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2009年12月 8日 (火)

劇、それ自体・8

やや横道にそれるかも知れないが、ふれておくと、『人類の進化と未来』(今西錦司・第三文明社)における今西進化学説では、直立二足歩行を始めたオーストラロピテカス以降、人類の歯は退化し、現在の第三大臼歯(親不知)はその名残とされている。この歯の退化によって、顎の筋肉が弱まり、大脳の発達が始まった。これを今西学説では「大脳化」と呼んでいる。ここでは、大脳の発達が重視されているが、歯の退行という現象は、食生活の転換を示しているようにも考えられる。食生活の転換というのは、咀嚼(かみ砕く)、嚥下(飲み込む)、吸収、排泄の変容を意味する。つまり、内臓の進化だ。これを大脳化と同様に、「内臓化」と称してもいいように思える。「内臓化」というのは、すなわちカラダの変容だ。ここに臭覚や聴覚、触覚、視覚、などに肩をならべるようにして、味覚というものが登場する。これは食せるものとそうでナイものを分別する感覚ではなく、されにすぐれて、美味い不味いという感覚をもたらすことになる。「味のある芝居」「味つけのよい演出」など、味覚は、料理以外の表現に対しても用いられるが、その根本は、人類が獲得した味覚からきている。味覚は、心身にはたらいて、表現の表出をうながしたとするのが妥当だろう。三木茂夫さんの著書においても、子どもがなんでも、まず口に入れるのは、ひとつの人類史の証拠としてあげられているが、それは心的領域が、内臓系統に包括され証左でもある。つまり、端的にいってしまえば、心的なものの形成は、生命進化の領域に在ることを述べているに他ならない。それは、〔劇〕もまた、生命進化とともに創設されたたということだ。

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