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2012年2月17日 (金)

如是想解・12

32 演技のシステム
およそ、ワークショップなどで語られる、また教授される演技のシステムが役に立たないのは、医療システムがさほど役に立たないのと似ている。現行医療システム、そのメディカルには、エビデンス(根拠)のあるものと、不明のものがある。現在、日本での患者数が100万人、年間自殺者が3万人をこえる、鬱病の治療も、エビデンスメディカルの確立されていない部類だ。とある著名な外国の精神科医は、世界に7千万人存在するという、WHOの鬱病患者数と、その治療について、「依然として、私たちは、いったい何を治療しているのか、ワカラナイところに追い込まれている」と言明した。
演技システムの場合もこれと同様と考えてマチガイない。医療がそうであるように、たとえば、最も簡単な疾病である感冒を治療する場合、患者万人に同じ処方、治療を施す。鼻水には抗ヒスタミン、咳にはジヒドロコデイン、メチルエフェドリン。これが漢方薬になっても、その主成分は同じだ。たいていの者は、これで治まりがつくが、感染症的なものになると、解熱鎮痛剤、抗生剤が用いられる。しかし、人類というものは、(前提として)共通して同じ肉体を持っているが、個々人の体質はみな違う。そこで、医療は万人共通の肉体と個々人の体質を同時に治療しなければならないという、矛盾に辿り着く。演技のシステムもまったく同じことだ。人間はヒトのカタチをした自然である、という前提のもとに、システムは創られるが、その自然は個々によってみな違う。違ってアタリマエなのだ。それぞれチガウものを総称して、私たちはこれを人類という概念でくくっているからだ。そのチガイはたしかに両棲類とはチガウ、という程度のもので、おおよそ、そのシステムのために、あるモデルというものが必ず設定される。つまり、エビデンスとなっているものは、そのシステムを貫徹すれば、演技をマスター出来るという、ひとつ(一人)のモデルでしかない。スタニスラフスキー・システムについて、唐十郎さんは「なんでも素人を名優にする方法だそうな」とアイロニカルに語っている。スタニスラフスキー・システムというのも、これほど奇妙なモノもナイ。どの俳優も口を揃えて「役には立たなかった」と明言しているのに、いまなお、そのもの、あるいは、亜流、あるいは、我こそが本流というカタチで生き残っているのだから。つまり、我こそが本流のいいぶんは、お察しのようにこうだ。間違って学んでしまうから、役に立たないんです。たしかに、間違った治療をすると、病人は治らない。しかし、正しい治療をしていても治らない病者は大勢いる。治療をしなければ、殆どの病人は治らないのは事実だが、ここだけは演劇と違って、演技システムなど学ばなくとも、優れた演技が出来る者はいる。というより、その数のほうが圧倒的に多いし、名子役などといわれている年端もいかぬ少女は、どこで、演技を学んだのか。と、学ばなければ、演技というものは出来ないものなのか。もし、そうであるならば、どういう学び方があるのか。演技システムなどというものは何一つ信用していない者にとって、つまり私のことだが、ここは、文字通り「腰を据えて」考えるべきだ。

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