途端調風雅③
トンチンコンカン
2Bの鉛筆で真横に線を引く。真っ直ぐに線を引く。黒い線が伸びていく。鉛筆で文字を書こうと思ったが、黒い線一本で充分だと途中で考え直して、線を引く。
書こうと思った文字は、〈鎮魂〉。
鎮魂は、日本人がもっとも得意とする儀式だ。魂は鎮めればヨシとされる。しかし、鎮魂は錯綜する。
「殺されたもの」と「人殺し」をいっしょに鎮魂することは出来ないという了見からだ。
けれども、「殺されたもの」にドラマがあったように「人殺し」にもドラマはあったのだ。と、我がドラマツルグはかく語る
ドラマは存在した確かなものだ。しかし〈魂〉は、そんなものあるのかないのかワカンナイものだ。それを鎮めて、それでヨシ。それでヨシとするものに対しては、鉛筆の黒い線一本を報いることで充分だ。と、我がドラマツルグはかく語る。
鉛筆の黒い線は、ドームも、ヘイワゾウも、未だに燃えるゲンシロも、神道の擬制も貫いて、ただ、伸びてゆく。
この鉛筆の黒い線、これがトンチンコンカンという我がドラマツルグだ。
/赤蜻蛉 右に左に 飛べど悩みて /
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