夢幻の函 Phantom share⑪
どうしてこんなacademicな話になったのか、ああ、愛だったな。愛ねえ。
「そうだ、ハルちゃん、愛というのは重力のようなものだよ」
と、口が滑るんだから、夢のおかげだ。
「ああ、そうですね、私もそう思います」
と、二人はdeep kiss をするのも夢だから。口が滑る、舌が滑る、この連想だナ。
「ああ、ん、重力がっ」
「重力には四十八手があるんです。その一つが重力波です」
一句出来た。/シートベルトをしているからといってハンドルを離してはアカン/
これって、自由律なのかい。どうでもいいけど、カーブだよハルちゃん、いつまでも舌吸ってナイで、ハンドル握って。って、握るところがチガウ。そこは、いやもう、二年近く女体に接していないと、書くことまでfrustrationの発露だ連発だ。これを夢だと誤魔化すとは物書きの風上にも置けない。から、風下へっ、
「ハルちゃん、函館市内は風下って矢印がっ、掲示板に」
「函館はね、色街がナイんです。だから、女子大生が売春するんです」
その話はレイさんからも聞いた。ここでそれを始めるとloopしてしまう。
「『愛して愛して愛しちゃったのよ』って歌ありますよね」
ハルちゃん、息が荒い。うーむ、まだくるか。
「マヒナスターズだったか、暇になりなすった、だったかが歌っていました。いや、ここは正確を期しましょう。和田弘とマヒナスターズに田代美代子さんが加わって、これはハマクラさん、浜口庫之助さんの作詞作曲ですよ。あのひとらしい歌だなあ」
「みんな走るんですよね」
走るって、なんでっ。
「~愛しちゃったのよララ、ラン ラン~ でしょ」
ああ、そうだ走るのだ。愛すれば走るのだ。run run run runだ。しかし愛を知らぬものも走るのだ。『走れっ、愛を知らぬ子よ』という戯曲もあるぞ。
「愛して愛して愛しちゃったら、もう走るしかナイんですよっ」
そうだっ、ハルちゃん、きみは正しい。しかし、函館は風下の⇒だよ。そっちに向けて車は走らそうね。
「みえてきました、函館の市内に間もなく、あれっ」
どうしました、と訊くまでもナイ。燃えているのだ。火事。函館市内だ。かなりの大火だ。
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