「DUCK SCOOP 家鴨通信
かつて『ぴあ』で演劇を通信してくれていた、小島女史が、ネットで『「DUCK SCOOP 家鴨通信』というエンタメ情報配信を始めた。
マニフェストにはこうある。
「北村想さんが「DUCK SOAP 家鴨石鹸あるいはセリフを覚えたあと役者は何をするかという問いをめぐる土曜日の黄昏と夜と夜中」の終幕の長台詞で宣言したように、筆者が、書いたり、編集したり、発信するのは「それがひとつの私の生活だからだ」と、今は自然に思える。マニフェストと言うにはおこがましいが、20年もやってきて、やっと覚悟ができたのだ。これからは、自分の力で表現と表現者をどう伝えていけるのか、じっくり考えていきたい」
そこでの、avecビーズの次回作の紹介記事を転載するが、写真も観たい方は、
http://duckscoop.wix.com/duckscoop へ、どうぞ。
劇作家・北村想の書き下ろした「トワイライト アット タイムーtwilight at timeー ~この黄昏よ~」が、ひまわりホールにて上演される。演出はキャストのひとりであり、プロジェクト・ナビ時代から北村作品を熟知している小林正和が務め、制作も順調の様子。取材日はちょうど北村自身も稽古場に来ていたので、作者の話も交えながら新作の内容を探ってみた。
「トワイライト~」は、北村がフランスの映画監督ジュリアン・デュヴィヴィエの「旅路の果て」に触発され、その中で描かれる「俳優の養老院」というシチュエーションを演劇に持ち込んだ作品だ。なお、同作に限らず映画にまつわるエピソードは他にも随所にちりばめられ、映画好きにはそれだけでタマラナイ趣向となっている。
しかし、その日の稽古を拝見したところ「あれ?」と思うことが。チェーホフの代表作「かもめ」について語られる場面がひどく印象に残ったからだ。
小林に配役を尋ねると「ヒート(猛)さんがプロデューサー。こつじ(まさのり)さんは待機役者と言うんですかね、その人物を演じる役者に何かあった場合、代わって演じる役者さんのことです。そして火田(詮子)さんとスズキナコが元・少女歌劇団。入居者はみんな70歳以上という設定です」とのこと。他にもプロデューサーの元妻や愛人も登場するようだが、俳優の養老ホームなので演劇をやっていた者もいるというワケだ。
また、もうひとつ気になる小道具を目撃。観てのお楽しみなので詳しい記述は避けるが、それも「かもめ」をめぐって活用されるという。
「『かもめ』はね……、スピンオフとして入ってるだけなんですけどね。ただ、これは矛盾してるんですよ。だって、チェーホフは基本的に、観客の観ている芝居の外で事件が起きるんですから」と北村。
北村は「かもめ」のスピンオフ、つまり外伝を挿入しているというのだが、この「外」というイメージがどうも引っかかる。そこに、今回の新作を味わうミソが隠されているように感じるのだ。舞台では、下は30代からいる役者陣が全員、実年齢を超えた70歳以上を演じる。さらに、俳優の集まる養老ホームらしく、劇中劇も始まって……。
「テーマというほど重くはないけど、構造を言うなら、現実とは何か?虚構とは何か?ということをやっている芝居ですよね。例えば、養老ホームは虚構だけど、観客は(目の前で行われる行為を)現実としても見ている。それが演劇というものですから」と北村は言った。
では、私たちは一体なにを観ていることになるのか。取り壊しのために養老ホームを出ていく人々を待ち受ける外界は、現実のことなのだろうか。それならば、外はどんな様相を呈しているのだろうかーー。想像すると、なんだか身震いしてしまう。
そして、北村は最後にこう語った。
「自分も還暦を過ぎて、『60歳はまだ若い』と言われることもあるけど、やっぱりキツイよね(苦笑)。ただ、『歳なんだからしょうがないよ』と言えるところがいいとも思うんです。それに、終わりだからできることもある。そういう意味で、この劇は(人生の)始発駅にもしてあるんです」
「人生の夕暮れ時」を通して観る、夜明けの風景。それが人類の夜明け、人類の未来にさえ映るのでは……と妄想させるところが、北村作品の凄みである。
*写真いちばん手前が北村想、右端が小林正和
◎1月15日(木)~18日(日)
損保ジャパン日本興亜人形劇場ひまわりホール
前売2800円 当日3000円 中高生前売1500円
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