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2009年8月22日 (土)

巷の莫迦からひとこと

日垣隆さんの著作はけっこう読んでいる。いろいろと参考、資料になることが多いし、目から鱗が落ちるということも多々ある。自ら売文業と名乗り(けれども、奥付の肩書には作家・ジャーナリストと記されているのは謎だが)ユーモア・サービス精神に富む、健筆家である。とはいえ、故人米原万里さんに「詰めが甘い」と一喝されたように、たしかに、そのような傾向もなきにしもあらずで、いってみれば呉智英センセイから思想と学問を引き算して、知略と教養で穴埋めしたようなスタイルである。で、本論。新刊『怒りは正しく晴らすと疲れるけれど』(WAC)の第9章「得意なことで食う」の巻は、的外れ、見当違い、筆すべり、無知、であることは巷の演劇関連を得意とする売文業者としては、指摘しておかねばならない。心苦しいのだけれど仕方ない。あれを何も知らぬ読者、日垣ファンがまともに受け取ったら日垣隆さん自身の恥になる。・・・本書は日記である。(日付は記されていない)問題の本文を記すと「日本には首都圏だけで3500以上もの劇団があると言われている」・・・確かに3000以上はある(3年ほど前の個人的な資料によるとだが)。ところで、日垣さんは別の自著で「言われている」というような曖昧な表現は使ってはイケナイとされていたが、ご自分で、それやっちゃって、やっぱりこの辺からもうこの日記はあやしいのだ。文章はこうつづく「たいていが「それだけ」では食えず、アルバイトをしながら劇団員を続けている。チケットは有料なのに、それではプロとは言いがたい」ここで「それだけ」というのは劇団の公演収入(ギャラ)のことであるのは明白だ。ただし、「プロと言いがたい」かどうかは「いいがたい」。私の表現論におけるプロ・アマ論とはまったく違うからである。これはやってると長くなるので飛ばす。問題はそのアトだ。・・・「ブロードウェイの方法をいち早く取り入れたのは宝塚や劇団四季である。「食えない」劇団との違いは複製(代替)と量産だろう」「日本の劇団の大半は、同じ面子で六カ月もかけて練習し、高い場所代を払ってたった一週間の公演、というようなスケジュールを平気で組んでしまう。そんなことをしていて舞台で食えるようになるわけがない」・・・日垣さんとしたことが、たぶん、ここはサボって、調査も何もナシにやっつけているのである。ここが「詰めが甘い」ところなのかも知れない。私は演劇関係の同業者であるから、同業者のことは悪くいいたくはナイのだが、風聞ということにして、劇団四季の劇団員が食えているという事実は知らなかった。食えるだけの賃金を劇団員に支払っているとも知らなかった。演者は殆どの者が公演ごとの契約で、食えるだけの賃金はほんの一部の者しか手に出来ないものだと思っていた。親方の一存で、即日解雇の者が多くいるように聞き及んでいた。親方は政治屋と結託して、トップダウンで都会の一等地に劇場を建て興行する。(私が劇団をやっていたとき、広場で野外演劇の申請をしたことがあるが、「あそこは広場ではなく歩道だからダメ」と一蹴されたことがある。その半年後には、四季の名古屋ミュージカル劇場がその歩道に建っていたのである)もちろん、懇意にしている議員の鶴の一声での決定である。それが政治というものなんだろう。複製(代替)と量産においては、本場に対するロイヤルティ(著作権使用料)を払い終える数年間は儲けが出ないので、ともかく、あちこちでロングランをやらねばならず、複製、量産といっても、一軍は大都市をまわっているが、地方都市は二軍が巡回しているのである。ここらへんは劇団四季は確かにブロードウェイから学んでいるともいえる。日本で公演するブロードウェイ・ミュージカルは、実はあちらでは三軍くらいの面子なのだ。が、四季のトップよりは、やはり上手いのである。さて、宝塚になると、宝塚くらいは、日垣氏自身が、自慢の調査力で実際にその興行の内情を調べてごらんになるといい。そういう仕掛けだったのか、ということが出てくるはずだ。・・・食える、食えない、ということについての章であったので、巷の莫迦である私も、その点に絞ってひとこといってみた。ここで、私自身が「巷の莫迦」と称しているのには、ダブルミーニングであることは最後に知らしめておきたい。莫迦を承知の渡世というのも日垣さんより古い人間の私には、敷居を跨げば、あるのだから、しょうがナイ。

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