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2011年9月30日 (金)

SLOFT・山河のサンガ(宿坊)

最近亡くなった名優、原田芳雄さんは、俳優やスタッフの誰からも「兄貴」と呼ばれて信頼されていたことでも有名だが、彼はある映画に出演して、その助監督が気に入ると、必ず「お前が監督に昇進して一作目を撮るときに俺が必要なら、タダで出てやるから、俺を呼べ」と励ましていた。この言は、ただの励ましではなく、ほんとうに原田さんは昇進した元助監督の作品に(都合で何作目になるかは難しかったが)タダで出演した。ノーギャラでの出演だから、原田さんは損をしているようにみえる。しかしそれは、経済原則を貨幣交換としてみた限りのことで、原田さんは、新監督に自身の仕事を「贈与」をしたことになる。贈与されたことによって、新監督が優れた映画を撮れば、映画業界にとっては増益になる。映画業界が増益になれば、原田さんもまた、自らが気に入った映画に出演することが出来て、何ら損をしていないということになる。これは、古くからある民族の間で、ポトラッチと呼ばれる制度として根付いていたものだ。この制度は、例えば、一方が瓶いっぱいの酒を棄てると、一方も同等のことをして、お互い損をすることで、面子をたてる慣習でもあった。従って、方向を間違うと、どちらも損害を大きくして、リスクの応酬で、両方ともが潰れてしまうということにもなった。しかし、これは、上手く用いれば、貨幣交換を直接行わない経済営為になる。SLOFTが、何故、チケットノルマもなく、団費もなく、指導料もとらず、おまけに弁当や交通費まで出して、加名員を遇しているのかは、この「贈与交換」に基づいているからだ。SLOFTのstaffは、(経費を除いて)加名員に対して自らの仕事の持ち分を「贈与」し、SLOFTの加名員の修練、鍛練、伝授とこれを「交換」している。プロデューサーは加名員の営為を「享受」するということで、同じように「贈与交換」している。SLOFTは劇団ではナイ。ワークショップでもナイ。ボランティアでもナイ。ただ、私たちが伝え残したいものを、私たちなりの方法で伝え残そうとしているだけだ。加名員は、べつにそれを意識して遂行する義務はナイし、私たちも、それを使命としているワケではナイ。私たちも加名員と同様、外で別の仕事をしながら、並行してSLOFTを実験しているだけだ。ただ、おそらくこれは、現代演劇世界(いわゆるギョーカイというやつネ)では唯一の試行錯誤だろう。もちろん試行には錯誤がつきものだということくらいは、私たちも半世紀を生きて心得ている。

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