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2016年7月 9日 (土)

涙、壊れているけれど⑰

たかが とんびを

⑮で、「たかが歌手」って書いたでしょ。ああいう文言については、~いや、そのひとは歌に命を懸けてんだっ~、て反論あってもイイんですよ。けどね、大衆なんて、みんな食うことに命を懸けてんの。誰だったか、あんまり有名でもナイ哲学者(というか、哲学教えていたガッコのセンセくらいかな)がね、マルクス主義が興隆していた時節です、そんな時代にですね、ふと、ね、「階級闘争とか、資本家の搾取とか、労働者の運動とか価値とかいうけども、要するに、食えなくなると人間てのは死ぬしかナイから、けっきょくのところ、死ぬのがイヤだから、働いてんじゃないのかな」と、遠慮がちに述べたことがあったんです。そりゃそうだなあと、当の時代のインテリはみなさん、そう思ったろうけど、口には出さなかった。ところが、後々にですね、これが、「構造主義」「ポスト構造主義」の発展の糸口になるんです。

レヴィ・ストロースはサルトルと論争して初めて勝ったんです。逆にいうと、サルトルはマルクス主義者として、レヴィ・ストロースと論争したんだけど負けたの。負けたら、著作は売れなくなって、ジャーナリズムの仕事もなくなって、失業して、けっきょく「おれ、飢え死にしちゃうよ、助けてくれ」って、ボーヴォワールに手紙書いてんですけど、飢え死にではなくて、病気で死にましたけどね。んで、論争に負けたといわれてますが、専門家にいわせると、レヴィ・ストロースのサルトル攻撃(『弁証法的理性批判』を批判したらしいんですけど)は、トンチンカンで、サルトルも反論のやりようがなかったというのが、ほんとうのところじゃないかといわれてますね。つまり、貧乏くじ引いたワケだよね。

レヴィ・ストロースが、主著で何をいったかといえば、文化や歴史は欧米(この場合はヨーロッパ)だけにあるものではナイ、とまあ、そういうただけですワ。だから、このヒトの著作には『悲しき熱帯』とか、なんつうか、ヨーロッパ文明、文化や歴史以外のところをfieldworkして書いたってのが多くて、それが強みなんです。なんで〈強み〉かというとね、たとえば、ハイデガーにしても、人間というのは、他の動物とチガッテ、環境(カントがcategoryとして分類したようなモノですが)を、本来のものではないように使うことが出来るんだ、と、(これは、アリストテレス哲学に対する批判なんですが)早い話、パソコンのディスクトップで、他人の頭をぶん殴ることだって出来ると、だから現存在てなふうに呼称してんですが、それらの哲学は、つまるところ総て物理学でいうところの思考実験にしか過ぎないんです。理屈ではアリストテレスを批判してますが、実際にディスクトップで頭をぶん殴らせたワケじゃアリマセン。目の前にいろんな道具や果物でも、なんでもいいや、並べて、さあ、この人間はそれをどう使うか、なんて実験なんてやった例はナイ。ところがfieldworkはそれをやる(というか観察する)んです。

驚くべきことにチンパンジーなんかは、ヒトですから、ジャック・ラカンの提唱理論の「鏡像段階」と似たようなことをして、鏡の中に映っているのは「自分だ」と認識するという、観察もなされてます。つまり「自我」を鏡で認識出来るワケ。

とはいえですね、レヴィ・ストロース時代のfieldworkは、いまとチガッテ、甚だ稚拙なものだったらしく、レヴィ・ストロース自身、それほど厳密にfieldworkなんてしたワケではナイということは、現在の哲学の常識です。

けれども、彼が提唱した「構造と体系」は、ミシェル・フーコーなんかにも影響を与えてます。これはですね、難しくはよういわんけんど、マルクスなんかの歴史主義的世界観とはチガウ、歴史への切り込みなんです。ですから、さっきのサルトルとの論争にもどりますけど、レヴィ・ストロースはサルトルに「実存、なんやねん、それ。そんなもんたいしたことあれへん。問題は、自身がどんな構造の中にいて、構造の中でどう変容していくかや。この変容にはシステム(体系)があんねん」と、こういったんです。

これは、マルクス主義唯物史観に対する、圧倒的批判でした。サルトルは「あいつのいうとることは、ブルジョア哲学の最後で最大の挑戦であり、しかし、難敵や」としかいえることがなかった。そりゃそうでしょ。システムなんかが存在するとしたら、弁証法はアッパッパです。たとえば「生物は弁証法的に進化してきたのか、あるシステムによって進化してきたのか」という大問題になるんです。

ああ、ちょっと離脱症状から逃れる時間が持てた。チガウことに集中してナイと、キツウてたまらんからな。

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