途端調風雅④
卓球便
運良く、3回戦の北朝鮮カットマン(女性なんだけどね)との対戦は、伊丹のホテルにいたのでテレビで観ることが出来た。リ・ミョンスン、ここまで、さすがに軽く相手を打倒なのか、解説によると、カットマン(女性なんだけど)としては、世界number
oneだそうで、試合開始直前の解説者、担当アナの掛け合い漫才では、「強敵ですが、どうしても倒さなければならない選手です」、とかで、こういうアタリマエのことをなんか凄そうにヘラっというところがオモシロイんだけどね。倒しても倒さんでも、どっちでもエエ相手みたいなもん、おらへん、いうねん。
確かに日本選手は、カットプレイに弱い。これは、いまを猿キッキ、もうずうっと前、まだ日本と国交のなかった中国の卓球選手団と、当時世界一を有していた日本の卓球選手団による親善試合、いわゆるのちに卓球外交と称されたときから明白な事実でありました。そのとき、リアルタイムで、テレビで試合の様子を私は観ております。なんで、観たのかは忘れたが、世界選手権者の日本選手が、まったく歯がたたなかったのは記憶にあります。強打をどれだけ打ち込んでも、中国選手は無表情で、ゆう~っくり手を廻して、球を返す。つまりこれぞ中国の十八番、カットプレイなのだ。そのうち日本選手はミスをして負ける。全てこのパターン。中国卓球が、世界の表に出てきたのはこれが最初で、カットプレイはあるにはあったが、ここまで執拗なのはなかった。これを得意とし、カットして相手のミスを待ちながら、甘い球が返ってきたらすかさず強打。狡い卓球やなあ。
で、リ・ミョンスンだ。世界一のカットマン(女なんだけどね)。
これを福原愛4-0で撃破。まさに撃破だった。ストレート勝ちなんだからなあ。2セット先取されたあたりで、リ・ミョンスンの顔から汗が滝のように流れだす。福原のほうは、ひとまわり大きくなったみたいにみえるカラダなのだが、汗の一滴も流していない。これはもう、練習量が圧倒的にチガウのか、あるいは、リ・ミョンスン、「ナニヨ、コレ、オカシクナイカ、ヘンヨ、ウソヨ、ソンナハズ、ナイヨ」との蟇の膏汗かも知れない。ファイナル・セットは、もう〈死に体〉でしたからねえ。「フルセットの接戦になると思ってましたが、30分で終わってしまいました」と、アナ。まさに神懸かりか、福原愛。そんなこたねえだろ。私のような素人考え、床屋談義を述べると、福原愛は、いつもの福原愛的闘いを棄てた。これはおそらくコーチの指導の成功だと思われる。なるほど、福原愛は天才教育を受けてきて、抜群の福原愛的強さをもっている。で、いつもそれで闘ってきて、勝ったり負けたり。ところが、このオリンピックでは、それをあっさり棄てた。二度いうが、おそらくコーチの指導だ。そのあたりは、演劇歴四十余年の私にもワカル。「敵を知り、おのれを知れば、百戦百勝す」(孫子)。この兵法をもう少しかみ砕けば、「敵に応じて、自らの闘い方を整えれば、必ず勝てる」ということだ。で、福原はそうしたのだと思う。徹底的なカットマン対策があったことは、コーチの優秀さを物語っている。リ・ミョンスンの顔から汗、「ソンナ、バカナ」は、福原には、カットプレイで充分という、油断があったのだ。得意のカットプレイがまったく通じない。そりゃあ、汗もかくで。しょうがないので、相手の正面にストレートで打ち込む(こういう打ち込み方の呼称を私は知らないんだけど)、しかし、この打ち込みは、相手が弾いてミスをしてくれんことには、ピンポン球は、浮くんです。そやから、放っておいたら卓球台にかすりもせず、飛んでいく。
さて、ベスト8。相手はシンガポールというても、シンガボールに住んではる中国人。世界ランキング五位。格上。ここでも、コーチの作戦勝ちがうかがえた。。私はこれを買ったばかりのラジオで聞いていた。ラジオは「5時の方向から11時の方向に・・・」とアナがいう。まるで、太平洋戦争の空中戦みたいです。福原は相手のナントカに、この前負けている。負けたということは有利なことだ。ふつう何で勝ったのかワカランけど勝ったはあるが、負けたら、何故に負けたのか、考えまっせ。これも、演劇歴四十余年がいわせている。「下手な役者の下手が、ワカランようにするにはどうすればよいか」あるいは「下手な役者でも客に好感をもたせるにはどうすればよいか」、私の劇団公演歴は総てこれ。ラジオだから、イメージでしか脳裏にはナイのだが、たぶん、コーチの指示は、シンガポールのナンタラには「打たせなさい」だったと思う。「打って勝とうと思うな。それなら相手が一枚上なんだから、とにかく打たせなさい、それを確実に拾いなさい。確実に拾えれば必ず勝てます」。福原愛は、「打てるときまで待つ」というより「自然に打てるときに打つ」という反射で、接戦を征して4-0のストレート勝ち。
今夜、準決勝。つまり、残ってんのは四人。メダルは三つ。
相手はやはり中国。これは4-0とはいかないだろうが、フルセットまでのもつれこみはナイと思う。
4-1で、福原。で、どうやっ。
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