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2012年6月 6日 (水)

SLOFT/N稽古日誌・3

『デザートはあなたと』の稽古は、ふつうに進んでいる。ふつうにというのがどういうことなのか、特に支障なくと解していただければイイ。流山児のように大本営発表みたいにはいかない。「どこにもナイ演劇」などというものを創っているワケでもなく、劇団でもなく、これはあくまで演劇塾としての稽古だから、演出は演出担当が、演技者は演技者担当がやっているというべきだろう。私は、その指導のようなものをすべきなのだろうが、そういうことは私の最も苦手で不得手とするところなので、補佐的に働いているだけだ。演出担当には、それだけいわれるならば投げ出したくなるようなキビシイmailを送って、てめえはここがまるでダメだとしかいってない。役者たちは、いい素材だと思う。ただ、その素材をどうしたらいいのかという、演劇に対する処方箋がナイだけだ。私にしても、そんな処方箋など作っている余裕もナイが、微力だが、ヒントになる程度のことは述べている。私に出来ることは、せいぜい、稽古の進行に随伴しながら、台本の編集をやれることくらいだ。
稽古場は戦火の空襲を免れた下町だから、さまざまに、私たちの営為を応援して頂いている。駐車場を無料で貸して頂くのは、ひじょうにありがたい。すぐ隣は魚屋さんで、惣菜も扱ってらして、その日売れ残ったいなり寿司や、穴子寿司を、「残りものだけど、食べてよ」と、差し入れのように毎日持ってきてくださる。
座員たちは、喜んで、これに感謝して、それを食す。
ただ、私は、どうしても屈託していて、それを口にはしない。もっとも、食事はすましてから稽古に出向くので、空腹ではナイというのがまずの理由だが、私には、偏屈なる固有の倫理があって、借りは作りたくナイのだ。
そこで、太宰治の『たずねびと』(新潮文庫・『グッドバイ』所収)を強く思い起こしてしまう。太宰治の小説の特徴は、書き出しの見事さと、最後の数行のインパクトだ。例にあげた『たずねびと』の最後の二行も、読んだ当時、私を震撼、驚愕させたものだ。
つまらぬ意地だが、贈与交換は、交換でなければ、価値を持たない。隣家の魚屋さんにはなんの悪気もナイ。その悪気のなさこそ、私がもっとも虞れるものだ。

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