無料ブログはココログ

« SLOFT・山河のサンガ(宿坊) | トップページ | SLOFT通信・放課後 »

2011年10月 1日 (土)

演劇的犯罪学

いまはなくなった中部地方の新聞の社会部の記者K氏は、私が芝居を始めた頃からの知己で、いろいろと取材もあったし、飲みにもいった。こないだのSLOFTの公演も観劇している。
ずいぶんとむかしのことになるのだが、日本の警察の犯人検挙率が世界一である理由を聞いたことがある。私が訊ねたというワケではなく、なんとなくその話になったのだが、これは漏らしてはイケナイことなのだが、とK氏は前置きして、「あるスジの話(ということにしておく)では、ほんとうは検挙率は50%もねえんだわ。つまり、半分以上は冤罪なんだわ。それが報道なんかで大きな事件になると、そういうワケにもいかんでよう、いきなり犯人逮捕が出来なくなって時効になってお宮入りになるんだな。不思議な話でよ、こないだ、昭和警察署に、ある事件の犯人が自主してきたんだわ。これが、お婆さんでな、犯人なワケねえんだ。んでも、わしが犯人ですちゅうてよ、きよったったんだ。帰すワケにいかんでよ、まあ取り調べはしたけど、取り調べちゅうても、犯人やないんだで、何であんたが犯人なのと、こう訊いたらしいんだ。そしたらよ、婆さんがいうにはな、被害者が可哀相でな、自分が犯人でもええからと、こうなんだわ。けっきょく、帰らせたんだけどな」。私は、K氏に訊いた。「なんで、検挙率、つまり冤罪が高くなるの」K氏曰く。「取り調べちゅうのはな、テレビドラマなんかよりも巧妙なんだわ。ゆうてみたら、誘導尋問ばっかちゅうこった。たとえば、こういうふうに被疑者に訊くんだ。~お前は○日の○時に、○○には、ほんとうにいなかったんだな~、被疑者は~いませんでした~、というわさ。アリバイやからな。で、~ほんとうだな~、~はい、ほんとうです~ときたら、刑事はこういうんだ。~よし、お前が○日○時に○○にいなかったことはワカッタ。それでお前が犯人だということは明白になった~。これだ、これが尋問の手口なわけだ」。つまり、ダブルバインドに誘導尋問で、被疑者(ドラマやニュースでは容疑者と称される)が犯人であることをつくり上げることぐらいは、マニュアル通りにすむらしいのだ。別段、力づく、つまり殴ったり蹴ったりしなくとも、口頭において、刑事はプロ、被疑者はアマだということだ。
何故、こんなことを書くかというと、人間というものは、複雑にみえて、男性女性によらず、単純なものだということがいいたいからだ。「最も単純なものが最も正しい答だ」。私たちは物事を複雑に考えがちだが、それは単純なものが錯綜しているだけのことであって、基本的には、単純なものだ。難しいのは、その対象である人間から、最も単純なものをみつけだすことだ。おそらく、日本のサツの旦那方は、その単純なものを見抜く力というか、経験値が高いのだろう。演出というのも、演技者から最も単純なものを引き出せれば、簡単に済むのになあと思う。先日、複素数のことを書いたのは、そのためだ。演技者が複素数くらい単純なものであればなあ、と思ってのことだ。しかし、方法論的には、あながち、間違っているとは思わないので、常に脳の片隅には置いておくことにしたい。社会的、現実的な冤罪はもっての他だが、演劇は、冤罪に依ってもなお犯人を検挙すべきや否や。

« SLOFT・山河のサンガ(宿坊) | トップページ | SLOFT通信・放課後 »

北村想のポピュリズム」カテゴリの記事

演劇」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/558792/52879092

この記事へのトラックバック一覧です: 演劇的犯罪学:

« SLOFT・山河のサンガ(宿坊) | トップページ | SLOFT通信・放課後 »