2014の総括・二の替り
これもまた、私が着ぐるみショーのイベントをやっていた頃のこと。そのときは構成の大きなイベントで、地方都市だったが、スクール・メイツと称されたポンポン・ガールズの少女たち数名に、主MCのベテラン女性タレントと、私たちのような着ぐるみメンバー、それと、見習いの新人女性タレントがひとり、派遣された。これも一泊だったが、当時の私の所属の事務所の経済では、全員がホテル泊まりというワケにはいかず、ベテランの女性タレントだけはホテル泊で、他は旅館の大部屋雑魚寝という宿泊だった。とはいえ、いくらなんでも男女同部屋という非常識なことはなく、向かい合わせの二部屋に、男女が振り分けられて蒲団を並べるという配慮はなされた。
着ぐるみショーの要員に最近アルバイトで入った男がいて、私より三つばかり年下だったが、私は彼の普段の言動挙動をやや陰険に感じていた。
案の定というのか、就眠時刻になって、廊下を隔てた向かいの女子部屋が静まった頃、彼が私にこう仕掛けてきた。「チーフ、いまなら、向かいの部屋にもぐり込めますよ。みんなで一斉にいって、やってしまえばいいんですよ。チーフの掛け声一つですよ」。つまり夜這いを提案してきたのだ。集団暴行、強姦の企みだ。私は「やるなら、おまえひとりでやればイイ。それなら、オレも何もいわん」。他人に旗を振らせようという根性が気にくわなかった。彼は何度も同じコトバを繰り返したが、鬱陶しくなった私は、襖を開けて、「勝手に行ってくりゃイイ」と、彼を廊下に追い出した。彼は「チッ」と舌打ちして、すぐに蒲団を被った。
帰りの電車は、奇遇か故意か、私と新人の見習い女性タレント、それからベテラン女性タレントと、夜這いチンピラの四人が同じになった。まずベテラン女史が下車した。三人、あまり喋ることもなく駅を一つ二つ過ぎて、次の駅ではチンピラが降車するはずだったのだが、新人女性タレントが、その次の駅で下車することを訊き出すと、彼もその駅で降りるといい出した。なるほど、目当てはこの新人か、と、風向きを了解した私は、私も彼女の下車する駅で降りることにした。
もう夜更けだったので、下車した私は新人女性のためにタクシーを拾った。タクシーの後部ドアが開いて新人が乗り込むと、チンピラもご一緒しようとする。「どうしててめえが乗るんだよ」と訊くと、「彼女を送って行きます」などという。送り狼になって食うつもりだな、みえ透いたことをしやがる。私は、チンピラの肩を掴んで、引っ張りだし、タクシーのドアを閉めて、運転手に出していいよと合図した。
「ナンダか、オモシロクないな」と、チンピラは不貞て吐き捨てたが、そのまま、次の電車で姿を消して、翌日からは、事務所にも来なくなった。
その新人女性タレントは、東京に出て女優になりたいという願望、目標、希望があったのを、どういうワケか名古屋に留まるから私の所属する事務所に紹介してもらいたい、というのを、望みどおりにして、私は社長から「この娘(こ)は、10年に一度の逸材よ」と欣喜雀躍されてしまったのだが、私は、このときの失敗を悔やんでいる。その娘はやはり東京に行くべきだった。そう勧めるべきだった。十数年経って、あの頃十七歳だった彼女も三十路が近づき、あるカメラマンと結婚した。生まれた子供に、私と同じ読み方の名前をつけたが、やはり、東京に行かせるべきだったと思う。夜這いチンピラが何処でどうなったのか、知ったこっちゃねえ。悪い病気にでもなって野タレ死んでればイイのだ。
« 2014の総括 | トップページ | 2014の総括・三の替り »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- nostalgic narrative 27(2024.06.19)
- nostalgic narrative 26 (2024.06.09)
- nostalgic narrative 21(2024.05.12)
- nostalgic narrative 18(2024.04.11)
- nostalgic narrative 17(2024.04.11)