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2013年8月11日 (日)

マスク・THE・忍法帳-42

この老婆が、この齢で、自分と匕首で勝負をつけようとするのか。平吉は少々憐れな気がした。が、それが杞憂であることは数秒後にワカッタ。
 おりんは、なんと、匕首を振り上げるようにして、そのまま平吉に向って投げたのである。匕首は平吉の心臓に向って飛んできた。平吉は左手に握った匕首でこれを撥ね退けようとした。と、その瞬間である。飛んできたはずの匕首を、握っている老婆おりんが眼前に立っていた。
 ヒュッと風を斬る音とともに、平吉の二重回しが右手もろとも斬られた。右手に感覚があったら、どれだけの傷かワカッタろうが、それすらワカラヌ。ただ、確かに右手に老婆の匕首は深く斬り込んだのである。
 おりんの口から漏れる御詠歌が、平吉にただならぬ恐怖心を抱かせた。こんな経験は初めてである。平吉の右手からは血が流れて雑草に散らばった。
 眼を開けているのか閉じているのか、おりんはただ念仏を歌うように唱和している。次いで第二撃がきた。今度は左太股に痛みが走った。まさか、と平吉はうろたえた。身切れぬハズはナイのに、どうしたことか。傷は浅かったが、確実に斬られてはいた。
 相手の動きが恐ろしく早いのか。だが、相手は還暦をとおにこえているらしい老婆だ。そんなはずはナイ。すると、やはり毒のせいで、自分の身体能力がかなり低下しているのか。ともかく、そんなことをいちいち判じてられない。平吉は、今度は攻撃に転じた。地ずりから、逆さ上方に匕首を撥ね上げた。しかし、おりんの影はナイ。おりんは土管の上に胡座をかいていた。
 動体視力が追いつかない。やはり毒のせいなのだろうか。と、平吉は思った。しかし、なんのせいにせよ、このままでは劣勢を立て直せない。おりんの御詠歌だか念仏だかが、渦巻くように聞こえてくる。もはや、土管の上のおりんすら幻影に思える。してやられたか。術中にはまったか二十面相、平吉。

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