劇、その演技・02
私の演劇の初体験は、身体(カラダ)からやってきた。あの経験はいまでも忘れることが出来ない鮮烈なものだ。18歳のとき、名古屋の中京大学でニセ学生をしていた私は、友人の所属する演劇部(とはいえ、当時は、学校とは独立の「劇団」として門戸を外部にも開いていた)に居すわることになった。で、演劇部だったので、芝居をすることになった。キッカケというものは、それだけのものだ。べつに志すところがあったワケではナイ。演劇のことなど何一つ知らない若輩だったが、ともかく役者をやることになって、それが当時の演出でもあったのだろうが、私は、客席からジーンズひとつの半裸(上半身は裸)で舞台に向って登場するのである。このときのせりふは記憶していない。ただ、私はみえもしないのに、私の背中を観た。私の声を私の耳がとらえた。それは18年間、知り得なかった、新しい驚きだった。私は私のカラダを私がちゃんと観ていることを感じた。その快感はずいぶんと激しいものだった。もちろんそれは、私の意識が演じている私を捕捉していただけにすぎないのだが、そのような意識が芽生えるものであるということを、演劇を通して体験したのだ。その快感(ココロ)は何処から来るものなのか、そんなことには興味はナイが、これはオモシロイものを発見した、私とは、こんなふうだったのか。と、堪能して、やがてそれはヤミツキになった。
« やめたほうがイイ | トップページ | 劇、その演技・03 »
「演劇」カテゴリの記事
- À bout de souffle-2(2025.04.27)
- À bout de souffle-1(2025.04.21)
- 「narrative-60の謎」-14(2025.04.02)
- 「narrative-60の謎」-13(2025.04.01)
- 「narrative-60の謎」-11(2025.03.29)