月の雫
かつてきみは ひとつの夢であった
月の雫でできた ひとつの夢であった
朝露の光る露のその露が 夜の涙であると知っていた
だからきみは あの廃墟のかなしさを 歌にした
遠い国から盗んだ自転車をこぎながら
きみはその歌を口笛にして 瓦礫の青空を走った
明け方だ みんなはきみをみたという
みんなのひとりが きみのすがたを みたという
わたしも きみをみたという
けれど ああ すまなかった
そんなふうにして みんなとわたしたちひとりは
きみを夢から石像につくりかえてしまったのだ
その化石のような
その忘れられた骨のような
きみの残した 歌と青空の灰でつくられた 追憶に
今夜も月の雫が垂直におちていく
夜の涙が冷たくしぶく
かつてきみであった夢が いま
朝露となって消えていく
ひとのこゆえの はかなさは
きみの走ったこの明け方を ここまでかなしく せつなく慕う
わたしはみんなはひとりのひとは
かつての夢をみたいと 嘆く
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