖くはナイよ。怖いのは〈地球沈没〉だよ。そうしたら、マスターが、留さん、地球はいったい何処に沈没するんですかって、笑ったの。そうしたら、留さん、マジメな顔して、そりゃあ、宇宙だよ。あのね、宇宙に沈没すると、何処までいっても底ってのがナイのよ。けれども、いつかは底までいくんだ。そうしたら、その底を突き破って、今度はどうなると思う。ん、ん、ん、・・・マスターもう笑ってなかったなぁ。どうなるの、留さん、そう訊いた。そうしたら留さん、それを考えるの怖いのよ。まあ、たしかにそうよね」

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