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2010年6月 6日 (日)

癪にさわるので(改稿)

「世界は私の表現である」「私は世界の表現である」、これは、以前ここに書いた表現論の命題(These)だが、このTheseをもとにして、引っ越してからこっち、鬱病の具合の悪さ、つまり、転居というものが、鬱病に与える影響というものについて考えてみることにする。ただ、微熱が出たり、嘔吐感や腹部の苦痛に苦しんでいるのでは、癪にさわるからだ。ただし、これらの身体症状それぞれについての生理的なことは、括弧に括っておく。・・・これは、40年前に名古屋に一人、出て行ったときにも感じたことと同様なのだが、転居したさいに、どういうワケでなのか、「現実感の希薄さ」「自身の存在の喪失感」というものに苛まれた。これは、鬱病患者の所見にも多くみられることらしい。従って、転居による不具合の 原因はそのあたりにひそんでいると考えてマチガイはなさそうだ。また、それらは、実感ではあるが、a prioriなことではないので、「悟性=概念(category)」として、考えていいように思う。ここでは、これらの要因を心因性であるとか、外因性や内因性であるとかという、いまの精神医学の見識、知見、診断の基準では扱わない。そういうものに素人であることもあるが、たとえそうでなくとも、たぶん、そういう方向性は、役に立たない。何故なら、いつもいうように、それらは、必ず「アトづけ」であるからだ。それは、プロ野球の解説者の解説と同じようなものだ。・・・表現論を演劇にせばめて、この世界(環境)というのを舞台に、私を一人の役者(表現者)として仮定する。さらに「私」という概念をカント流に、「表現された自己としての私」と、「表現された自己を識知する私」と、カントが認識出来ぬものとして規定した「私それ自体」を含める。転居などで環境(世界)に変容が起こった場合、私は、それを前述したテーゼのように捕捉しなおそうとする。つまり、変容された世界(環境)に対して、表現され、表現するモノとしてふるまおうとする。これは、舞台という環境(世界)に立つために、それを自身の表現として「受け取り」、さらに、その表現に対して自身を「役」として表現することで、世界(環境=舞台)と対峙せんとする役者(表現者)と同じだ。ここで、私・役者(表現者)は、その世界(環境=舞台)から受ける敵対行為を(鬱病における症状を)、自らの演技(あるいは演技力)のいたらなさだというふうに了解してしまう。新しい環境に馴染めない、自身の資質や経験、病気のせいだと了解してしまう。しかし、これは、まったくの錯誤だ。何故なら、それは、「私それ自体」と「表現された自己としての私」における本質的な[疎外]を原因としているからだ。「表現された自己としての私」も「それを識知する私」も、けっして「私それ自体」ではあり得ない。あくまで、「表現された自己としての私」は「表現」なのだ。この、錯誤(私の演技は下手なのではないかという疑念、錯覚、諦念、自虐)が、病態となって露出する。「私それ自体」と「表現された私」のあいだには、必ず「違和」が存在する。それを[疎外]と称する。この「違和」、[疎外]は、表現においては埋められない。で、あるのに、「私」は、「表現された自己としての私」を識知して、自身の表現の下手さに、ジレンマ(dilemma)を持つ。変容された世界(環境・舞台)に適さなかった「私・役者(表現者)」として、「私」にさらに「違和」を唱えるのだ。この「違和」が「現実感の希薄さ」「自身の喪失感」として生じ、身体的にこれを打ち消そうとする「働き」が、病態となって現れる。これが、もっとも単純ではあるが、明解な、答えだ。では、この「違和」に対して抵抗する手段はナイのだろうか。簡単な処方をいってしまえば、「うまい演技をして」錯覚するのだから、これをコペルニクス的に転換して、「下手な芝居」をやればイイことになる。「世界は私の表現」であり、「私は世界の表現である」が、「表現されている世界は無秩序で、表現されている私もまた無秩序である」という、Theseを第三項として付加すればイイことになる。おそらくその「無秩序」のうち、偶然に「私それ自体」に突き当たるモノがあるかも知れないことを、突き当たったって、どうなるものでもナイのだが、ほんの少し期待して、だ。

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