ルバイヤート
太宰治の著作権がきれたので、ちょうど、宮沢賢治のときのように、関をきって、雪崩のように、出るわ出るわ、コミックから映画まで。やっぱピカレスクなのかなあ。かつて、とある有名劇作家の愛人やってた女優がいったね。「私は悪人のほうが好き。だって、悪人のほうが断然、魅力があるもの」んで、その後、結婚されたのは善人だったのか悪人だったのか、おらは知らない。・・・しかし、古屋兎丸の『人間失格』には、脱帽です。このひとのコミック、以前、何か読んで、そのときも驚いたんだけど、さすが新潮社(太宰の最たる版元)、たぶん、脚色がみごとだから、編集者もいいのだと思われる。2巻までだが、『ルバイヤート』を持ち出したのにまた仰天。太宰を読んだのは40年前だから、記憶がさだかでないので、原作に出てきたかどうか。太宰は、「相対化」もしくは「対象化」するのに時間もかかる。そう出来なくて終わるひともいる。ともかくも、短編は、海外文学ですら、追随をゆるさない。ところで『ルバイヤート』、古屋さんのには、「ままよ、どうあろうと」の(84)が使われていて、
恋する者と酒のみは地獄に行くと言う、
根も葉もない戯言にしかすぎぬ。
恋する者や酒のみが地獄に落ちたら、
天国は人影もなくさびれよう!
である。ちなみに、「解き得ぬ謎」から、かましてくれるぞ。(2)と(3)をみてみよう。
(2)
もともと無理やりつれ出された世界なんだ、
生きてなやみのほか得るところ何があったか?
今は、何のために来たり住みそして去るのやら
わかりもしないで、しぶしぶ世を去るのだ!
(3)
自分が来て宇宙になんの変化があったか?
また行けばとて格別変化があったか?
いったい何のためにこうして来たり去るのか、
この耳に説きあかしてくれた人があったか?
しかし、古屋兎丸さんの『人間失格』は、ちょっと女性がステロタイプ過ぎます。そのあたりだけは不満。脚色は、いいのよ。