如是想解・40
39 鬱病を探偵する(38のつづき)
前項①②③を現場検証しながら、探偵の捜査のように推理を組み立てていくことにスルが、確証に至ることが出来るかどうかは、いまのところワカラナイ。ただ、私たちは、このあたりがどうも気になる引っ掛かる、という部分を抜き出していくことになる。まず、①の身体因性うつ病では「身体」の関与が取り上げられているところだ。脳や身体は気質ではなく「器質」として扱われている。これはおそらく心理的、精神的な面を強調するのではなく、身体的な「器」としての身体性に注目している。つまり私たちは頭痛のする場合、脳が痛いとはいわない。単に「頭が痛い」という。この場合の「頭」が「器」に該る。それは頭蓋骨をいうのではナイことは自明で、頭痛は頭蓋骨の痛さを表明することではナイ。ところが「胃が痛い」という場合、これは胃袋、胃壁、胃の中の痛みをいうことになり、「腹が痛い」は、大腸、小腸の内部か外部を指している。もうひとつ、これとは違う痛みがある。「胸が痛い」は、実際に肺が痛い場合もあるだろうが(拳銃で胸を撃たれたら、そうなる)、「出来の悪い息子、娘のことを考えると胸が痛い」と親はいう。どうように「税金のことを考えると頭が痛い」といい、実際にそれが、胃痛となったり、頭痛となったりする。誰しも恋をすれば、恋人の一挙一動に胸を痛め、胸を熱くし、胸を焦がし、胸を膨らませ、実質的に胃痛を起こしたり(神経性胃炎というが)、恋人のことを思うと食事も喉を通らないということで食欲減衰を招いたりする。私などはたいてい神経性腸炎になって下痢をする。(私の場合、大勢の子供の中に入れられると、やはり神経性腸炎で下痢をする。これはどうも、あの子供特有の臭いがダメらしい)。男性の場合はどうだかワカラナイが、女性の場合はどういうことでか恋をされると(たぶん性ホルモンの関与なんだろうけど)男性からみると、美しくなられる。薬物の場合も、それが直截の原因ではなく、その薬が身体に与える作用(副作用)というカタチで影響を与えているようだ。ここで、ひとついえることは、うつ病というものが、身体的な失調として現れてくることが多いということだ。私の場合も、最初は、目眩、吐き気、だるさ、嫌な疲労感、微熱まで出た。現在も私自身、鬱病が悪化すると身体症状となり、関節痛から全身の震えへと進んでのたうつ、悶えることになる。そんなときは「こりゃあ、死にたくなるわなあ」と思いつつ、自殺者に同情する。私たちは、ここで、一つ、うつ病というものが、身体(肉体)と何らかの関係(あるいは了解)を切り結んでいるということを記録(file)しておいてイイ。ただし、この身体性現象とマタニティ・ブルーとは、同列に置くべきではナイとも考える。女性が子供を産むということは、男性が思うほどに単純なことではナイと思われるからだ。お産というのは、十月十日の命を環境世界に送り出すという、類的な一種の「表出」に該る。このことについては、もう一考察入れねばならないだろう。(つづく)
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