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2013年7月19日 (金)

マスク・THE・忍法帳-19

この老人の言を飲むとすると、どうやら、『黒菩薩』と『弥勒教団』には、組織的に亀裂が入っているらしい。それは、ハト派とタカ派のように派閥に分かれているのかも知れぬ。そうすると、この老人の率いる派閥は、教団の『黒菩薩』からの離脱を画策している。つまり『黒菩薩』がカモフラージュで始めた宗教団体活動のほうが軌道に乗るにつれ、裏組織である母体の『黒菩薩』が邪魔になってきていると推測出来る。だが、
「和解。なるほど。で、条件は」
 と、試しに平吉は顧問と名乗る老人に向っていってみた。
「おそらく、貴君の標的は、我々の教団の元の組織であった『黒菩薩』であるはずだ。確かに、始まりはそうであったと認める。だが、貴君もたったいま推測されたと思うが、我々はこの数年において、『黒菩薩』からの離脱を図ってきた。従って、条件としては貴君への協力を約束する。『黒菩薩』の情報はすべて提供する。それで、『弥勒教団』からは手を引いてもらいたい」
 平吉は苦笑した。
「ちょいちょい、爺さま。俺には何処からどこまでが菩薩さまで、何処からが弥勒さまなのか、ワカランのだがの」
 老人は表情をくずすこともなく、ひどく決心したようなように、いい放った。
「我々は、沖縄を去る。今日、いまこの時刻から、教団は沖縄から引き上げる。行き先が必要ならば、おって報せる。それで、どうだ」
 平吉はしばし老人を凝視したが、どうも嘘や罠のたぐいとは思えなかった。
「よっしゃ、わかった。俺も追いかけはせんよ。和解でも何でもええ。俺の行く手を阻まない者は立ち去ってくれればいい。俺は何も教団を壊滅させに来たワケやないからの」
「成立、じゃな」
「おう、よ」
 老人は、くるりと踵を返して背を向けた。
 と、そのときである。
 平吉も、自身の目を疑う光景が老人の身に起こった。老人の身体がまるで炸裂でもするかのように、胴体と左右の手足、首、が、バラバラになって血しぶきを上げたのだ。
 同様のことが、霧の中で起こっているのに違いない。骨と肉が切断される音と、叫び声とうめき声が周囲から狂ったノイズのように、数分、聞こえつづけ、やがて霧が晴れるとそこに、おびただしい肉塊が散らばっているのがみえた。つまり、平吉はいま、阿鼻叫喚の地獄の終焉した中央に立っているのだ。
「粛清か」
 さすがの平吉も声をつまらせて、それだけいうのがやっとだ。
 と、あの、さとうきび畑のレクチャー氏の声が降ってきた。
「察しがいいね。これで、大掃除が出来た。ありがとう、二十面相くん。わが組織を離脱する一派を掃討することへの協力、感謝するよ」
「アホなこというんじゃねえぞ。てめえ、ほんとうに人間か」
 バラバラになっている肉塊なので、勘定はしにくいが、およそ50~60人の男女が、累々たる屍となっている。
 平吉は、切断された切り口を観る。たった数分のあいだにこれだけの殺戮をやってのけた武器は何だ。
 切り口はいずれも鋭利なモノで切断されている。
 レクチャーの声はつづいている。
「我々はきみに、あの教会の牧師が黒菩薩の者であると、きみに教えた者と、その一派をここに掃討した。我々は二十面相が、何を奪いに沖縄くんだりまで出かけてきたのか、おおよその見当はつけている。それは、我々が護らねばならないモノだ。二十面相、さて、きみに奪えるかな」
 平吉は声の主が何処にいるのかを捜すのをやめた。四方八方から聞こえてくる声は、おそらくスピーカーから発せられている。ご当人はこの近辺にはもういない。
「聞こえているなら、返事をしておく。怪人二十面相は、盗むと決めたものは必ず盗み出してご覧に入れる」
 と、平吉は、何処へいうでもなく、そう応えた。

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