今朝は、谷川雁、を口ずさみたくなって
なきはらすきこりの娘は
岩のピアノにむかい
新しい国のうたを立ちのぼらせよ
つまずき こみあげる鉄道のはて
ほしよりもしずかな草刈場で
虚無のからすを追いはらえ
あさはこわれやすいがらすだから
東京へゆくな ふるさとを創れ
おれたちのしりをひやす苔の客間に
船乗り 百姓 旋盤工 抗夫をまねけ
かぞえきれぬ恥辱 ひとつの眼つき
それこそ羊歯でかくされたこの世の首府
駈けてゆくひずめの内側なのだ
『大地の商人(抜粋)』
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「段々降りてゆく」よりほかないのだ。
飛躍は主観的には生まれない。
下部へ、下部へ、根へ根へ、
花咲かぬ処(ところ)へ、
暗黒のみちるところへ、
そこに万有の母がある。
存在の原点がある。
『原点が存在する(抜粋)』
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「生活は学習だ」と私は不埒にも、自らが生活破綻者であることを省みず、私より何倍も生活を学習してきている娘に説いたことがある。いくら「学習」しても、私のような前科者の前科が消えるワケではない。ウディ・アレンの口癖は「人生に意味なんてナイ」だが、川島雄三になると「死に神と握手してから積極的に逃避するでげす」だ。
私のきょうのあさはあっというまに壊れて、「悲しみ」と「哀しみ」と「愛しみ」だけが残った。たった独り、希望のごとくにつぶやいた。「まだ私にこれだけ失うものがあったなんて」

